2017年も残す所あとわずかになりました。今年も「日本株投資戦略」をお読み頂きありがとうございました。2018年も投資家に有用な情報の提供を目指して頑張っていきたいと思います。

さて、「日本株投資戦略」では今後折に触れ、2018年に注目されそうな相場テーマからいくつかをピックアップしてご紹介していきたいと思います。今回は「M&A」というテーマで注目されそうなキャッシュリッチ企業をご紹介したいと思います。

なぜ「M&A」なのか?なぜ「キャッシュリッチ企業」に注目するのか?

12/15(金)に東洋経済新報社から「会社四季報」(2018年・新春号)が発売されました。SBI証券のお客様はログイン後画面の株式の個別銘柄のページで「四季報」の所をクリックすれば、「会社四季報」のデータを読むことができます。

2018年の相場テーマを探る方法は各種あると思いますが、「会社四季報」のキーワードから探るのもひとつの方法です。今回の「会社四季報」では「買収」ですとか、「M&A」、「TOB」といったキーワードが目立っているようです。「M&A」は合併・買収を意味し、「TOB」とは株式公開買い付けのことを意味しています。したがって、これらはひとつのテーマとみなして良さそうです。

ある会社が他の企業を買収することを発表すると、買収される側の企業の株価が上昇するケースが多いようです。したがって、他の企業に買収される企業はどこか、あらかじめ知ることができれば、利益を上げることができそうです。しかし現実にそうした情報を入手することは難しいですし、仮に入手しても「インサイダー情報」になってしまいそうです。

しかし、買収対象として魅力のある企業というものは存在します。その一類型が「キャッシュリッチ企業」ではないでしょうか。ある企業を買収した時に、その企業が有している資産が、将来の利益に結びつかない工場や建物ばっかりであった場合、投資家にとっては魅力に乏しい企業と言えるでしょう。しかし現金をたくさん持っている企業はやはり魅力的に映るでしょう。現金は企業が保有する資産の中でもっとも流動性が高いと考えられるためです。

また近年は、現金を多く持っているのにそれを有効活用していない企業の株式を買い、株主としてその企業に圧力をかける投資家も増えています。アクティビスト(物言う株主)と呼ばれる人たちです。彼らの主張を受け入れ、増配などの株主還元策を強化してくる企業も増えています。

すなわち、「キャッシュリッチ企業」は買収対象として魅力的な上、株式市場からの圧力によって増配等に踏み切る可能性もあり、個人投資家にとっても魅力的な存在であると考えられます。

「M&A」で注目されるキャッシュリッチ企業は?

それでは「M&A」というテーマで注目されそうなキャッシュリッチ企業の抽出を試みてみたいと思います。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)時価総額1,000億円未満の東証上場銘柄であること
(2)金融(実質的に金融がメインの銘柄も)、電力・ガス、その他以外の銘柄であること
(3)浮動株比率が50%を上回る銘柄であること
(4)PBR(株価純資産倍率)が1倍割れ(いわゆる「解散価値割れ」)銘柄であること
(5)純利益が前期・今期予想(Bloombergの集計した市場コンセンサス)ともに黒字であること
(6)予想ROE(Bloombergの集計した市場コンセンサス)が8%未満の銘柄であること

上記の全条件を満たす銘柄を「時価総額に占めるネットキャッシュの比率」が高い順番に表にしたものが表1です。ここでネットキャッシュとは現金およびその同等物から長短借入金を差し引いた金額です。

時価総額を一定規模以下とし、業種や浮動株比率で条件を入れた理由は、買収が比較的容易な銘柄を抽出したいと考えたからです。また、PBR1倍割れであるということは、キャッシュリッチ企業でありながら、株価が割安に放置されている可能性が大きいことを示しています。

ROE(株主資本純利益率)は純利益が純資産の何%占めているかを示しており、資本効率の良い企業はこの数字が大きくなります。したがって、この数字が大きい企業を投資対象とすることが本来は正しいのかもしれません。しかし、ROEの高い企業はその企業の経営をさらに改善する余地が少ない企業であるという側面と言えます。「キャッシュを多く保有しながら、資産をうまく活かしていない企業」こそがアクティビストの狙い目なのではないでしょうか。

なお、東洋エンジニアリングの数字が突出していますが、同社はプラント事業を行っており、同社が行う工事等は長期にわたるため、急激なコスト上昇等に備える必要があります。このように、事業の性格上、キャッシュ比率が高まってしまう企業もあり、注意が必要です、

日本株投資戦略,M&A
(画像=SBI証券)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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