最近は終活がすっかり定着し、人々の相続への関心は一層高まっている。自分が生きているうちに、自分名義の不動産を整理したいと思い、生前贈与を行う人も増えている。しかし注意して行わないと、税が課せられることになる。
関心高まる終活と生前贈与
先日Aさんから、不動産の生前贈与についての相談があった。
現在Aさんは、母親と同居していて、父親は5年前に他界している。Aさんには弟が一人いるが、実家とは別に生活をしている。母親は2年前から、終活を行っていて、自分の財産をリストアップしたり、葬儀の要望をノートにまとめたりしている。
先月Aさんは、母親から家と土地を今のうちに譲りたいと言われたという。「生前贈与に当たることになるので、贈与税が課せられるのでは?」とAさんが疑問に思い、母親に聞いたところ、うまく贈与すれば、節税できると聞いたと、母親はAさんに答えたという。
Aさんは、やはり「贈与税」がかかるではないか気になって仕方がないと筆者の所に相談に来られたのである。
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生前贈与のメリット
まずAさんに生前贈与のメリットを伝えた。
相続の際に最も頭の痛い問題は、不動産の処分である。現金は基本的に法定相続分できっちりと分けることができ、異論が出ることは少ない。しかし不動産は相続人で円満に分けることは、意外と難しい。
例えば、家を相続人全員で分けようとしても、その家に住まない人にとっては、何のメリットもない。自ずとその家に住む人が単独で相続することになる。しかしそうなると、現金を他の相続人が多めに相続するなど、他の財産の分け方に影響が出てくる。
そこで、被相続人が生きているうちに家や土地の名義をどうするかを相続人に伝えておけば、少なくとも不動産の相続でもめることは少ないのである。これが生前贈与ということになる。
また、被相続人となる人が、不動産を受け継ぐ人を直接指定することになるから、異論、反論が出ることは少ない。もし遺言書で同じように、家は○○に相続すると書いても、すんなりそのとおりに事が運ぶとは限らない。
また、生前贈与することで、相続財産が減ることもメリットだ。相続税が課される財産が減ることになるからである。特に2015年1月に法律が改正され、相続税の基礎控除額(相続税がかからない金額)が引き下げられたため、いかに相続財産を減少させるか、多くの人にとって頭に痛い問題になってきている。