東証1部の時価総額の過去最高額は2015年8月10日の609兆5652億円だったが、今年9月19日に613兆7404億円となり、更新した。そもそも2015年にはバブル期を上回っていたわけだが、当時の状況などを見ていこう。
2015年8月の経済状況は
2015年はユーキャン新語・流行語大賞で「爆買い」が大賞を受賞するなど、中国人を中心とした爆買いが話題となった年だ。2012年からのアベノミクス景気にも支えられ、日経平均株価も2015年8月10日には2万808円台を記録するなど好調な経済状況であった。ただしバブル最高値の日経平均が3万8915円であることを考えるとバブル期のような株高ではなく、発行株式数の増加や上場企業数に支えられての時価総額更新であった。
2015年8月10日時点での時価総額上位の企業を見てみると、トップはトヨタ <7203> で時価総額は約26兆円であった。自動車関連では9位にホンダ <7267> 約8兆円や日産自動車 <7201> 約5兆円が時価総額上位にランクインしている。
2位には金融から三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> 約12兆円がランクインした。金融では8位に三井住友フィナンシャルグループ <8316> 約8兆円、10位にみずほフィナンシャルグループ <8411> 約7兆円が上位となった。
3位にはNTTドコモ <9437> が約11兆円でランクインし、4位には日本電信電話 <9432> 約10兆円、6位にはKDDI <9433> 約9兆円、7位にはソフトバンクグループ <9984> 約8兆円がランクインするなど通信サービスも高い時価総額であった。
2017年9月の経済状況は?
今回記録を更新した2017年9月19日は、NYダウが過去最高値を連日更新するなどもあり、日経平均株価は19日には2万299円と約1カ月半ぶりに2万円台を回復した。単純に日経平均だけを比較すると2015年8月より低いが、東証1部の時価総額では記録を更新した形だ。
個別銘柄の時価総額上位を見てみると、トップは2015年と変わらずトヨタであるが、時価総額は約22兆円と約4兆円減少している。2位は日本電信電話で約11兆円、3位はNTTドコモの約10兆円と通信サービスも変わらず上位だ。他にも通信サービスでは5位にソフトバンク約10兆円、6位にKDDI約8兆円がランクインしている。
金融からも4位に三菱UFJフィナンシャル・グループが約10兆円、11位に三井住友フィナンシャルグループが約6兆円、16位にみずほフィナンシャルグループが約5兆円と上位にランクインしている。
時価総額上位の企業において2015年と比べ大きく変わったのは、日本郵政グループの存在だ。2015年10月時点では日本郵政グループ3社は上場しておらず、当時の東証1部の時価総額の押し上げには寄与していなかった。しかしその後上場を果たし、2017年9月19日時点では日本郵政 <6178> が約6兆円で9位、10位にゆうちょ銀行 <7182> が約6兆円でランクインするなど、東証1部の時価総額の押し上げに大きく寄与している。
その他の個別銘柄では任天堂 <7974> が2015年の約3兆円から2017年には約6兆円に時価総額を増やし、32位から13位に順位を上げているのも目立つ。
背景には大型IPOや倒産数の減少も
今回の記録更新は大型IPOによる時価総額増加の影響も大きい。2015年9月以降、郵政グループ3社の上場に加え、九州旅客鉄道 <9142> やLINE <3938> の上場などの大型IPOも相次いだ。
倒産件数の減少も東証1部の時価総額に影響を与えている。2016年度は上場企業の倒産数が26年ぶりにゼロになり、倒産による東証1部の時価総額の減少はなかった。
バブル期に比べると、東証1部上場の国内企業は7割超、上場株式数も約3割増加している。今回の東証1部の時価総額が過去最高を更新した背景には企業業績の好調さや大型IPO、倒産件数ゼロ等ももちろん要因ではあるが、上場企業数と上場株式数の増加によるところが大きい。今後は企業業績の更なる回復での時価総額の押し上げに期待したいところだ。(右田創一朗、元証券マンのフリーライター)
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