UberがVISAやバークレイズと提供し、11月から独自のクレジットカードを提供する。

オンラインで気軽に申し込め、数分後にはアプリから配車サービスやフード宅配サービス「Uber Eats」で使えるほか、手数料無料、ポイント還元、携行品損害など、目玉特典が多数用意されている。

Uberのクレカ市場参入は、同じく事業多角化を試みるAmazonなど、ライバルIT企業との顧客獲得合戦をさらに加熱させそうだ。

加盟店の利用でもポイントが貯まる

Uber,VISA,クレジットカード
(写真=Prathan Chorruangsak/Shutterstock.com)

Uberのクレカは利便性や特典でも突出している。デジタル世代に欠かせないオンライン申込みはもちろん、申込みに必要な個人情報をすでにUberに登録済みの情報から自動的に読み込んでくれる。

同社のウェブサイトによると、申し込み完了後数分後にはアプリに追加されたデジタルクレカを各種Uberサービスで使えるようになる。実物のカードは約1週間で郵送される。

海外での利用も含め、手数料は完全無料。最初の90日間限定特典として、500ドル利用するごとに1万ポイント(100ドル相当)のボーナスがもらえる。さらには加盟店での利用で最高4%のポイント還元付きだ。

年間5000ドル以上利用した場合、Uberサービスで利用可能な50ドル相当のポイントが追加される。携帯電話料金の支払いに利用すれば、最高600ドルの携行品損害提供など、消費者にとっては嬉しい特典がずらりと並んでいる。

年間金利は15.99~24.74%と、申込者の信用度によって異なる。

膨大な顧客情報を収集 情報管理体制に懸念の声も

Uberのクレカ市場参入は、明らかにAmazonを筆頭とするライバルIT企業を意識した動きだ。

熾烈な市場紛争を勝ちぬくうえで、Uberにとって最大の利点となるのは顧客情報ではないだろうか。同社は世界中で1000万人以上から利用されている。つまりAmazon同様、主要業務を通して膨大な個人データを管理していることになる。

クレカの提供により、こうしたた基礎的な個人情報に各顧客の消費動向を付け加えることができる。顧客経験のカスタマイズに取り組んでいる企業やリテール業者にとっては、市場戦略に貢献する希少な情報だ。

しかしUberのクレカを利用するにあたり、過去に報じられた悪質な個人情報流出 への懸念も聞かれる。例えば2014年、同社の従業員が恐喝目的で顧客の個人情報に無断でアクセスして問題になったほか、配車をキャンセルした利用者が運転手から嫌がらせのメッセージを受けた。

ずさんな個人情報管理体制が明るみにでた後、同社はサードパーティーに監視を許可するなどシステム改善に乗りだしているが、現時点でどの水準まで改善されているのかは不明だ。

Uberは個人情報のサードパーティーへの流出の可能性を否定しているものの、顧客の立場から見ると不安が残る。消費者が安心して利用できる環境が整っていることを立証する方が、寛大な特典をばら撒くよりも効果的かも知れない。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

FinTech online編集部

【編集部のオススメ FinTech online記事】
FinTech普及率調査「中国は日本の3倍以上」 EY報告書
機械学習するAIハッカーがセキュリティプログラムを打ち破る
ブロックチェーン・カンファレンス開催、ビットコインの犯罪捜査やセキュリティに関して議論
「ビットコインは詐欺」JPモルガン・ダイモンCEOが相場操縦と訴えられる
銀行とFinTechスタートアップが役割入れ替え API使ったビジネス模擬プレゼン