著名エコノミストのヤン・ハチウス氏率いる米ゴールドマン・サックスのアナリストのチームは近年、毎年暮れに他社よりも楽観的な経済見通しを発表することで知られる。あまりにバラ色であるため、しばしば予測を外し、下方修正を迫られることになる。
それでも楽観主義を貫き、2018年も「世界経済は、これ以上よくならないほどの成長が期待できる」と予想している。その根拠は何なのか。同社の原油価格予想や世界経済全体の見通し、米経済予測を通して、「来年こそは違う」状況が生まれるのか、占ってみよう。
まだら模様がない全世界的な成長
まず、コモディティについて、ゴールドマン・サックスが11月中旬に発表した2018年の予測では、北海ブレント1バレル当たり58ドルとしていたが、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどOPEC非加盟の産油国が減産延長で合意し、世界的な経済拡大によって需給が世界的にタイトになるとの見方から、12月5日に1バレル当たり価格を62ドルに引き上げた。
また、「先物の乗り換えによるプラスのロールイールド(投資家が先物限月の逆ザヤを利用して、先物の建玉を割高な期近から割安な期先に乗り換えて利益を出すこと)で、来年は原油で12%のリターンを確保できる」として、原油に関して一段と強気の見方を示している。
一方、世界経済全体については、「2010年以来初めて、世界経済の成長はほとんどのケースにおいてアナリストの予測平均を上回る」として、2008年に起こった米リーマンブラザーズ破綻後の世界的な景気後退に続いた回復に匹敵する、力強い成長が見込めるとしている。
世界全体で国内総生産(GDP)は2017年の3.7%から2018年には4.0%と、加速するとの見方だ。ブルームバーグ通信がアナリストの集計で出したコンセンサスの数字では3.6%であり、ゴールドマン・サックスの予想は抜きん出ている。
同社の2018年の予想はまた、安定した経済成長が先進国や新興国でまだら模様になることなく、広く観測されるものになるとしていることが特筆される。熱くもなく冷たくもないそのような状況はまさに、「これ以上はよくならない」ゴルディロックス経済であり、理想の状態の継続である。
日本に関しては、内需主導の経済成長、支援的な財政・金融政策環境、利益成長の持続、需給環境の改善などの要因を追い風に、日本株がさらに上げると見ている。日本の来年の成長率は2017年の1.6%からやや下げた1.5%を見込んでいる。
その他、ユーロ圏は2017年の2.3%から2.2%と、日本と同様に0.1ポイント下げる。また、中国は2017年の6.8%から6.5%とやや減速するものの、インドは2017年の6.4%から8.0%へと加速すると見ている。
こうした各国の安定した成長の要因として、財政出動効果の出現、労働市場の引き締まり、賃金の上昇、インフレ率の上昇、生産性の回復、などがあげられている。古典的な成長要因が同時多発的に重なることで相乗効果が現れ、経済学の教科書に出てくるような堅調な成長が期待できると、ゴールドマン・サックスは見ている。