TBS系列の日曜劇場で放映中の『陸王』の視聴率が盛り上がってきた。10日の第8話『3億円で買収!? 陸王で親子駅伝』の平均視聴率は17.5%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)と放送開始以来の最高を記録している。一方、株式市場では総合スポーツ用品メーカーのミズノ <8022> が9年ぶりの高値を更新するなど人気化する場面も見られたが、同社はドラマ『陸王』とも深い関わりがあるのをご存知だろうか。
日本の匠にフォーカスした『陸王』
日曜劇場は歴史のあるドラマ枠で、かつては『東芝日曜劇場』として知られていた。過去の高視聴率番組では、池井戸潤原作の『半沢直樹』や『下町ロケット』、木村拓哉主演の『GOOD LUCK!!』『 華麗なる一族』、大沢たかおと綾瀬はるかが共演した『JIN-仁-』など話題を呼んだドラマを数多く輩出している。
現在放映中の『陸王』は10月15日にスタート。埼玉県行田市の足袋屋「こはぜ屋」が、足袋需要の減少から倒産の危機に直面し、新規事業として社運を賭けて足袋をベースにしたランニングシューズ『陸王』の開発に取り組む。しかし、『陸王』プロジェクトには数々の苦難が待ち構えており、それらを乗り越えながら「こはぜ屋」を再生していくストーリーだ。
初回の視聴率は14.7%。その後もジリジリと評判を上げ、12月10日(8話)には17.5%を記録した。最終話に向けてさらに盛り上がることは必至だろう。スポーツ好きの筆者の周りでも話題が尽きない。
竹内涼真効果?「アトランティス『RⅡ』モデル」が完売
ドラマ『陸王』はフィクションであり、実在の企業をモデルにしたものではないとされている。しかし、その一方でインターネット上では埼玉県行田市に存在する足袋製造会社がモデルとする説も広がっている。この会社は未上場であるが、アマゾンや楽天で「ランニング足袋」を販売しているのだ。そのデザインはまさに足袋とランニングシューズの融合と呼べる作品である。筆者も購入したかったのであるが現在売り切れの状態が続いている。
ちなみに、ドラマ『陸王』でランニングシューズやウェアを監修・制作協力しているのがミズノである。同社でオリンピック選手をはじめとするトップアスリートのシューズを手掛けるクラフトマン(熟練工)が普通のシューズの1.5倍の時間をかけて創り上げたそうだ。筆者はそのシューズの画像をミズノのWebサイトで見たのであるが、文字通り足袋の形をしたランニングシューズの美しさに時間を忘れて見入ってしまった。ぜひ販売して欲しいものである。
一方、ドラマでは「こはぜ屋」の陸王プロジェクトをつぶそうとする大手シューズメーカー「アトランティス」が登場する。アトランティスが選手用に提供しているシューズは『RⅡ』というモデルである。ピンク色が印象的なシューズで、ドラマでは陸上選手を演じる竹内涼真や佐野岳が着用している。実はこのモデルもミズノが制作しているのだ。
TBS『陸王』グッズのサイトで『RⅡ』が売り出されたのをご存知だろうか。ドラマと同じピンクにアトランティスの『A』と『RⅡ』のマークを刺繍加工したモデルで、受注生産で50足限定、価格は6万円であっという間に完売したという。『陸王』効果か、それとも竹内涼真効果と呼ぶべきか。いずれにしても恐るべき効果である。
株式投資は「未来の夢を買う」側面もある
ミズノの業績を見てみよう。11月7日、同社は2018年3月期上期(4〜9月)の上方修正を発表した。本業の利益を示す営業利益を期初予想の20億円から38億円(前年同期比7.6倍)に大幅上方修正したのである。円高による原価低減メリットに加えて、米国事業が好調だったためだ。翌11月8日にミズノの株価は2008年5月以来の高値を付けている。
もちろん、ドラマ『陸王』がスタートしたのは10月15日なので、ミズノの2018年3月期上期(4〜9月)の業績には反映されていない。ただ、『陸王』人気の盛り上がりにタイミングを合わせるように株価も上昇していたので、筆者の周りでは「陸王効果」「竹内涼真効果」との声も聞かれた。
実際、株式投資には「未来の夢を買う」ような側面もある。英国車のアストンマーチンがジェームズ・ボンドの映画に登場して世界的に大ヒットしたように、エンターテインメントが「ヒット商品」の起爆剤となることは決して珍しいことではない。もし、読者のみなさんが映画やドラマなどで、心の底から欲しいと思える商品に出会ったら、その商品を提供している企業の株価を調べてみてはいかがだろうか。(ZUU online 編集部)