夫婦ともにフルタイム勤務で金銭的な余裕があることから、購買意欲が高いと注目されている「パワーカップル」。都心のタワーマンションなど臆することなく購入しているのが、このタイプの人たちだ。
お金に不自由がない反面、世帯収入が高い家庭もお金の悩みを抱えているケースが実は多い。では、「パワーカップル」がお金でもめないために、どのような点に注意をすればいいのだろうか。揉めないための3つのルールを紹介していこう。
ルール(1) お金の価値観の「見える化」と「すり合わせ」
お金の価値観をすり合わせるには、お互いの金銭感覚の「違い」を知ることが前提となる。そもそも違う家庭で育ったふたりが結婚により一緒に暮らすのだから、価値観に違いがあるのは当然のこと。
知人夫婦は結婚前に「結婚契約書」を作成し、価値観をすり合わせている。結婚後にお金の価値観の違いに気付き離婚してしまった友人を見て「結婚契約書」の作成が必須と考えたようだ。
「結婚契約書」は、万が一離婚したときの慰謝料などを定めることに目が向きがちだが、生活費や小遣いなどお金の使い方についてのルールも記載できる。結婚前にお金の価値観をすり合わせることにも使えるツールでもあるのだ。
金銭感覚の違いを結婚後に解決することはなかなか難しい。夫婦のお金のトラブルがおきないためには、できるだけ早い段階でお互いの考え方にどうズレがあるかを理解しておくことが必要である。
最初が肝心というわけだ。契約書の作成は敷居が高くても、「夫婦間のルール」を決めておくくらいの工夫は今後必要になってくるのではないだろうか。
ルール(2) 「消費」と「浪費」の範囲を決めておく
「パワーカップル」は収入に余裕はあるものの、お金を使う機会も比例して多い傾向が見受けられる。特に男性は仕事で責任ある立場についている人が多く、仕事の付き合いで外食などに惜しみなくお金を使ってしまいがちだ。
筆者のところに来られたAさん夫婦からは、単身赴任中の夫の散財が目に余るとのご相談。毎日仕事終わりに部下を連れて飲みに行くだけでなく、週末は取引先とゴルフ三昧。毎月10万円以上のお金が消えていく計算だ。移動のために密かに車まで購入しており、駐車場代など維持費も月額2万円かかっているのだとか。確かに毎月12万円以上の出費は、趣味を通り越して散財というにふさわしい金額だろう。
しかしながら妻も、40代に突入した頃からアンチエイジングのためエステ通いを続けており、洋服もプチプラコーデではみっともないとワンランク上の購入にこだわっていた。計算すると毎月7万円程度の出費。これでは夫の浪費に文句は言えない。問題は、ふたりとも毎月それだけの出費をしていることを理解していなかったことだ。
収入が増えると、気付かないうちに生活レベルも上げてしまうところが「パワーカップル」の陥りがちなパターンだ。必要経費と浪費は紙一重。たとえ小遣いの範囲内であっても「10万円以上の買い物をする際は相談する」など、一定額以上の買い物はふたりでルールを決めて購入するといった工夫が必要になる。ある程度お金の使い道をルール化しておくことは、「パワーカップル」がお金でもめないために必要な作業だろう。
ルール(3) ライフイベント表の作成、長期的なお金の戦略を立てる
「パワーカップル」は、それぞれひとりで暮らせるだけの稼ぎがあることから、お金の使い道をとやかく言われたくないと夫婦別財布にしてしまいがちだ。良く言えば、お互いを干渉せず尊重した生活スタイルだが、いざ、住宅購入や子どもの進学などでお金が必要となったとき貯蓄がないことに初めて気付くパターンでもある。
手遅れにならないためには、時間を取って話し合う機会を作ることができるかどうかがキモになる。それにはまず、ライフイベント表を一緒に作成することをオススメする。
ライフイベント表は、自分や家族の今後10年、20年の予定を書き込み、人生のイメージを具体化していくものだ。マイホームの購入や電化製品の買い替え、定年や親の介護などを想定し、3年後にハワイに行きたいなど自分と家族の夢や希望も織り込んでいく。かかる費用も書き込んで「見える化」することにより、いつまでにいくら準備しておけばいいのかが一目瞭然となっていく。
前出のAさん夫婦は、自分がいくら使っているかを把握することからスタートし、ふたりで話し合ってライフイベント表を書き上げることができた。さらに、お給料から強制的に先取り貯蓄し、残りを自由に使っていいというルールも設定。お金をあるだけ使ってしまっても後悔することがなくなり、ストレスなく穏やかに暮らせるようになっている。
お金は将来の夢や希望を叶えるための手段になり得るモノだが、必要な分をしっかり貯めたら人生を楽しむために使うこともオススメしたい。
定期的に家計の現状を共有することが、お金でもめないためのカギ。共働きの「パワーカップル」は普段一緒にいる時間が少ない生活だからこそ、コミュニケーションをしっかりとることが不可欠だと言える。
辻本 ゆか(CFP)
おふたりさまの暮らしとお金プランナー
企業の会計や大手金融機関での営業など、お金に関する仕事に約30年従事。暮らしにまつわるお金について知識を得ることは、人生を豊かにすると知る。43歳で乳がんを発症した経験から、備えることの大切さを伝える活動を始める。結婚を機に奈良に転居し、現在は独立系のFP事務所を開業。セミナーを主としながら、子どものいないご夫婦(DINKS・事実婚)やシングルの方の相談業務、執筆も行っている。
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