11月28日、一般財団法人日本不動産研究所は第9回「国際不動産価格賃料指数」(2017年10月現在)と題した調査を行い、その結果を公表した。オフィスでは香港の価格水準が突出しており、マンションではロンドンの価格水準が高いという結果となっている。また、半年前の前回調査からの上昇率では、オフィス、マンション共に香港がトップとなったようだ。
オフィス価格水準と変動率 香港がトップ
調査は国際的な主要都市の不動産市場動向を分析する為、同研究所の不動産鑑定士が評価した価格を指数化したものである。対象都市は東京、大阪、ソウル、北京、香港、台北、シンガポール、クアラルンプール、バンコク、ジャカルタ、ホーチミン、ニューヨーク、ロンドンの14都市となる。
まずはオフィス価格についてである。各都市のオフィス価格水準を高い順に並べた結果は次のようになった。オフィス価格の水準は東京の丸の内・大手町地区の最上位オフィスの価格を100.0とし、各都市の価格水準を指数化したものである。また、変動率については2017年4月時点の前回調査からの変動率となっている。
順位 都市名/価格水準(変動率)
1位 香港/179.4(6.5%)
2位 東京/100.0(3.1%)
3位 ロンドン/64.6(-0.9%)
4位 台北/57.7(-0.1%)
5位 上海/48.5(0.1%)
6位 ニューヨーク/46.8(0.1%)
7位 大阪/44.9(4.8%)
8位 シンガポール/39.8(0.9%)
9位 北京/35.4(1.6%)
10位 ソウル/29.6(1.6%)
11位 ジャカルタ/13.2(0.9%)
12位 ホーチミン/12.6(3.4%)
13位 クアラルンプール/8.0(-0.5%)
14位 バンコク/7.7(3.5%)
オフィス価格の水準が最も高い都市は香港となった。2位の東京の水準を大きく引き離している。香港は中国本土からの投資需要が大きい反面、供給は限定的である。そうしたタイトな需給環境がオフィス価格水準に現れていると見られる。香港は変動率でもトップとなっており、足下でも需給要因での価格上昇は続いているようだ。
2位には東京がランクインしている。日銀の金融緩和等を背景に利回りの低下が続いており、変動率は3.1%と高い数字を記録している。また、大阪は価格水準の差は東京と大きく開いているが、変動率では香港に次ぐ2位にランクインしている。金融緩和の影響が東京から国内へ広がっているようだ。
3位のロンドンは変動率が-0.9%とマイナス圏となっている。政治的な混乱が続いている影響でオフィス価格には下落傾向が見られる。ただ、前回調査時の変動率は-1.6%であり、マイナス幅は縮小している。英ポンド安を背景にアジア勢等の外国投資家による投資が堅調であり、市場は底をつく可能性もある。
マンション価格水準 ロンドンは東京の2倍以上
次にマンション価格について、各都市のマンション価格水準を高い順に並べた結果は次のようになった。マンション価格の水準は東京の港区元麻布の高級マンション価格を100.0とし、各都市の価格水準を指数化したものである。また、変動率についてはオフィス価格と同様、2017年4月時点の前回調査からの変動率となっている。
順位 都市名/価格水準(変動率)
1位 ロンドン/220.6(-1.6%)
2位 香港/187.1(5.2%)
3位 上海/132.6(1.6%)
4位 台北/122.3(-1.1%)
5位 ニューヨーク/119.7(-1.2%)
6位 シンガポール/110.2(0.1%)
7位 北京/105.1(0.6%)
8位 東京/100.0(0.6%)
9位 ソウル/63.1(3.1%)
10位 大阪/53.3(0.9%)
11位 バンコク/24.2(1.5%)
11位 クアラルンプール/24.2(-0.9%)
13位 ジャカルタ/21.3(1.1%)
14位 ホーチミン/10.0(1.8%)
1位はロンドンである。ロンドンのマンション価格水準は東京の2倍以上となっている。ロンドンは海外投資家等による不動産投資により住宅価格が押し上げられてきた。ただ、変動率は-1.6%と14都市中最低となっており、マンション価格の上昇は頭打ちとなった可能性もある。
2位は香港となった。こちらもオフィス同様、需給要因で高い水準になっていると見られる。香港はオフィス価格だけでなく、マンション価格でも変動率で1位となっており、不動産全体の値上がりが続いているようだ。
変動率では半年前の前回調査で北京が20.0%、上海が8.8%と高い数字を記録していたが、今回調査ではそれぞれ0.6%、1.6%と変動幅は大きく減少している。10月の中国共産党大会を前にした当局の厳しい住宅価格抑制策が影響したようだ。
日本は東京が8位、大阪が10位となっている。変動率も中位にランクインしており、オフィスと比較すると変動も緩やかとなっている。金融緩和による価格上昇圧力がある一方、供給物件も増加している事が要因にあるようだ。(ZUU online編集部)