2020年の東京五輪開催に向け、日本を訪問する外国人観光客が増加している。日本政府観光局(JNTO)によると、2017年10月の訪日外国人数は前年同月比 21.5%増の259万5,000人。
なかでも、最近注目されているのが経済成長著しく、人口も多い東南アジアなど新興国からの観光客だ。新興国の中には、マレーシアやインドネシアなど、イスラム教徒(ムスリム)が人口の多数を占める国もあり、イスラム教の戒律に則った「おもてなし」が求められている。
ミレニアル世代のムスリム旅行、1,000億ドルのマーケットに
人気の旅行先トップ3は、マレーシア、インドネシア、日本。非ムスリムマジョリティ国の中では、日本はトップの人気となっているのだ。同調査報告書では、2025年までにミレニアル世代のムスリムによる旅行消費は1,000億米ドル(約11兆3,713億円)に規模に達すると予測している。このマーケットを逃す手はないだろう。
「ハラル」とは何か
ムスリムの観光客誘致を進める上で覚えておかなくてはいけないのが、「ハラル(ハラール)」への対応だ。先の旅行調査でも、ハラル対応の食事の提供を「とても重要」または「重要」と考える人は約7割にも上っている。
イスラム教には「コーラン」という聖典があり、ムスリムが守るべき戒律やさまざまな教えが記されている。その中で、ムスリムが口にすべきではない食品・飲料についての記述がいくつかある。中でも、代表的な禁忌とされているのが「豚由来の製品」と「アルコール」だ。
人口の6割がムスリムのマレーシアでは先ごろ、ハラル対応を条件に日本産牛肉(和牛)の輸入を再開した。現地では、日本食ブームや所得の向上で和牛への認知は高まっており、本場の和牛の登場が待たれていた。
「和牛は豚やアルコールを含まないので、ハラルに抵触しないのでは?」と思う向きもあるかもしれないが、実はイスラム教では牛や鶏など食肉のさばき方にも決まりがあり、正しい手順で食肉処理をされた肉でなければ、「ハラル」とは認められない。
豚については、とくに禁忌という意識が強い傾向にあり、豚肉そのものだけでなく、ラードや豚のエキスを使っている製品(例えばゼラチンなど)も禁じられている。例えば、ポークカレーをメインで出している店があったとして、具材の豚肉を抜けばムスリムに出せるかというとそうではなく、そのカレールー自体も禁じられ、厳密に言えば同じ調理場で調理したものもムスリムには提供できず、食器の使い回しや共有もできない。
ただし、このあたりのさじ加減については、信仰に即したものゆえに各個人によって許容度合いが異なるのが実情だ。認定機関による「ハラル認証」を取得するのでなければ、メニューに豚やアルコールの使用について表示したり、入り口に「豚肉不使用」というサインを掲げたりといった対応でも、最初の段階としてはひとまず良いだろう。
ハラルビジネス、長寿企業も参入
ムスリム旅行マーケットの拡大に伴い、台湾や韓国といった国々でもハラル対応の強化と観光誘致に乗り出している。特に、韓国はK-popや韓流ドラマの影響で、東南アジアを中心に旅行先として人気が高まっている。
日本でも、ムスリム観光客からの需要を見込んで、さまざまな商品が出始めている。例えば、しょうゆ、みそメーカーの伊賀越(三重県伊賀市)は、アルコールを使わない「しょうゆ」や「すき焼きのタレ」のほか、みその製造過程で使われる米こうじと米を原料にした「ハラル甘酒」を健康に良い飲み物として販売している。
また、きびだんごの元祖として知られる安政3年(西暦1856年)創業の廣榮堂(岡山市)も、2014年にきびだんごなど8商品に対してハラル認証を取得した。長寿企業も参入を試みるハラルビジネス。年々拡大するインバウンド観光客向けマーケットには、まだまだ商機が潜んでいそうだ。(提供:百計オンライン)
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