中国の資産運用市場は拡大の一途である。デロイト トウシュ トーマツによるレポートでは、2016年の中国の資産運用市場は米国の33兆4000億ドル、英国の3兆8000億ドルにつぐ2兆8000億ドルとみられている。

しかし毎年30%を超える純増ペースで拡大を続けているのは中国のみであり、2021年には6兆ドルに近付き、2026年には11兆ドル、2030年には17兆ドルの市場規模が見込まれている。

拡大の続く中国の資産運用市場の2018年は、どのように動くのだろうか。投資信託中心の金融研究サイト「理財実験室」が、10種の金融商品に対する予測をたてている。いずれも一般人も購入できる商品を選んでいる。つまり個人投資家向けのガイドでもある。以下その10種について2018年の“趨勢”を見ていこう。

低リスク、銀行預金、銀行理財、MMF

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(画像=Thinkstock/GettyImages)

●1 銀行預金と国債

これらの資産は、元本保証で3~4%の収益を提供できる。

中国におけるノーリスクの金融商品については、語るべきことは多くない。元本と利息に何らリスクはない。金融資産の中で、最も保守的なグループだ。収益率の低さを嘆くべきではない。高齢者など、リスクに弱いグループにとって最もよい。また子女による両親の資産管理にも適している。

銀行預金と国債の利点は、利息が計算できることだ。5年ものを購入し、一部を2年で解約しても、解約分は2年分の利息を、残った分は5年分の利息を受取ることができる。

●2 銀行理財

この資産は、4%前後の収益を期待できる。“基本的に”ローリスクである。

しかし銀行業監督管理委員会(銀監会)の管理が厳格となるに従い、元本保証の銀行理財商品は、少なくなっている。ハイリスク商品が増えているのだ。われわれ一般人は、元本保証のない銀行の理財商品について学習し、習熟しなければならない。

大切なことは、銀行の自己資産による(販売代理ではない)理財商品のリスクは低いということである。なぜなら銀監会が、まだ蕾のうちに摘み取ってくれるからだ。ローリスクの金融資産を必要としている家庭は、銀行預金、国債の次に、銀行理財(自己資産)を検討するとよい。

●理財産品とは

商業銀行と正規金融機構が自ら設計かつ発行し、契約に基付いて資金を募集する。金融市場に投入され、または売買に供される金融産品。投資収益は契約に基付いて、投資家に分配される。

●3 貨幣基金(Money Management Fund)

この資産は、4%前後の収益を期待できる。基本的にローリスクである。

「余額宝」の登場した後、MMFが一体どんなものか知らない人は、ほとんどいなくなったのではないか。極めて流動性が高い上に、国内金融市場が不振の中で、目立った高収益を上げている。MMFにとって、1と2は直接のライバルである。

米国金融市場の発展過程を見ると、MMFの収益力は遅かれ早かれ下降し、他の資産からの吸引力はなくなっていく。ただし2018年の中国では、この心配が現実になることはまだなさそうである。

もし金融資産を一点に集約するとすれば「貨幣基金」は悪くない選択である。ただしファンド本体のリスク管理が“忽略”で売却時に被害が出る可能性はないとはいえない。やはり資産分散の原則に従うべきである。

●余額宝とは

アリババグループのアントフィナンシャルが運営するMMF。あまりの人気により、限度額が10万元(1日2万元)に制限された。現在(2018年1月上旬)の年率換算利率は4.39%に達している。

中リスク 各種の投資信託

●4 債券基金(債券型投資信託 Bond Fund)

この資産は、MMFに比べはるかに高い収益率を期待できる。

景気のよい年なら8%前後まで期待してもよい。問題は2017~18年にかけての債券市場が好転していないことだ。純粋に債券だけで構成された投資信託が、MMFの収益率を上回るかどうか断言はできない。

しかし、好転する前に売り急ぐ必要はまったくない。千差万別の商品があることを忘れるべきではない。好転した後にMMFに乗り換えるのがよい方法だろう。

●5 股票基金(株式型投信) 国内

もしあなたが2016年中に株式投信を購入していたら、2017年には相当の収益をひねり出しているに違いない。一見、株式市場の不振とは、均衡がとれていないように見える。これは上昇局面を一回経過していることに依っている。中には収益率20%を超えた投信もあるのだ。

しかし2018年の株式市場は、調整局面が続く可能性がある。そのため、かえってリスクは限定的になるだろう。ただし次回の上昇局面の到来が遅くなるようなら、売却も検討しなければならない。しかし中国経済が落ち着いているかぎり、今後5~8年以内に大波がやってくるはずだ。

●6 股票基金(株式型投信) 香港&米国

2017年、香港市場、ニューヨーク市場の値上がりには、目を見張るものがあった。果たして2018年はどうなるか、見通すのは難しい。しかし今から投資を開始するにあたっての、深刻な問題は見当たらない。直接の売買は、正当な方法とされていない。国内のQDII(qualified Domestic Insttutional investers)基金に投資すればよい。S&P500指数や、上海香港指数を購入するのと同じ感覚である。

投資信託は、分散投資における重要なプレイヤーであり、多くの商品を検討する必要がある。

●QDIIとは

本土投資家が認可されたファンドを通して海外市場の株に投資できるようにした制度。

高リスク ドル、金、不動産

●7 USドル

2016年末、ドル買い騒動が起こった。当時人民元を手放した人は、2017年を通して人民元安が進むと考えた。外貨準備の減少が続き、1ドル=7人民元を超えるという予想が主流だったからだ。しかし現在、1ドル=6.49元である。逆に元高が進んだ。

その結果、例えば中国農業銀行のドル理財商品の収益率は、2.2%にとどまった。人民元価値の毀損を収益と計算する商品は、挽回が難しかった。ドル買いには実需の裏付けがあるべきだ。まだ人民元の価値毀損が心配というのなら、QDIIを購入すればよい。

●8 網貸(P2P Lending)

この業界では、この企業は生き残るだろうと断言するのは難しい。収益率は8%以上期待できる。しかし、リスクコントロールは、自分の眼光に頼るしかないのである。国家による規制は厳格化されている。それでも被害を被るケースは、増える一方なのだ。いちいち詳述することはとてもできないが、収益率20%以上を謳っているケースは、どうみても危険というしかない。

●9 黄金

実際に黄金への投資で、どれほどの収益が見込めるか、誰にもわからない。しかし資産配置の一環として組み込むことに関しては大いに推薦できる。その場合、黄金類は資産全体の5%くらいで十分だろう。また黄金は宝物として伝承されている。数十年の時を跨ぐ資産であり、100年前に購入した黄金は、100年後でもその価値を保つだろう。もし黄金が必要なら、購入のチャンスを粘り強く待つことも必要だ。日常的に売買が繰り返されている他の資産とは、属性が異なるからである。

●10 不動産

不動産の価格水準は、すでに最高レベルに張り付いている。今から居住用の不動産を購入するのは大変だ。値上がり益の妙味はすでにない。それでも身にまとってしまった不動産への値上がり期待から脱出できないとすれば、それ自体が大きなリスクである。

多くの家庭が今も不動産問題に頭を痛め続けている。結局中国社会の福祉の多くは、居住する家の位置と連動しているからだ。若い人たちは、まだこの辺の事情に精通していない。子どもが生まれた後は、多くの事情によって、住む家のロケーションは制限される。本当に家庭の必要に沿った家を購入できれば、何ら問題はない。しかし熟慮した結果、多重ローンを抱え込むこともありうる。将来の収入増加のめどはついているのだろうか。住宅ローンは、毎月の家庭収入の3分の1を超えてはならない。

おススメは投資信託?

なぜか、7以降の高リスク商品になると、具体性を欠き始め、物語調かつ、教訓調の文章になっている。記述に力が入っているのは、投資信託である。「理財実験室」は、研究員108名が所属し、実際に投資信託の売買実験を行っている。拡大一途中国の資産運用市場において最も重要な商品という認識だろう。最後にその実験を覗いてみよう。

2017年7月~12月まで半年間の運用成績である。期間半ば、10月時点の資産統計は下記の通り(1元=17.41日本円)。

債券型投資信託=0元、MMF=1万9334元(参考収益率1.29%)

新発投資信託
農銀区間策略(混合型)=1056元(5.59%)
華夏節能環保(株式型)=915元(-8.52%)
申万菱信行業(株式型)=1003元(0.26%)
嘉実環保低碳(株式型)=1042元(4.20%)
華夏睿磐泰茂(混合型)=1000元(-0.31%)
大成盛世精選(混合型)=990元(-1.03%)

合計2万5336元であった。この結果、半年間の収益率は、1.34%となった。もちろんファンドマネージャーが利益の極大化を目指して運用しているわけではない。研究のためである。しかも、いかにも一般投資家クラスの投資金額を宗想定し、1000元単位の売買を繰り返している。なお「農銀区間策略」は混合型投信としては、トップ3に入る収益率という。個人投資家には、大変参考になりそうだ。抱えているリスクもよく理解できる。

おそらく投資信託は、巨大化する資産運用市場の主役になるのだろう。中国株の動向はこちらの側からも見る必要がありそうだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)