結論と課題
このようにねんきん定期便は、自分が加入する公的年金の加入状況や予測年金額を確認できるだけでなく、公的年金を通じた老後に備えた人生設計の改善に役に立っている可能性がある。
しかし、当レポートの分析は、少ないサンプルデータを利用し、単純な方法によるものであるため、今後、ねんきん定期便の効果について詳細に分析する必要がある。特に、分析上、他の変数を考慮する必要があることや、老後の生活準備(ライフプラン設計)とねんきん定期便への関心には内生性(同時決定性)がある可能性を分析に考慮にいれる必要がある。
ライフプラン設計に関心がある人が積極的にねんきん定期便を見ることにより、将来の年金受給額や自分で貯めておく必要がある金融資産額の正確性が増している可能性がある。
また、今回の分析は2016年の1時点の分析であるが、ねんきん定期便の発送方法や内容には変化があり、このような変化を利用した厳密な分析も可能だと思われる。今後も、これらの点を考慮して分析を精緻化していく必要性があるものと考えられる。
参考文献
・厚生労働省(2016)『ねんきん定期便』
http://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/dl/h28_jigyou04a_day1.pdf
・中嶋邦夫(2017)「年金改革ウオッチ2017年2月号~ポイント解説:「
ねんきん定期便」のオンライン化
」『保険・年金フォーカス』2017-02-07.
・Mastrobuoni G. (2011) “The Role of Information for Retirement Behavior: Evidence based on the Stepwise Introduction of the Social Security Statement,” Journal of Public Economics 95, pp.913-925.
・SSAB (2009) The Social Security Statement, How it Can Be Improved. Technical Report, Social Security Advisory Board.
北村智紀(きたむら ともき)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部
主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任
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