「インプット」と「アウトプット」を同時に行なう

佐藤大和,最速最短,試験合格,ずるい暗記術
(写真=The 21 online)

思い立って資格試験勉強にチャレンジしてみたものの、忙しくて挫折するビジネスマンは多い。だからこそ、効率的な暗記術を身につければ周囲に圧倒的な差をつけることができる。司法試験に上位で一発合格した勉強法のエキスパート・佐藤大和氏から、忙しい社会人だからこそ実践すべき「ずるい暗記術」を学んでみよう。

最短で結果を出すには「一夜漬け」を応用

上司からも部下からも頼られる状況の中、とにかく忙しい30代、40代の中間管理職世代。そんな状態で資格取得を目指すなら、効率的な「ずるい」勉強法を実践する必要があります。

ヒントになるのは「一夜漬け」の際の勉強法。時間がない中、明日の試験に向けて一つでも多くのことを頭に詰め込もうとする。その勉強法は自然と効率の良いものになっているのです。

たとえば、一夜漬けの勉強では教科書を頭から読もうとはせず、まず「答え」を覚え込もうとする人が多かったはず。実はこの方法、大人の勉強においても正解。教科書や参考書を頭から読んでいくより、問題集の解答を読んでいくことで、新しい知識に脳を慣らすことができ、記憶のスピードが高まるのです。

あるいは、学生時代のようにきれいなノートを取ることに固執する人もいますが、これも、一夜漬けの際にそんな悠長なことをする人はいません。

それよりも、問題集を読みながらそこにメモを書き込むほうがよほど有効です。それも「なるほど」とか「?」「!」といった簡単なもので十分。すると、後でもう一度読み返したときに、メモしたときの感情とともに思い出すことができ、記憶の定着に役立つのです。

さらに、一夜漬けのように「時間を限定してしまう」のもお勧めです。勉強する時間をあえて

「朝の1時間だけ」「通勤の往復2時間だけ」などと限定してしまう。人間は締め切りがあると集中力が高まります。自分を追い込むことで高い集中力が発揮できるのです。

復習は「寝る前」と「起床後」の5分でいい

とはいえ、いくら一生懸命に集中して勉強しても、それが一度きりでは効果は出ません。ここは一夜漬けとは違い、繰り返すことが重要です。忙しい人にありがちなのは、勉強した次の日は接待、次の日は残業……などと、勉強の間隔が空いてしまうこと。これではせっかく覚えたことが消えてしまい、1週間前に勉強したことをまた一から学ぶのと変わらなくなってしまうのです。

ただし、復習・反復も「ずるく」行なうことが可能です。たとえば、遅く帰宅した日でも、寝る直前に問題集を五分間だけパラパラめくり、翌朝起きてすぐにまた5分間パラパラとめくる。これだけでも記憶の定着度がまったく違ってきます。

パラパラ「めくる」のは、「読む」のとは違います。「昨日は何を勉強したっけ」「そうだ、こんな問題だった」「ここで引っかかった」と思い出すだけで十分。思い出すことはアウトプットの訓練にもつながり、結果的に短時間で成果を出すことができるのです。

机に向かわない時間こそ暗記のゴールデンタイム

では、実際にどうやって、試験に必要な知識を最速で暗記していくかをご説明しましょう。

1.まず、問題集の答えにざっと目を通します。ポイントは、短時間で「浅く」見ていくこと。これだけで、「こういう知識が出題されやすい」という傾向をなんとなく把握できます。

2.次に、問題と答えを何回も見ていきます。すると、回数を重ねるうちに、内容が少しずつ頭の中に残っていきます。また、数多くの過去問をこなしていくうちに、同じ問題でもいろいろなパターンで出題されていることもわかってきます。一見違う問題に見えるものも、視点や言い回しを変えただけにすぎないことがわかってくるのです。

司法試験であっても、実は、昔から同じような論点が問われており、基本は出題の形を変えているにすぎません。

しかし、問題の傾向がわからなければ、解答に時間がかかったり、見当違いな解答をしてしまいます。問題を見た瞬間に出題の傾向を理解し、解答を思いつくことを目指しましょう。

3.理解できないところがあれば、教科書・参考書を読みます。ここで初めて参考書を開きます。何がわからないのかを知ったうえで読むからこそ、知識を効率的に吸収できるのです。

4.あとは、問題・解答を繰り返し見て、記憶していきます。何度も見ていれば出題頻度の高い問題とそうでない問題がわかってきます。出題頻度の高い問題を優先して復習するというランク分けもしていきましょう。

5.試験が近づいたら、「問題を見た瞬間に答えを導き出すための練習」に移ります。すなわちアウトプットの練習です。といっても、机に向かって問題を解かなくてOK。問題を見て、「あ、これはこうだな」と解答への道筋を思いつけるレベルになれば十分です。

アウトプットというのは、試験本番で必要な知識を思い出すということ。すなわち、アウトプット力とは「思い出し力」にほかなりません。これを鍛えるために、私が司法試験受験生時代に重視していたのが、「机に向かわない」勉強法でした。散歩をしながら、テレビを観ながら、音楽を聴きながら、問題集や参考書を見ることなく「今日勉強したこと」「昨日見た問題と解答」を思い出すのです。これを繰り返すことで、思い出す力=アウトプット力が鍛えられ、しかも思い出すことによって記憶も強化されます。

また、夜と朝の5分間を活用した記憶出し入れ術も、思い出し力強化と記憶の定着に有効です。

勉強というと机に向かって本を開くもの、というイメージがありますが、思い出す訓練を実践するには、机に向かわず、問題集も参考書も見ない時間を確保することこそが必要です。忙しいビジネスマンが通勤時間や移動時間を活用するのに最適な方法と言えるでしょう。

とはいえ、私のご紹介した勉強法はあくまで一案です。勉強法とはミニ四駆のようなもので、モーターを変えたり、タイヤを変えたり、さまざまなパーツを取り入れることで「最速」を目指すもの。

この特集だけでも、多くのエキスパートの方がさまざまな勉強法や暗記法を紹介していらっしゃると思います。その中から、自分にとって使いやすい「パーツ」をどんどん組み込んでいきましょう。その1つとして、私の勉強法も役立てていただければ幸いです。

佐藤大和(さとう・やまと)レイ法律事務所代表弁護士
偏差値30台の落ちこぼれだったが、勉強に目覚めて立命館大学法科大学院に数ヶ月の勉強で合格し、司法試験には1回で合格。その方法論をまとめた『ずるい暗記術』(ダイヤモンド社)がベストセラーになったほか、テレビのコメンテーターなどでも幅広く活躍。近著『超楽仕事術』(水王舎)も好評を博している。(取材構成:川端隆人)(『 The 21 online 』2017年7月号より)

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