中国は社会主義国であり、たくさんの規制があって窮屈なイメージがあるかもしれない。しかし、実際はその反対である。末端で起きている社会に大きな影響を与えないような出来事は、重大な法律違反がない限り、いい意味でも、悪い意味でも、ほぼ何をやっても自由である。だから、ニュービジネスが次から次へと発生する。規則から多少逸脱していたとしても、注意されない限り事業を止めたりしない。

当局も問題が発生したらその都度それを正していけばよいといったスタンスである。インターネット少額貸出に対する監督管理強化も、こうした中国式の監督管理メカニズムが垣間見れる出来事の一つである。

国家インターネット金融安全技術専門家委員会によれば、11月19日現在、現金貸出を行うプラットフォームは2693社、全体の利用者は1000万人近くに及び、一人当たり平均借入金額は1400元(2万3800円相当、1元=17円)である。これに対して、全国各省が既に認可したインターネット少額貸出免許は249社に過ぎない。潜りの業者が非常に多いことがわかる。当局はこうした業者の処分を開始したのである。

中国人民銀行、銀行業監督管理員会(銀監会)は11月23日午前、インターネット少額貸出業務を整理整頓するための業務について話し合うための会議を開催した。認可を受けた少額貸出会社が貸出業務を行う17の省・市の金融担当者が参加し、域内の少額貸出機関の認可状況、監督管理の方法などの報告が行われた。

特に、インターネット少額貸出テスト地域に指定されている省・市については追加の会議が行われた。会議では、少額貸出金利について36%を上限とするよう厳しく要求することになった。

ちなみに、この会議に先駆け、「即座にインターネット少額貸出会社の業務を一時停止することに関する通知」が発布されている。現在申請中の業者を除き、無許可業者は事業サービスの停止を余儀なくされている。

10月に開催された共産党大会では長期の経済政策が示されたが、高成長を目指すよりも、不公正、不公平、不平等を正すことに重点が当てられている。摘発は時間の問題であったといえよう。また、当局は金融レバレッジの縮小を進めている。毎年この時期から年末にかけて、年間の貸出目標枠を使い切る銀行が多い。

更に12月末に向けて銀行は検査に備えなければならない。積極的に貸出業務を拡大しにくい状態にある。今回インターネット少額貸出会社に対する監督管理の強化はきっかけに過ぎない。いろいろな状況が重なって、金利が上昇している。

中国10年国債の利回りをみると、9月下旬には3.6%程度であったがその後上昇を続け、11月23日には一時4%を上回る水準まで上げている。また、銀行間取引金利について、短い期間はそうでもないが、3か月、6か月、9カ月、1年物については、11月に入り、急激に上昇している。金利が上昇するから株式市場に動揺が走る。

上海総合指数の下落、金利上昇、景気の鈍化などが悪材料

中国経済
(画像=PIXTA)

上海総合指数の動きを振り返ってみると、11月13日に終値ベースで2015年12月31日以来の高値を記録したが、その後売られ、20日にはいったん本土投資家が短期的な相場の強弱を判断する際によく使う60日移動平均線を割り込んだ。

ただ、この時は場中で大きく切り返し、その後3連騰と自律反発したのだが13日の終値水準を超えることはできず、23日には2.29%下落。一日挟んで27日には0.94%下落した。28日は0.34%上昇したものの、20日の場中安値を下回っており、テクニカルには下げ相場入りの可能性が出てきた。

金利上昇は需給面から株式市場に悪影響を与えるが、今回の場合、その根底に金融レバレッジの縮小、金融監督管理の強化といった要因がある。当局の厳しい姿勢は今後の金融市場に対する見通しを悪化させるという点で投資家心理に影響を与えるだろう。

ファンダメンタルズについては前回お伝えした通り。10月の状況をまとめると、設備投資はインフラ投資が息切れ、製造業投資は低迷、民間投資、不動産投資も鈍化している。小売りは予想ほど良くない。外需は予想以上に鈍化している。生産面では、発電量、自動車などはかろうじてプラスの伸びを確保したが、伸び率は鈍化 。

鋼材、非鉄金属、セメントはマイナスの伸びである。景気は予想以上に鈍化していることがはっきりとわかる 。上海総合指数は5月にダブルボトムを完成させ、その後長い上昇トレンドを形成してきたが、その前提には好景気、好決算がある。それに懸念が乗じるとなると、どうしても投資家の自信は揺らいでしまう。

そのほか、A株の需給構造特有の問題もある。11月24日の中国証券報によれば、今年12月から売買制限株の売買解禁となる銘柄が増えるようだ。12月の規模は3804億5600万元で、2018年1月は4626億4000万元に達し、これは2016年以来最大の規模であると報じている。関連する中小型株を中心に売り圧力がかかり今後、それが地合いを悪くしそうである。

国家隊など長期投資家が無理に買ってくることはないかも

上海総合指数は今年6月以降上昇トレンドを形成してきたが、国家の意思を反映する組織である国家隊、長期投資を身上とする機関投資家、海外の機関投資家などが、押し目で積極的に買いを入れてきたで、時折、崩れそうになる相場を切り抜けてこれた。

しかし、今回は国家の意思で金融市場の監督管理を強化しているといった状況なので、国家隊をはじめとした長期投資家は無理に買ってくることはないかもしれない。

今年唯一調整が起きたのは4月上旬から5月上旬にかけてである。この時は4月1日に河北雄安新区設立が決まったことで、関連銘柄が連日ストップ高となった。これに対して、証券監督管理委員会は投機的取引を止めさせるために売買停止規定を変更したり、個別企業ごとに株価急騰に繋がるようなファンダメンタルズの変化は存在しない趣旨の公告を出させたりした。証券会社に対する指導も強化した。こうした監督管理の強化が株価下落に繋がった。

今回も当局の監督管理がきっかけで株安となっている。気になるところである。

田代尚機(たしろ・なおき)
TS・チャイナ・リサーチ 代表取締役
大和総研、内藤証券などを経て独立。2008年6月より現職。1994年から2003年にかけて大和総研代表として北京に駐在。以後、現地を知る数少ない中国株アナリスト、中国経済エコノミストとして第一線で活躍。投資助言、有料レポート配信、証券会社、情報配信会社への情報提供などを行う。社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。東京工業大学大学院理工学専攻修了。人民元投資入門(2013年、日経BP)、中国株「黄金の10年」(共著、2010年、小学館)など著書多数。One Tap BUY にアメリカ株情報を提供中。HP:http://china-research.co.jp/

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