Amazon、Facebook、Netflix 、GoogleといったIT企業の登場が、エンターテインメント・メディアの在り方を劇的に変えた近年、企業間の生き残り合戦はますます激化している。
革命期を迎えた市場では、人気急上昇中のストリーミング・サービスの利用者が2021年には2億人に達すると予想されている。またバーチャル・リアリティー(VR/仮想現実)やオーグメンティッド・リアリティー(AR/拡張現実)といった新たなテクノロジーが、新たな市場開拓につながる可能性も期待できる。

企業は需要のめまぐるしい変化に対応する上で、効果的な対応策を投じることが必須となるだろう。

4割は無料ストリーミングを利用 「お得感」に消費者は弱い?

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(写真=Thinkstock/Getty Images)

21世紀以降、ニュースやエンターテイメントの在り方は劇的な変貌を遂げた。従来のメディアにとっては新たな機会でもあり、存続を賭けた試練の時でもある。

テレビ視聴はケーブルTVや衛星放送に、そしてAmazonやNetflix が提供するストリーミングサービスへと移行。電話での会話には固定電話よりもモバイルデバイスが利用される方が一般的な時代となった。

定期的に消費者のデジタル動向調査を行っているデロイトは、最新のレポート「メディア・アンド・エンターテインメント産業の展望」の中で、ビデオオンデマンド(利用者の需要に応じて番組配信するサービス)を成長の要とし、その中でも画像ソースを直接インターネットで受信できるストリーミング・サービスの人気が、急速に高まっていると分析している。

どの程度需要が伸びているのかというと、2012年には31%だったビデオストリーミング・サービスの利用者は、2015年には43%、2016年には49%まで増えている(デロイト2016年11月調査)。

回答者2131人のうち、月1回以上定期的にサービスを利用しているのは60%。世界全体の視聴者は2015年の1.8億人から、2021年には2億人を超えるとの予測だ。

ケーブルTVや衛星放送の利用者も74%と安定しているものの、そのうち3分の2の回答者が「インターネットや電話サービスがパッケージに含まれているから」と答えている。つまり本来の利用目的は番組の視聴そのものではないということになる。

ビデオストリーミング・サービスに「お得感」を求める消費者が多く、有料サービスの定期利用者はわずか35%。40%は無料サービスで視聴している。

Amazonなど「OTTサービス」が顧客獲得競争の火種に

2017年の調査ではこうした傾向がさらに強まり、従来のケーブルおよび衛星放送サービスとAmazonやNetflix といったOTTサービス間で、顧客獲得競争を引き起こしている。

OTTサービスとは通常の通信サービスとは異なり、インターネットを通して動画や音楽、メッセージなどを配信するサービスだ。

顧客を惹きつける戦略として、各社は「スキニーバンドル」と呼ばれる主要チャンネルだけをまとめた簡易パッケージを提供している。

一例を挙げると、衛星放送ディッシュ・ネットワークが2015年から提供している低料金テレビ配信サービス「Sling TV」は、月額20ドルでESPNやディズニーチャンネルなど人気30チャンネルが視聴できる。「観たい番組にだけお金を払いたい」という消費者の需要にマッチし、サービス開始1年で70万世帯が契約した。

エンターテインメント・メディア事業の強化を目指すウォルト・ディズニー・カンパニーも、21世紀フォックスの大半の株を買収交渉中だと報じられている。ディズニーは自社の動画ストリーミング・サービス開始を来年に予定しており、コンテンツの充実を目論む動きではないかと推測される。

しかし現時点(2017年11月8日)では交渉の成立は確認されておらず、合意に至らない場合、立ち消えになる可能性も考えられる(CNBCより)。

ミレニアル世代は短編動画か長時間の連続視聴が好き?

消費者によるメディアの受信手段も、時代の移り変わりとともに大きく変化している。

この傾向は特にミレニアル世代に強く見られ、20%以上がスマホやタブレットなどのモバイルデバイスを主な視聴手段として利用している。

この世代はYouTubeなどで視聴できる、6分前後の短いコンテンツを好む傾向が強いことも特徴だという。自宅でテレビの前にどっしりと構えてドラマや映画に集中するよりも、ちょっとした息抜きや移動中に気軽に観られる視聴環境を重視している。

しかしドラマシリーズなどは「平均5時間にわたり連続して観る」といった、極端な一面も明らかになっている。連続視聴は全世代を通して見られる傾向だが、ミレニアル世代の90%が長時間にわたり平均6話分のドラマを観ている。

Netflixから VR・ARを駆使したコンテンツが登場?

こうした消費者動向を踏まえ、デロイトは今後、消費者の関心がより新鮮でより近未来的なものへとさらに移行すると予測している。

例えばバーチャル・リアリティー(VR/仮想現実)やオーグメンティッド・リアリティー(AR/拡張現実)といった先端技術を駆使した独自のコンテンツの制作が、Netflix やHuluなどOTTサービスに求められることも十分にあり得る。

その中でも期待が高まるのは、『ハウス・オブ・カード 野望の階段(ケヴィン・スペイシー主演・製作・総指揮)』や『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック(テイラー・シリング主演)』『ストレンジャー・シングス(ザ・ダファー・ブラザーズ製作・監督・脚本)』など、すでに独自のコンテンツ制作で続々とヒットを飛ばすNetflixだろう。

同社は今年1月、過去最高の四半期決済を発表して以降記録を更新し続けている。過去3カ月で500万人の新規契約者を獲得し、第3四半期の利益は1.29億ドルと前年と比べて2倍に膨れ上がった。

貪欲なまでのグローバル戦略が功を成し、世界中で有料視聴者数が1億人を超え、収益は29.8億ドル(前年同期比40%増)に達した(Sunday Timesより)。

4月には株主宛ての手紙の中で、新たなコンテンツの制作に10億ユーロを投じる計画を明らかにしている。配信を予定している番組の半数をオリジナルにする意向だが、新たな作品の方向性としてVRやARが浮上しても不思議ではない。

5GモバイルネットワークがVR・AR市場を盛り上げると期待

VR・ARは現在、エンターテインメント・メディア市場で最も注目を集めている分野の一つである。最近になってようやく本格的な脚光を浴び始めた印象が強いが、Venture Beatの調査によると2015年の時点で、234社もの企業が市場に参入し、38億ドルもの資本金が投じられていたという。市場価値は130億ドルにも達していた。

2016年のVR・AR市場の収益は39億ドルと予想より11%低かったものの、5Gモバイルネットワークの普及により飛躍的に拡大すると期待されている(Dig-Capitalより)。

しかし2016年の成長ぶりには、ARを浸透させた「ポケモンGO」!の貢献度が高かった事実は否めない。市場の需要を押し上げる勢いに失速が見られる今、新たな煽動力は必須かと懸念される。

Googleのヘッドセット「Day Dream」に代表される「モバイルVR」が、次なる起爆剤に成長するとの見方もあるようだが、「まだまだ発展段階」との評価が一般的だ。

多くのモバイルVRが実用性よりも物珍しさで消費者にアピールしている感が強く、実際の利用者からは「周囲に見せびらかすのに飽きると、すぐに使わなくなる」との声も聞かれる。

Googleが定着しやすい要素を備えたモバイルVRとして開発した「Day Dream」も、操作性などではほかのモバイルVRよりも優れているものの、バグ問題など解決すべき課題は山積みだ。

そのほかソニーはPlayStation4向けのVRシステム「PS VR」、MicrosoftのWindows Mixed Reality用ヘッドセットなど、続々と新型モバイルVR商品が発売されている。

Facebook主要収入源「広告」がなくなる日が訪れる?

エンターテインメント・メディア産業で活性化しているのは、動画配信だけではない。FacebookやYouTube、WhatsAppといったSNS(ソーシャルメディア・サービス)も、過去最大の規模に成長している。

そのトップを独占するFacebookの利用者は今年9月の集計で20億人を突破。YouTube(15億人)、WhatsApp(13億人)、Facebookメッセンジャー(13億人)、WeChat(9.6億人)などが続く(statista.comデータ)。

しかしSNSというとアカウントを作成しただけで一切利用していない、あるいはいつの間にか利用しなくなった「幽霊会員」も少なくはないはずだ。しかしFacebookの月間利用者数を見てみると、今年第1四半期で19億人—つまり登録者のほとんどが、現在も定期的に利用していることになる。そのうち17億人がモバイルから利用している点からも、時代の潮流が感じられる。

Facebookの収益面に現れた変化といえば、その収入源だ。同社の最大の収入源が広告であることは周知の事実だが、その割合は年々急速に増している。

2012年には総収益50.9億ドルのうち8割に値する42.7億ドルを広告から得ていたが、2014年には124.6億ドルのうちほぼ9割に値する9.74億ドル114.9億ドル、2016年には276.5億ドルのほぼ全部、269億ドルを占めるまで増えている。

この辺りが「Facebookは広告に過剰なまでに依存している」と評されている所以であるが、ついに方向転換を図る時期が確実に訪れようとしている。

成長速度NO.1は共有画像サイト「Pinterest」

Facebookはすでに昨年頃から、同社のアプリの広告が飽和状態になると警告を発してきた。これは「利用者のニュースフィードに流せる広告枠が限界に達する」ということだ。つまりFacebookはこれまでのように、広告のみに依存した事業成長に期待できなくなる。

もちろん今すぐ完全に成長が止まるわけではない。利用者が増え続けるかぎりは広告枠も増えていくはずなので、広告収入もプラスとなるはずだ。

しかし肝心の利用者増加率が減少傾向にある点が指摘されている。Facebookがターゲットにしてきた若い世代間で従来のSNSに対する飽和感が広がり、より新鮮味あふれるライバルSNSへの流出が懸念されている。「Facebook=時代遅れ」と見なす若者も増えている。

対象的に利用者の成長率では共有画像サイト「Pinterest」が、瞬く間に月間利用者数1000万人を達成した。ブックマーク代わりに好きな画像を保存、インターネットを通して世界中の利用者間で共有できるという、シンプルかつ実用的なコンセプトが成功のひみつだ。SNSランキングではFacebook、YouTube、Instagram、Twitteに続き、5位に入った(Dream Grow2017年11月データより)。

エンターテインメント・メディア産業自体が世紀の改革を迎えた今、Facebookにかぎらず人気を確立したSNSは新たな戦略を打ちだす時期に差しかかっているのではないだろうか。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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