10月27日に不動産流通経営協会が発表した「不動産流通業に関する消費動向調査」(2017年度)では、住宅ローンで固定金利型を選択した人の割合が前年度から大きく上昇した事が明らかとなった。足下の低金利環境を背景に、金利を固定したいと考える人が多いようだ。また、住宅ローンの利用者も前年度から増加傾向にある。低金利環境と不動産価格の高騰という状況の中、住宅ローンの利用傾向も環境に合わせたトレンドへ変化しているようだ。

9年ぶりに「固定金利型」が「変動金利型」を逆転

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(写真=PIXTA)

調査は首都圏1都3県で2016年度中に購入した住宅の引渡しを受けた世帯を対象とし、6月5~23日にかけて行われ、1067世帯から有効回答を得た。

住宅購入者の内、民間ローンを利用した人に選択した金利タイプを聞いたところ、「全期間固定金利型」が14.5%と前年度調査の5.2%から9.3ポイント増加した。選択した期間中の金利が固定される「固定金利期間選択型」を選択した人も29.3%となり、前年度の18.0%から11.3ポイントの増加となった。一方で「変動金利型」を選択した人は43.6%と、前年度の63.9%から20.3ポイントもの大幅減となった。「全期間固定金利型」と「固定金利期間選択型」の合計は43.8%となり、「固定金利型」を選択する人が「変動金利型」を選択する人を上回った。これは2008年度調査以来、9年ぶりとなる。

また、「固定期間選択型」を利用する人の固定期間について、最も多いのは「固定期間10年」のタイプとなり、その割合は42.4%となっている。前年度調査の27.7%からは14.7ポイントの増加となる。また、「固定期間10年」を含め、10年以上の固定期間を選択する人の割合は88.2%に上り、前年度の58.1%から実に30.1ポイント増となっている。「固定期間選択型」においても、固定期間の長期化傾向が鮮明だ。

金利水準は過去最低水準

住宅ローンの利用において、「固定金利型」を選択する人の割合が高まっている。「全期間固定金利型」を選択した人にその理由を聞いたところ、「現在の金利が低いから」が60.3%で最も多くなっている。同回答を選択した人の割合は前年度の55.8%から更に増加しており、現在が金利の底値圏であると見る人は増加傾向にあるようだ。「固定金利期間選択型」の選択者でも、同回答の選択率は前年度の40.5%から53.7%にまで増加しており、同様の傾向が見られる。

固定金利型住宅ローンの指標となる長期金利は低利回りでの推移が続いている。足下の新発10年国債利回りは10月27日現在で0.07%となっている。2016年に付けていたマイナス圏からは上昇しているものの、9月には再びマイナス利回りを記録し、現在も0を挟んだ推移が続く。低金利が叫ばれ、「固定金利型」を選択する人が「変動金利型」を上回っていた2008年度でも同利回りは1.5%程度あり、そこから更に大きく金利は低下した事となる。足下の金利が底値圏であると考え、「固定金利型」の選択者が増えるのも当然の状況であると言える。

民間住宅ローンの利用率も増加 低金利と住宅価格高騰が背景に

住宅ローンの利用傾向として、民間の住宅ローン利用が高まっている事も調査から明らかとなっている。新築住宅購入者の民間住宅ローン利用率は73.1%で前年度の69.2%から3.9ポイント増、中古住宅購入者でも66.5%と前年度の63.3%から3.2ポイントの増加だ。新築、中古共、民間住宅ローンの利用率は2010年以来の高さとなっている。

民間住宅ローンの平均借入額も増加している。新築住宅購入者の民間住宅ローン平均借入額は前年度比2.5%増の3863.9万円、中古住宅購入者では3.4%増の3172.4万円だ。共に調査を遡れる2004年以降の最高額となっている。民間住宅ローンは利用率、平均利用額共に、非常に高い水準にある。

民間住宅ローンが積極的に活用されている要因の一つは、現在の低金利環境があると見られる。低金利環境で金利負担が少なくなり、住宅ローンの利用が促されている可能性が高い。

また、住宅価格の高騰も要因であろう。住宅価格が高騰している事により、住宅ローンの平均利用額を増加するだけでなく、ローンの利用を余儀なくされる人も出ていると見られる。東京カンテイの調査によると、新築マンション70平方メートルあたりの価格が年収の何倍にあたるかを計る年収倍率は、全国平均で2010年の6.01倍から2016年には7.59倍にまで上昇している。首都圏の上昇は更に著しく、2010年の7.94倍から2016年には10.68倍となっている。年収の上昇より遥かに早いスピードで住宅価格が上昇している事が、住宅ローンの利用を促しているようだ。

現在の住宅ローンのトレンドは、「固定金利型」の選択と民間ローンの利用増加といった傾向にある。ただ、足下では不動産市場に減速の兆しを示す指標も見られており、金融機関の住宅ローン新規貸出も2017年4~6月期に前年同期比17%減と急ブレーキが掛かっている。金利環境には上昇の兆しが見られていない為、「固定金利型」の人気はしばらく続く可能性が高いが、利用率や平均利用額の推移は不動産市場の動向に大きく左右されるだろう。冒頭の調査は毎年行われているが、来年の調査を見る際には、住宅ローンのトレンドにも気を配ってはいかがだろうか。(ZUU online編集部)

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