高度経済成長期に建設された橋梁の老朽化が一斉に進み、危険と判定されて通行止めになる事例が全国で相次いでいる。国と地方自治体の財政難から、架け替えや補修工事をあきらめ、撤去されるケースも各地で出てきた。

全国に現存する橋梁は国と自治体の管理分を合わせてざっと73万本。うち20%が建設後50年を経過しているが、10年後には50年を超す老朽橋が倍増する見通しだ。人口減少と高齢化社会の進行で国や自治体の財政が好転するめどは立たない。もはやすべての橋梁を維持することはできず、残すべき橋梁の選択が地域の課題に浮上してきた。

住民から待ったがかかった田辺市の秋津橋撤去

地方経済,過疎化,財政難
3月から通行止めが続く和歌山県田辺市の秋津橋。市は撤去したい意向だが、住民が存続を希望し、今後の方向は決まっていない(写真=筆者)

和歌山県南部の中心都市田辺市。JR紀伊田辺駅から歩いて15分ほどの秋津町で1本の橋が3月から通行止めになっている。右会津川に架かる秋津橋だ。橋は延長60メートル、幅5.6メートル。1971年に建設された。

長く住民の生活道路になってきたが、市の安全点検で橋脚に亀裂や鉄筋の露出、コンクリートのはく離などが見つかった。市は落橋の恐れもあるとして橋の両側に通行を遮断する緑のネットを設置している。

市の安全点検では秋津橋のほか、龍神村小家の菅小橋(延長79.6メートル、幅2.2メートル)、中三栖の中村橋(延長58メートル、幅1.7メートル)も危険と判定され、通行止めになった。ともに1959年、1976年に架けられた老朽橋だ。

市は3橋とも維持が難しいと判断し、撤去の意向を打ち出した。菅小橋と中村橋は2017年度中に撤去することが決まったが、秋津橋は住民から待ったがかかり、方針が固まっていない。

秋津橋の100メートルほど下流には国道が通り、う回路として利用できる。田辺市土木課は「生活道を手放したくない住民の気持ちは分かるが、橋を全部維持することは今の財政でとてもできない」と対応に苦慮している。

財政難に人口減少が追い打ち、維持予算確保できず