都内のタクシー会社が香港のダミー会社を利用して社会保険料逃れをしていたと2017年9月24日の読売新聞で報じられ、その後各大手メディアでも報道された。このような社会保険料逃れが行われると、従業員側の弊害も大きい。

社会保険料逃れのしくみ

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(写真=seaonweb/Shutterstock.com)

タクシー業界運転手の稼ぎに関しては出来高払い的な要素が強く、歩合給が設定されていたり個人事業主として活動していたりする運転手は少なくない。各種報道によると、このタクシー会社では従業員は海外の会社(香港のダミー会社)に在籍して国内の会社に出向している形となり、固定給は国内法人から、歩合給は海外法人から支給していた。

社会保険料は、固定給に対してのみ控除されていたということである。本来固定給+歩合給に社会保険料がかかるにもかかわらず、歩合給分だけ社会保険料が下がっていたことになる。

なぜ起きたかを推測すると……

この事態に絡んでいるのは、社会保険料の高負担、2015年度以降顕著になった社会保険加入指導強化、2016年に開始された法人版マイナンバー(法人番号)制度だと思われる。

2017年9月以降の厚生年金保険料率は18.3%にもなり、この他に健康保険・介護保険で10%程度(料率は健保組合等によって異なる)が加わる。あわせて3割程度であるが企業と従業員は折半負担であり、月20万円の従業員を雇うだけで、企業は赤字黒字関係なく月3万円程度の持ち出し(企業負担)が生ずる。

社会保険はすべての法人と常時従業者数5人以上の個人事業所に加入義務があるが、2015年時点で全国に約80万社もの未加入法人が存在する。法人代表者も社会保険の対象者となるため、法人が加入するためには設立直後に年金事務所へ届け出るべきではあるが、上記のような重い負担もあり、未加入法人が放置されることも多かった。

それが2015年度から、未加入法人の加入促進強化へと徐々に動いている。建設業では2012年頃から、未加入法人に対して公共事業の入札資格を無くすなど強化されていたが、全業種にわたり加入逃れが難しくなってきた。

年金事務所は、国税庁から源泉所得税を納付している法人のデータを得て、加入指導強化を行っている。また2016年より始まったマイナンバー制度で法人番号も発行されており、法人番号による社会保険加入管理も進んでいる。

海外ダミー会社を使う手法は加入指導強化前よりあったが、加入指導強化により社会保険料逃れの手法を使う法人が増えたとも、逆に年金事務所が加入指導強化とともに社会保険料逃れにまで着目したともいえる。

社会保険料逃れによる従業員側のデメリット

税ではなく保険料を下げているので、社会保険をかけている従業員側にもデメリットが出る。不当に保険料を下げられていたら、手取りこそ増えるがこれから説明するような弊害が出ることは意識しておいて欲しい。

働いている間で言えば、病気休業中に支給される傷病手当金、産前産後休業に支給される出産手当金が、およそ給与の3分の2だけもらえる。月給30万円のサラリーマンであれば、おおよそで言えば休業中に、月20万円分の傷病手当金・出産手当金がもらえる。

これが月給15万円分だけ海外ダミー会社から出ているとしたら、半分の15万円分にしか社会保険料はかかっていないことになる。すると傷病手当金・出産手当金も、およその半分の月10万円分しかもらえないことになる。

また老後にもらえる厚生年金も、生活水準の維持が目的のため、在職中の給与額に応じて変動する。保険料逃れした分はもらえる厚生年金も少なくなる。

保険料逃れした責任は全面的に会社側が負うので、2年間遡って支払う場合延滞金は会社側が負担するが、見逃されたままでいれば勤めている従業員の保障が削られるという点を意識してこの問題を見ておきたい。だからこそ年金事務所も他にも例がないか調査を行うわけである。(石谷彰彦、ファイナンシャルプランナー)

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