新しい家計簿を購入して、「2018年こそ、きちんと節約してお金を貯めるぞ!」と意気込む気持ちは痛いほどわかる。しかし、1月から家計簿をつけ始めた人の多くが、途中で、挫折してしまっていることをご存じだろうか?

「家計簿」は、家計の問題を発見するための有効なツール

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(画像=PIXTA)

お金を貯めたいのであれば、まずは、毎月どれだけ収入があって、どれくらいのお金で生活できるのか支出を知ることが先決だ。

これがわからなければ、マネープランや貯蓄計画が立てづらい。
そして、自分のお金の使いみちを明確にし、世帯全体の収入・支出額を把握するために、「家計簿」は有効なツールとなる。これを分析することによって、お金の流れ(収支)を把握し、家計のムリ・ムダなどの問題点が見つけやすくなるからである。

7割以上の人がなんらかの「家計簿」を利用している

実際、家計管理を目的に、家計簿ノートやアプリといった、なんらかの家計簿を利用している人は多い。

マイボイスコムが行った「家計簿に関するアンケート調査」(2015年10月)によると、約65%の人が家計・資産管理を行っており、そのうち約74%の人が家計簿を利用していた。

具体的な家計・資産管理ツールとしては、「市販の家計簿・家計ノート」(23%)、「表計算ソフト」(19.5%)、「一般のノート(家計簿・家計ノート以外)」(18.2%)が上位に挙がっている。

同調査によると、男性30代以上は「エクセルなどの表計算ソフト」、女性20代以上は「市販の家計簿・家計ノート」が1位にラインクイン。30代以下は「家計簿アプリ(スマートフォンのアプリや、パソコンのWeb ブラウザ等)」の比率が全体より高く、男性20代は最も多くの人が挙げているなど、年代によって、家計簿のスタイルが異なる点も興味深い。

フィンテックの普及で家計管理も手軽に便利に

筆者自身も、家計簿歴は長く、大学に入学して以来、30年近いキャリアがある。最初は、一般的な家計簿ノートを愛用していたが、そのうちPCに家計簿ソフトをダウンロードして使うようになり、現在は、自分用と家族用で、家計簿ソフトとスマートフォンの家計簿アプリの両方を使い分けている。

家計簿がデータ化されていると便利なのは、すぐに過去のデータがわかる点だ。例えば、家電や家具を購入した日付など、家計簿を見ればすぐにチェックできるので、買い替え時期などの目安にもなる。

先日、あるコーヒーチェーン店で、30代前半くらいのスーツ姿の男性が、会計し終わったレシートをすぐにスマートフォンで撮影して、家計簿アプリに入力しているのを見かけた。

家計簿といえば、女性がつけるイメージが強かったが、こんな風に若い男性が、当たり前のように家計簿をつけているのを見ると「ああ、ここまで家計簿アプリは普及しているのだ」ということを痛感した。

ここ数年のフィンテックの普及によって、さまざまな金融サービスが登場し、家計管理や家計簿の在り方にも影響を与えているようだ。

家計簿を1月からつけてはいけない理由

それでは、冒頭の話題に戻るとしよう。なぜ家計簿を1月からつけると挫折してしまう人が多いのだろうか?その理由として、1月は時期的に何かと忙しく、家計簿をつける時間的余裕がないということが挙げられる。

ノート形式やデータ入力など、どのようなスタイルにしろ、家計簿をつけるのに慣れていなければ、結構、時間がかかるものだ。つい、「今日は外出や来客で忙しかったから、明日から付けよう」と先送りにして、結局レシートばかりがたまってしまい、面倒なことになる。

さらに年末年始は、クリスマスやお正月などイベントが多く、特別支出も多くなりがち。「え?これって、どの項目に入れれば良いの?」と仕訳で悩むことが重なると、家計簿をつけることがストレスになって、結局、長続きしない。

同じような理由で、年度末から新学期が始まる3〜4月も、進学や入学、引っ越しなど、イベントや特別支出が多いので、避けた方が良いかもしれない。

イベントや特別支出が少ない時期はオススメ

それでは、いつ始めるのが良いかといえば、自分のスタートしやすい時期から始めるのがベストなのだが、一般的には、6月あるいは10月といった、イベントや特別支出が少なく、ある程度新しい生活に慣れて、落ち着いた頃に始めるのが良いかもしれない。ただし、「毎日、家計簿はつけているけれども、つけっぱなし……」というのでは、意味がない。

家計簿は、あくまでも「予算管理簿」という位置づけで、自分の収支の特徴やお金の流れをつかむためのものである。月末などに毎月集計して、予想以上に膨らんだ支出をチェックしたり、使途不明金の有無を確認したりして、振り返ってみることが重要なのだ。

このように家計簿をつけることで、自分の消費行動の改善点(コンビニでつい余計なモノを買ってしまうなど)がわかるし、生活に最低限必要な予算(生活費)の目安が把握できていれば、病気やケガで収入が減ったときでも、どの程度ヤリクリできるかがわかるというものだ。

黒田尚子
黒田尚子FPオフィス代表 CFP®資格、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CNJ認定乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格を保有。立命館大学卒業後、日本総合研究所に入社。1996年FP資格取得後、同社を退社し、1998年FPとして独立。新聞・雑誌・サイト等の執筆、講演、個人向けコンサルティング等を幅広く行う。2009年末に乳がん告知を受け、「がんとお金の本」(Bkc)を上梓。自らの体験から、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。著書に「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)など。