中国・上海の民間調査機関・胡潤研究院は12月末、「17胡潤大中華独角獣指数」を発表した。ユニコーンとは、一本の角を持った西欧伝説上の生き物である。企業としての評価額が10憶ドル以上の非上場ベンチャー企業を指す。ユニコーンのようにまれで、巨額の利益をもたらす可能性のある企業という意を含んでいる。中国でも“独角獣企業”という場合、13年以降この基準を採用している。「捜狐」「今日頭条」など多くのネットメディアが分析記事を載せている。今後の新規上場など、最も注目を集める企業群である。ランキング上位企業を見ていくことにしよう。

この指数では、11月30日の段階で企業価値70憶人民元(1ドル=6.55人民元)以上と見積もられる1社を取り上げている。企業価値の総合計は3兆元にのぼる。以下その中から評価額500億元以上の12社を紹介する。

企業価値500憶元以上の4社、アリババ系が3社

中国経済,ユニコーン
(画像=Webサイトより)

餓了麽(Ele.me)、フードデリバリーサービス(上海)

フードデリバリーの草分けで、アリババ系となった。

09年4月 餓了麽サイト、正式にアップロードして開業。10月 1日当りデリバリー件数1000件を突破。
11年7月 北京支店、杭州支店開設。12月、1日あたりの扱い件数が1万件突破。
14年9月 従業員00人を突破、サービス網0都市を突破、加盟飲食店18万件を突破。
15年8月 F輪融資6憶3000万ドルを調達。12月、アリババが12憶5000万ドルを投資、27.7%の筆頭株主に。
16年4月 アリババ集団、アントフィナンシャルと戦略合作協議。アリババ9億ドル、アント3億5000万ドル投資。
17年1月 上海鉄路局と連合し高速鉄道内へ食事提供。10月、同業の「百度外売」を買収。

京東金融 金融全般(北京)

中国ネット通販2位の京東(JD)グループ。13年10月から独立運営を開始。サプライチェーンファイナンス、消費者金融、クラウドファンディング、資産管理、モバイル決済、保険、証券、農村金融、金融テクノロジー、の9大業務を担当する。アリババ集団における、アント・フィナンシャルの役割を担う。

15年4月 ネット金融「京東銭包」モバイル決済「京東支付」 6月、米国ビッグデータのZest Financeへ出資。
16年7月 クラウドファンディング「京東衆創」開始。12月、プライベートバンク業務「東家財富」開始。
17年2月 創業者・劉強東が京東金融は、証券業、信用調査業、銀行業の申請を行う、と戦略を発表。

テンセントとの提携強化を軸に、アリババ攻囲網構築を狙う。

菜鳥網絡 物流サービス(深セン)

13年5月、アリババ集団、銀泰集団(小売り)が中心となり、復星集団(投資)、富春集団(通信技術)、申通集団(物流)、園通集団(物流)、中通集団(物流)、韵達集団(物流)らと共同して作った、イノベーション型のネット技術開発企業。董事長(会長)には、馬雲その人が就いている。

同時に「菜鳥物流」という倉庫物流会社を設立し、こちらが実務を担っている。これまでに3000億元(5兆1900億日本円)もの巨額投資が行われ、全国10カ所以上にスマート物流を目指す基地を建設している。菜鳥の誕生は実質的にはアリババの物流大計画に沿ったものだ。今は中国のGDPに占める18%の物流費を先進国並みの12%に下げる先兵になろうとしている。

口碑 オンライン生活サービス(杭州)

アリババグループの生活情報サイトである。

04年6月 「口碑網」スタート。民衆の消費生活への要望に応えるコミュニケーションサイトとしてスタート。
06年10月 アリババが資本注入。アリババが最初に資本参加した外部企業となる。
08年7月 「口碑網」と「中国ヤフー」を統合。
09年9月 「口碑網」アリババの「淘宝網」に編入される。
15年6月 アリババとアント・フィナンシャルは、60憶元を投資し、共同で「口碑」を経営すると発表。生活サービスサイトへと回帰。

企業価値800億元以上の4社、メーカーが2社ランクイン

大疆(JDI)ドローン製造(深セン)

世界一のドローン製造メーカー。商業用ドローンの世界シェアは70%以上と圧倒的。

06年11月 創業。
13年 4プロペラ方式の「ファントム4」がヒット、13年の売上が前年比3倍以上の1億3000万ドルに。
14年 高級機「インスパイア1」発売。
15年 スウェーデンのカメラメーカー、ハッセルブラッドと戦略的提携。
16年 全世界での特許申請1500件を超える。
17年8月 米国連邦政府が大疆ドローンの調査結果を公表。データの安全に問題なし。

陸金所 ネット金融(上海)

中国平安保険集団旗下のインターネット財産管理サイト、投融資プラットフォーム。業務範囲として次の4つを提供している「金融イノベーション商品の開発、設計、取引、サービス」「金融アプリ開発、オンラインビジネス」「金融市場の調査研究、データ分析」「ネット投融資プラットフォーム、金融資産交易サービスプラットフォームの運営」--。単なるP2P企業ではないということである。

11年9月 上海陸家嘴国際金融資産交易市場有限公司として成立。
13年5月 “中国投資理財行業10大ブランド”に選ばれる。
16年1月 12憶1600万ドルの融資を調達。11月、香港市場への上場準備を開始。

寧徳時代 自動車電池 (福建省・寧徳)

中国をリードする、自動車用動力電池、蓄電システムの研究開発、製造メーカー。ドイツ、米国、中国国内を代表するメーカーと提携、電気自動車、ハイブリッド車への電池システムを供給。電気自動車の波に乗る。

11年 会社設立。
14年 北京、上海、ミュンヘンに子会社設立。研究センター設立。
15年 中国政府の「自動車畜電池業規範目録」第一位にランクされる。
16年 内外の特許申請件数1000件を突破。

今日頭条 文化娯楽(北京)

価値の高い独自情報を提供するニュースサイトの運営がメイン。今日頭条とは、Todays Headlineの意味である。中国ネット界で最も高速成長しているサービスの1つ。新華社、解放軍報など中央メディアから、地域メディア、業界メディアなど3700社と提携している。最も情報量豊富なニュースサイトだ。

12年3月 創業。
15年2月 新鋭科学技術リーダーに選出される。
17年3月 中国電信集団と戦略提携協議。11月、海外音楽サイトを10憶ドルで買収。

企業価値2000億元以上の4社、トップ3は高い知名度。

新美大 生活情報(北京)

15年8月 「大衆点評網」と「美団網」が戦略提携し「新美大」を共同で設立した。ただし各自のサイトは独立運営のままである。

両者とも国内O2O市場の重鎮であった。しかし絶えず資金の投入を必要とする商業モデルであり、単独での資金調達は難しくなっていた。

大衆点評は03年に設立された、中国で最初の独立した第三者消費批評サイトである。消費者向け生活情報サービスを発信している。14年2月テンセントは大衆点評の株式%を取得している。

一方の美団は10設立のネット共同購入サイトである。アリババの融資を受けていた。テンセントとアリババには、複雑な動きもあったが、大衆点評と美団との戦略提携、新美大の誕生は、結局この2巨頭の支持を背景としていた。

小米(シャオミ)スマホ製造(北京)

優秀なプログラマーだった雷軍が10年に創業。ハイスペックのアンドロイド機を低価格で発売し、瞬く間に大成功を収めた。ネット通販に絞った販売手法も斬新だった。創業1年の段階で、評価額は早くも10億ドルを超え、ユニコーン企業入りしている。わずか3年で世界的大企業となる。

15年にはスマホシェア中国1位、世界3位を達成した。しかし16年には中国市場5位に後退している。実店舗網を含めた総合販売力のあるOPPO、VIVO、ファーウエイの後塵を拝してしまった。17年は直営店を出店し、シェア回復に努めているが、第三四半期の国内シェアは4位である。ファーウエイのネット販売用ブランド「榮耀」が大きく伸びるなど、激戦が続いている。今後はまだ見通せない。

滴滴出行 ライドシェア(北京)

滴滴出行の評価額は3000億元を超えている。国内ライドシェア業界ではライバル不在である。17年12月、40億ドルの融資を発表。アブダビ政府100%出資の投資会社Mubadalaとソフトバンク <9984> を含むと伝えられる。

12年6月 会社設立、9月 配車アプリの運用を開始。
13年4月 テンセントが1500万ドルを融資。
14年1月 1億ドルの融資、そのうちテンセントは3000万ドル。
16年1月 15年の利用数14憶3000万回、顧客数2億5000万元に。5月、アップルより10憶ドルの融資。7月 滴滴、Uber中国を合併。

螞蟻金服(アント・フィナンシャル)ネット金融(杭州)

アント・フィナンシャルの評価額は4000億元を超える。

アリババのネット通販の決済用資金プール「支付宝」が登場したのは03年だった。14年、アント・フィナンシャルを設立し、支付宝を移管した。支付宝は、モバイル決済プラットフォームとして発展するとともに、余額宝(MMF)花唄(小口金融)、芝麻信用(信用調査、格付け)などさまざまな派生商品を生んでいる。ネットバンク「網商銀行」の設立にも関わっている。アリババ集団の行う投融資の司令塔でもあり、その注目度、影響度は極めて高い。

「野蛮な成長」を黙認

これらの12社に共通することは、みな驚くほど社歴が若いことだ。10年前には影も形もなかった企業ばかりである。アリババ系が4社とやたら目立つが、そのアリババにしても年前には存在していない。

メーカーの3社を除けば、みなスマホというハードウエアの進化に乗って、新しいビジネスの地平を切り開いていった印象が強い。そして今やこれほどの企業価値を持ち、大きな付加価値を生産しているのである。これは認めなければならない。

歴史のある大企業の不祥事ばかり伝えられ、新しい企業の登場しない日本とは、大きな違いである。中国人は、法や規則など何とも思っていない。当局も「野蛮な成長期」を黙認している。業界が成長し、一定の形になってから規制に乗り出すスタンスだ。日本もこのバイタリティは見習うべきだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

【お詫びと訂正】 滴滴出行の表記に誤りがありましたので修正いたしました。