自民党税制調査会が2018年度の税制改正で抜本的な所得税改革の議論に踏み込む方向であることが分かった。富裕層にこれまで以上の負担を求めるとともに、高額報酬を得ている年金受給者に給与と年金の双方で控除を受けられる仕組みを改める案などが浮上している。
所得税だけでなく、たばこ税の増税や森林環境税の創設、出国税の導入も検討される。2018年は診療報酬の改定を含めた医療と介護制度の改革が予定され、負担増は確実な状況。議論の進展によっては、富裕層だけでなくサラリーマンや年金生活者も増税となりそうだ。
財務省は所得税控除方式の変更を検討
自民税調は既に非公式の幹部会合を開き、2018年度の税制改正に向けて議論をスタートさせている。幹部会合では22日に総会を開いて議論を本格化させたあと、12月中旬に税制改正大綱をまとめることを確認した。この中で焦点となりそうなのが、所得税控除の見直しだ。
所得税控除は納付額を決める際、一定額を差し引いて税負担を軽くする仕組み。全員に共通する基礎控除や家族構成に応じた控除、所得の種類に応じた控除などがある。
財務省は所得額から一定額を引いて課税所得を減らす「所得控除方式」から、課税所得に税率をかけて税額を出したあとで一定額を差し引く「税額控除方式」への変更を検討しており、10月の政府税制調査会で見直しの試算を示した。
それによると、収入から年38万円を引く基礎控除を税額控除方式にすると、所得税負担の軽減額が一律で年3.6万円になる。年収100万円の人は現行制度で年1.9万円の減税額が年3.6万円になるため、年1.7万円の減税だが、年収500万円になると年4万円、年収1000万円だと年5.1万円、年収2500万円では年11.6万円の増税になる計算だ。
財務省は富裕層ほど減税効果が大きい今の方式を改め、低所得者層の負担軽減が実現できるとしている。さらに、高所得者の年金控除額や給与所得控除の見直しも与党と調整を進めている。
これに対し、自民税調は非公式会合で給与所得控除額を年収に関係なく一律に引き下げ、基礎控除額を引き上げる案について検討に入った。給与所得控除は会社員らに必要経費を認め、税負担を軽くするもので、所得によって65万円から220万円としている。低所得のサラリーマンや企業に属さないフリーランスの負担軽減が狙いだ。
自民党内には富裕層が増税になることに対して慎重論もあるが、宮沢洋一自民税調会長は日本記者クラブで会見し、富裕層の給与所得控除額を縮小する考えを示した。