「自動運転技術」や「先進運転支援システム(ADAS)」など、自動車運転の安全性や走行性の向上に活用される先端技術開発に努める「AutoTech(オートテック)」スタートアップへの投資が、2017年1〜11月にかけて39.9億ドルに達した。

CBインサイツの調査から明らかになったもので、2016年の2.7倍、2012年の9倍の成長率だ。年内には45.7億ドルを超えると予想されている。

2017年の大きな取引例をいくつか挙げてみると、日本のソフトバンクも出資した自動車向けIoT製品のナウト (Nauto)、AVアプリ向けの技術を提供するカナダのレダーテック(LeddarTech )、運航自動化ソフトウェア・スタートアップ、ペロトン・テクノロジー(Peloton Technology )はボルボや三井物産から投資を受けている。

AutoTechへの投資を加速させているのは、大手自動車メーカーが激戦を繰り広げている次世代自動車の開発だ。

AutoTech投資の新記録をだした2017年第3四半期

大手IT企業や自動車メーカーがこぞって電気自動車(EV)や自動運転車(AV)の開発に乗りだした近年、投資市場で最も注目を集めている分野の一つである。

AutoTech(CarTechとも呼ばれる)への投資が本格的に活発化したのは、2017年第1四半期。過去数年にわたり最大5億ドル台だった記録を、一気に10.25億ドルに更新した。第2四半期には5.83億ドルまで落ち込むものの、第3四半期は10.28億ドルと新記録を打ち立て、取引件数も前年同期の約2倍となる50件に増えた。

データが集計された11月中旬の時点で見るかぎり、第4四半期の取引件数は17件など、若干勢いは落ちている。しかし2度にわたる10億ドル規模の大取引、複数の1億ドル規模の取引などが追い風となり、2017年は過去に類を見ないAutoTechの当たり年となりそうだ。

最大の関心はAV技術へ 投資額はそのほかのAutoTechの3倍

2017年に投じられた39.9億ドルのうち、76%が自動運転車関連(AV)技術の開発に流れているという。AVとそのほかのAutoTechへの投資を比較してみると、AV技術に対する加熱具合がよく分かる。AVへの投資30.3億ドルに対し、そのほかのAutoTech投資は約3分の1(9.6億ドル)にとどまる。

過去にはこれほどの差は開いておらず、AVへの投資とそのほかのAutoTechへの投資の比率は2:1程度だった。

2017年のAVへの投資77件に対し、そのほかのAutoTechへの投資は72件など、取引件数の比率は過去数年さほど変わらない。つまりAV への投資額が年々拡大しているということだ。

ソフトバンクも出資するナウトなど、スタートアップが巨額の資金を調達

日本のソフトバンクも出資した自動車向けIoT製品のナウト (Nauto)が、7月のシリーズB資金調達ラウンドで1.59億ドルを調達。2015年にカリフォルニアで設立されて以来、AI技術やスマート・クラウドシステムを取り入れた次世代自動車デバイスを開発している。今年1月には東京に も支社を開設した。昨年10月のシリーズA調達ラウンドでは、トヨタ、BMW、ゼネラルモーターズなど大手自動車メーカーも出資した。

AVアプリケーション向けのライダー(LiDAR/人間の視覚の役割を果たす)技術を提供するカナダのレダーテック(LeddarTech )は7月、シリーズC でドイツの光半導体大手オスラムなどから1億ドルを調達した。

主にLED(発光ダイオード/電流によって発光する素子)発光システムをベースとするセンサーソリューションを開発している。2007年に設立され、過去に4度の資金調達ラウンドを行っている。

運航自動化ソフトウェア・スタートアップ、ペロトン・テクノロジー(Peloton Technology )は5月、シリーズB でボルボや三井物産、車両管理サービスのオムニトラックス(Omnitracs)などから6000万ドルを獲得。

シリコンバレーの起業家集団が、2011年にカリフォルニア州マウンテンビューで設立した。複数のトラックを列隊走行させることで、燃費削減や安全性の向上につなげる技術を提供している。

2013年4月のシードラウンドから始まり、現在までに7度の資金調達ラウンドに成功している。

AutoTechにかぎらず、自動車関連スタートアップのIPOも相次いだ。10月に上場した中古車マーケットプレース「カーグルス(CarGurus)」は940万株を1株当たり16ドルで売りだし、総額1.5億ドルを獲得(ロイターより )。

中国の自動車ローンのYixin(易?資本)は11月に上場し、およそ9億ドルを調達。親会社である自動車情報サービス大手、Bitauto Holdings(易車)には、テンセント(騰訊)も出資している。

投資家の関心はシードステージよりもシリーズA、Bなどへ

関心を集めている投資ラウンドにも変化が見られる。AutoTechが成長するにつれ、初期段階の投資よりも中期〜後期段階での投資が増えてきている。

2012年にはシード/エンジェル・ステージが過半数(52%)、シリーズA(29%)、シリーズEプラス(14%)、そのほか(5%)という割合で、シリーズBとCの影も形もなかった。ところが2013年にはシリーズBが20%、シリーズCが11%で参入し、投資ステージが分散化する。 それ以降もシード/エンジェルステージは最大のシェアを占めてきたものの、2016年は38%まで縮小。年内の予想は31%まで落ち込んでいる。代わってそのほかのステージが24%まで飛躍的に伸びた。

シリーズAは安定したシェアを保っており、シリーズBも人気が盛り返している。CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)や、それを支援するCVC投資家の増加が反映された結果ともいえるだろう。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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