中国は仮想通貨取引の排除を開始した。中国人民銀行など関連7部門は9月4日、「仮想通貨発行増資リスク防止に関する公告」を発表、政府の認可を受けない資金調達行為を禁止した。新規に仮想通貨を公開し、資金調達をする行為(ICO)は当然、政府から認可を得ておらず、全面的に禁止されることになった。

9月13日夜、中国インターネット金融協会は、「ビットコインなどの仮想通貨は明確な価値の基礎が欠乏している」と題した文章を公表している。

「近年、ビットコイン、LTCなどの仮想通貨がインターネット上で集中的に取引され、関与する人数が増加、金融、社会に対する隠れたリスクが無視できなくなってきた。ビットコインなどの仮想通貨は明確な価値の基礎が欠乏しており、投機の様相が濃厚であり、価格のボラティリティは極めて高く、投資家は盲目的な取引を繰り返している。資金を損失しやすく、投資家はリスク防止の意識を強化しなければならない。

特に注意しなければならないのは、ビットコインなどの仮想通貨は、日を追うごとに、マネーロンダリング、麻薬の販売、資金の違法送金、違法な資金調達などの犯罪活動の道具となっている点である。投資家は警戒心を保たなければならず、違法行為、犯罪活動を見つけたらすぐに当局に報告しなければならない。取引プラットフォーム(取引所)における技術的なリスクは高く、国際上、既にハッカーによる窃盗事件が発生しており、投資家は自身で投資リスクを負わなければならない」

などと指摘している。

中国、ビットコイン取引を全面的に排除

仮想通貨,ビットコイン
(写真=PIXTA)

9月15日には、監督管理部門がビットコイン取引プラットフォームの全面閉鎖、市場からの退却を要求。同日にはOkcoin、火幣網、雲幣網など大手プラットフォームが次々に閉鎖を公表、9月30日までにあらゆる口座の取引を停止し、10月31日までに、逐次あらゆるデジタル資産の人民元取引業務を停止すると発表した。

共産党一党独裁体制で社会主義市場経済の中国において、金融はもっとも閉鎖的な産業である。国内投資家に対する対外証券投資の開放は遅れており、当局の認可の必要なQDII(適格国内機関投資家)制度を利用するか、上海香港ストックコネクト制度あるいは深セン香港ストックコネクト制度を通じ、銘柄の制限、1日の取引制限(総量)の範囲内においてのみ、自由に売買を行うことができるといった仕組みである。

人民元取引においては、個人には年間の外貨換金額制限がある。企業では事業に関する換金、送金は原則自由であるが、金融取引のための換金、送金は原則禁止である。こうした厳しい規制のある業界で、これまでビットコイン取引が禁止されなかった方が不思議である。

中国人民銀行など10部門・委員会は2015年7月18日、「インターネット金融の健康的な発展を促進することに関する指導意見」を発布しており、インターネット金融プラットフォームを積極的に支援するとしている。

こうした点からいえば、経済、社会に悪影響を与えない限り、ビットコインも発展を支援される対象となったはずだ。一方、インターネットによる決済、銀行業務、株式公募、ファンド、保険の販売、信託業務、消費者金融業務などに関して行政における監督管理の責任分担が示されている。

これまでも、ビットコインの問題点は指摘されてきた。とはいえ、取り締まりの実態がない限り、企業はあらゆる分野において、自由、闊達に起業する。高いリターンが望める以上、リスクを恐れず取引に応じる大量の顧客が存在する。そうした中国人のアニマルスピリットが、中国のインターネット金融を爆発的に発展させ、ビットコイン取引量は一時、全世界の9割を占めるほどの隆盛を極めたのである。