目次
はじめに
ユニコーンと呼ばれる企業があることをご存知だろうか。企業としての評価額が10億ドル以上の非上場ベンチャー企業のことをそう呼ぶ。
ユニコーンは額に1本の角を持つ伝説上の生き物。ユニコーンのように出合うことがまれで、巨額の利益という幸運をもたらす可能性があることから、その名があるという。
もともとは、米国で使われ始めた言葉だが、中国でも有力ベンチャー企業が次々と誕生する中、こうした企業を「独角獣企業」と呼ぶようになった。中国にはどのようなユニコーン企業があり、どのような戦略で成長を果たしたのか、中国のベンチャー企業事情を紹介しよう。
※2018年1月配信記事を再編集したものです。
中国ユニコーン企業 断トツはアント・フィナンシャル
中国・上海の民間調査機関・胡潤研究院は2017年12月末、「17胡潤大中華独角獣指数」を発表した。この指数では、11月30日の段階で企業価値70億元(1ドル=6.55元)以上と見積もられる企業を取り上げている。いずれも今後の新規上場などが予想され、市場で最も注目を集める企業群である。
「捜狐」「今日頭条」など多くのネットメディアが分析記事を載せているので、そうした分析も交えながら企業価値500億元以上のランキング上位12社を見ていくことにしよう。
企業価値500億元以上の4社、アリババ系が3社
まずは、企業価値500億元以上、800億元以下の企業から。4社のうち3社をアリババ系の企業で占めている。
餓了麽(ウーラマ)、フードデリバリーサービス(上海)
フードデリバリーの草分けで、アリババ系となった。
09年4月 餓了麽サイト、正式にアップロードして開業。10月 1日当りデリバリー件数1000件を突破。
11年7月 北京支店、杭州支店開設。12月、1日あたりの扱い件数が1万件突破。
15年8月 F輪融資6億3000万ドルを調達。12月、アリババが12億5000万ドルを投資、27.7%の筆頭株主に。
16年4月 アリババグループ、アントフィナンシャルと戦略合作協議。アリババ9億ドル、アント3億5000万ドル投資。
17年1月 上海鉄路局と連合し高速鉄道内へ食事提供。10月、同業の「百度外売」を買収。
京東金融 金融全般(北京)
中国ネット通販2位の京東(JD)グループ。13年10月から独立運営を開始。サプライチェーンファイナンス、消費者金融、クラウドファンディング、資産管理、モバイル決済、保険、証券、農村金融、金融テクノロジー、の9大業務を担当する。アリババグループにおける、アント・フィナンシャルと同じ役割を担う。
15年4月 ネット金融「京東銭包」モバイル決済「京東支付」 6月、米国ビッグデータのZest Financeへ出資。
16年7月 クラウドファンディング「京東衆創」開始。12月、プライベートバンク業務「東家財富」開始。
17年2月 創業者・劉強東が「京東金融は、証券業、信用調査業、銀行業の申請を行う」と戦略を発表。
テンセントとの提携強化を軸に、アリババ包囲網構築を狙う。
菜鳥網絡 物流サービス(深セン)
13年5月、アリババグループ、銀泰集団(小売り)が中心となり、復星集団(投資)、富春集団(通信技術)、申通集団(物流)、園通集団(物流)、中通集団(物流)、韵達集団(物流)らが共同して設立したイノベーション型のネット技術開発企業。董事長(会長)には、アリババ創業者の馬雲が就いている。
同時に「菜鳥物流」という倉庫物流会社を設立し、こちらが実務を担っている。これまでに3000億元(5兆1900億円)もの巨額投資が行われ、全国10カ所以上にスマート物流を目指す基地を建設している。菜鳥の誕生は実質的にはアリババの物流大計画に沿ったものだ。今は中国のGDPに占める18%の物流費を先進国並みの12%に下げる先兵になろうとしている。
口碑(コウベイ) オンライン生活サービス(杭州)
アリババグループの生活情報サイトである。
04年6月 「口碑網」スタート。民衆の消費生活への要望に応えるコミュニケーションサイトとしてスタート。
06年10月 アリババが資本注入。アリババが最初に資本参加した外部企業となる。
08年7月 「口碑網」と「中国ヤフー」を統合。
09年9月 「口碑網」アリババの「淘宝網」に編入される。
15年6月 アリババとアント・フィナンシャルは、60億元を投資し、共同で「口碑」を経営すると発表。生活サービスサイトへと回帰。