シャープ<6753>が12月7日、東証2部から東証1部に復帰した。債務超過で16年8月1日に東証2部に指定替えしてから、1年4ヶ月でのスピード復帰だ。外資傘下で経営破綻の危機から復活を遂げた事例は、過去には日産くらいで多くはない。東芝は債務超過で今年8月1日に東証2部に指定替えした。東芝の復活ストーリーも気になるところだ。
シャープは債務超過の2部指定替えで株価は一時87円
シャープはかつて、「液晶のシャープ」「世界の亀山モデル」のキャッチフレーズで世界の液晶パネルのリーディングカンパニーだった。特にテレビ向けの大型パネルでは圧倒的なシェアだった。
液晶事業の好調で過去最高益を計上していた07年3月期から08年3月期にかけて、スマホ、タブレット向けの中小型液晶と太陽電池パネル向けに社運を賭けた大型の設備投資を行った。その直後にリーマンショックによる世界的な経済縮小に見舞われ、パネル需要が大幅に減少、競合メーカーの台頭もあり、市況下落で採算が悪化、在庫が急増し経営不振に陥った。
12年から13年3月期でトータル9214億円の赤字を計上、14年3月期はリストラ効果で一旦小幅の黒字に転じたが、15年3月期には再び2223億円の赤字となり、16度3月期次第では累積赤字で債務超過になる状況まで追い込まれた。 16年3月末には、16年3月期の赤字継続と累積債務で債務超過に転じる事が明らかになり、4月に台湾の鴻海精密工業傘下で再生する道を選んだ。
シャープの16年3月期は結局、最終利益が2559億円の赤字で債務超過となった。取引所のルールで債務超過企業は1部から2部に指定替えすることになっており、16年8月1日に東証2部へ移行した。
ITバブル時の1999年には2675円(10/1の株式併合換算調整後2万6750円)の過去最高値をつけた名門シャープの株価 は、東証2部指定替え直後の16年8月5日には87円(同870円)の安値まで売られることになった。
鴻海の支援で黒字転換、株価は8ヶ月で5.8倍
シャープを買収した鴻海精密工業は、台湾の電子機器受託生産(EMS)の大手。中国の生産拠点をベースに「FOXCONN」ブランドで、iPhoneなどの携帯端末、任天堂やソニーのゲームコンソール、デルやヒューレット・パッカードのPCなどのパーツのOEM供給やアセンブリーを担当しているグローバル企業だ。シャープとは、12年に業務提携でシャープの液晶子会社に出資している関係だった。
鴻海グループは、シャープの3888億円の第3者割当増資を受け、66%を保有する筆頭株主となった。
シャープは鴻海の出資により債務超過を解消し、傘下で本格的なリストラに着手した。不採算取引からの撤退、中小型の液晶パネルを中国市場へ深耕するなど本格的な構造改革を進めた。16年7〜9月期には四半期ベースで営業黒字に転じた。17年3月期は、248億円の最終赤字だったが、本業の利益を示す営業利益は624億円と3期ぶりに黒字転換した。会社予想では18年3月期 に690億円の最終黒字に転換する。
業績の回復が顕著になったことでシャープの株価は4月7日には504円(株式併合換算調整後5040円)の年初来高値を付けた。16年8月安値からは8ヶ月で5.8倍になった。 累損解消と黒字転換で、シャープは17年6月末に東証1部指定替えへの申請を行い、12月7日をもって東証1部に復帰した。
日産リバイバルはルノーとのアライアンスで
自動車業界には世界的な再編の歴史がある。かつて、いすゞ<7202>、スズキ<7269>、SUBARU<7270>は米GMと、三菱自動車<7211>は米クライスラーと、マツダ<7261>は米フォードと資本提携を結んだ。
もっともこれらの提携はそれほどの成功には至らず多くの提携は解消されている。唯一の大成功例といえるのがルノー・日産のアライアンスである。
日産はバブル崩壊後の高級車販売の急減とシェア低下で採算が悪化し経営不振に陥った。93年3月期から4期連続でトータル3974億円の最終赤字を計上した。97年3月期は一旦770億円の黒字となったが、98年から99年3月期と再び2期でトータル417億円の赤字を計上した。 有利子負債は2兆円を超えていた。その経営危機の日産を救ったのが仏ルノーだった。
99年3月にルノーと日産は資本提携を行い、日産はルノーの傘下で再生を目指すことになった。ルノーの副社長だったカルロス・ゴーンが新生日産のCEOとなり、「日産リバイバルプラン」として有名になった大胆な再建案で、工場閉鎖、人員削減、購買コスト削減のための取引先の見直しなどを進めた。00年3月期には6843億円という巨額のリストラ費用を含む赤字を計上したものの、その後の業績急回復で2兆円を超える有利子負債を4年で完済した。ルノーは今でも日産株の43%を保有する筆頭株主であり、ルノー・日産グループは世界4位の自動車グループとなっている。
東芝は東芝メモリをPEファンドへ売却
外資系による再生は、近年では再生を専門に手掛けるプライベート・エクイティ・ファンド(PE)などが主導することが多く、直接の資本提携・買収という事例は少ない。
バブル崩壊以降に破綻し再上場した大手企業では、あおぞら銀行<8304>(旧・日本債券信用銀行)、新生銀行<8303>(旧・日本長期信用銀行)、西武HD<9024>(旧・西武鉄道)などがあるが、PEファンド主導で一旦上場廃止後に、企業再生、再上場というパターンが多い。
東芝は17年3月期に債務超過に陥り、8月1日に東証2部に指定替えされた。半導体部門を分離独立した「東芝メモリ」の売却という自主再建の道を選び、上場廃止は回避した。
「東芝メモリ」は米ベインキャピタルを軸とした日米韓連合に2兆円で売却された。ベインキャピタルはPEファンドである。東芝も「東芝メモリ」に3550億円を再投資することで、東芝の持ち分法適用会社となる見込みである。韓国半導体大手SKハイニックスや米アップル、デルなどの米企業は、出資はするが議決権はない。
東芝は半導体生産で米サンディスク社と業務提携していることから、サンディスク親会社の米ウエスタンデジタルとの間で半導体部門の売却に関する係争を抱えていたが、和解して協業を強化することも発表した。やっと、前向きなリストラに着手する環境が整った。
日本市場では、ベインキャピタル以外にも米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、米カーライルなどのPEファンドが大型M&Aの鍵を握る。東芝だけでない。日立、パナソニックなどの大手企業がリストラで事業部門を売却するときはほとんどPEが介在する。M&Aが大型化した現在では、PEなしでの企業再生は難しい。東芝もスピード再生に成功し、東証1部に復帰する日が来るのだろうか?(ZUU online 編集部)