自動車メーカーのEV(電気自動車)戦略が今後本格化する中で、カギを握る要素の一つが軽量化だ。重い電池を積むEVにとって、車体重量の軽減は走行距離を延ばすために欠かせない。素材や機械をはじめとする関連銘柄の、株価浮上の手掛かりとなりそうだ。(市場動向取材班)
EVの性能を決める電池の技術開発が各方面で加速する一方、軽量化の取り組みも進んでいる。電力量当たりの走る距離を引き延ばすため、車のボディーに鋼板よりも比重の小さいアルミニウムや樹脂が採用され、さらには軽くて丈夫な炭素繊維やCNF(セルロースナノファイバー)といった次世代素材の活用も視野に入る。
ガソリン車の燃費向上をめぐっては、高強度で成形力に優れた「高張力鋼板(ハイテン材)」と呼ばれる合金が重宝されてきた。ボディー重量に占めるハイテン材の割合は、3割前後にとどまっていた1990年代に対し、足元では50%を上回る。EV時代の到来により、今後は非鉄素材が積極的に投入されることになりそうだ。
児玉化やアーレスティに注目
有力な材料の一つが樹脂。2000年代に入り、バンパーやバックドアにガラス繊維で強化した樹脂が使われるケースが増え始めた。樹脂の比重は鋼板の7.9に対し1.0前後と圧倒的に小さい。このため、車の軽量化に大きく寄与している。
20日に新規上場を果たしたばかりの自動車部品の森六ホールディングス(4249、化学)は、大型樹脂部品の製造ノウハウや加飾技術を強みにニーズをとらえている。株価は初値の2975円から、27日には一時3450円まで上昇。軽量化という投資テーマへの市場の関心の高さがうかがえる。
児玉化学工業(4222・(2))は、独自の工法で開発した、金属並みの強度を持つプラスチック製品が大化けするかもしれない。金属を代替する後部座席構造材として、トヨタ自動車(7203)のレクサスに採用された。これを足掛かりに、30年をメドに販売台数の半分を電動車にするトヨタの戦略に深く食い込んでいくことが期待される。
アルミニウムでは、生産面のネックで今3月期の業績予想を下方修正し、株価も大きく調整したダイカスト大手のアーレスティ(5852)が仕込み場。軽量化需要の高まりを背景に、中・長期的な成長期待は揺るがない。PBR(株価純資産倍率)0.3倍台の割安水準は魅力的だ。
積水化成品工業(4228)は高機能性発泡体をコア材とした、軽量・高強度の炭素繊維強化プラスチックス(CFPR)複合発泡成形体を開発し、自動車向けなどで実用化を目指す。また、星光PMC(4963)などCNFの関連銘柄も、このテーマの延長線上にいる。
穴株は装置産業。素材の成形や結合に使うマシーンを手掛ける企業にも大きな需要が発生する可能性がある。産業機械商社のリックス(7525)は、「塑性加工」と呼ばれる金属の特性を利用し、効率的に異種材料を接合する機械を展開。1月17日に始まる展示会(クルマの軽量化技術展)にも出展し、顧客層の拡充を図る。
有力小型株の北川精機(6327・JQ)は、炭素繊維複合材の成型用プレス装置に注目。主力はプリント基板向けだが、「軽量化ニーズを取り込み、自動車市場を開拓する」(会社側)。目下、顧客を招いて装置のテストを実施中。同社も展示会に参加するため、株高のきっかけとなりそうだ。(12月28日株式新聞掲載記事)
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