イオンつくば駅前店が、2018年2月についに閉店する。同店が入居するショッピングセンター・クレオスクエアでは、2017年2月には西武が閉店しており、相次ぐ大型店舗の撤退は市にとっては大打撃だ。
つくば駅前ばかりではない。新規開業を続けるショッピングセンターは、テナント出店が落ち始めるなどかげりも見え始める。一方アメリカでは、アマゾンショックといわれるネット販売の浸透の影響を受け、商業モールの苦境が鮮明になっている。
つくば市の人口は増えているが駅中心部は空洞化になる可能性も
つくば市は、地方都市で見られるように少子高齢化による人口減・過疎化進行で苦しんでいるわけではない。茨城県が2001年をピークに緩やかな人口減少に転じた中にあって、むしろ人口は増えている。科学万博開催の1985年以来、つねに転入が転出を上回り、15万人前後だった人口は5割増しの22.3万人に達した。
一方で、イオンつくば駅前店の売上は、20年前のピーク時から半減したという。西武百貨店も同様の状況に追い込まれていた。イオンつくば駅前店の店舗有価面積は6300㎡で、ジャスコつくば店として1985年に誕生した時は、大した競争相手はいなかった。
その後つくば市には、駅中心部だけではなく郊外にコストコ・イーアースつくば・LALAガーデンつくば・デイズタウンつくばなど大型ショッピングが相次いで開店、イオン自身もイオンモールつくばを常磐自動車道沿いにオープンさせている。
こうした中で、駅中心部の店舗は競争力を失ってしまい、イオンつくば駅前店は閉店に追い込まれた。大型店舗撤退は、駅中心部の空洞化につながり、つくば市の進める再開発事業(駅中心部へのインフラ機能集中・人口の集住など)にもダメージを与える。
ショッピングセンターは転換期
日本ショッピングセンター協会の「全国のSC数・概況」によると、2000年には2200店だったショッピングセンター※は、その後一貫して増え続け、2016年末時点で3211店に達している。海外に移転した工場跡地の活用や、自治体の誘致合戦も後押しした。
売上も伸ばしている。SC販売統計調査報告によると、この5年間で28.2兆円から31.3兆円と11.0%増加した。
一方で既存SCの売上高は、2012年以来5期連続でほぼ横ばいで推移した(2012年0.5%、2013年▲0.5%、2014年0.1%、2015年±0.0%、2016年▲1.1%)。既存店の不振を新規開業による売上増でカバーしている格好だ。
テナントの出店・退店に関しては、2016年度は出店13529店に対し、退店15043店に達し、若干ながらテナント数が減少した。特に衣料品などの不調が顕著となっている。
※ショッピングセンターとは、小売りの店舗面積が1500㎡以上、キーテナント(総合スーパーなど)を除くテナントが10店舗以上、共同の販促活動を行うテナント会等といった条件を満たす小売・飲食・サービスなどの複合協業施設を指す。
さらに追い打ちをかけるネット通販の興隆「アマゾンショック」
ショッピングセンターの先進国アメリカでは、「アマゾンショック」をはじめとしたネット通販の興隆に押され、大型商業モールが各地で苦戦している。全米に1000店舗以上を展開する百貨店チェーン「JCペニー」は、2017年に140店舗を閉鎖した。百貨店チェーン運営会社シアーズ・ホールディングスも、続く赤字をストップさせるためとして傘下の店舗を150閉鎖している。
こうした百貨店や大型スーパーといったキーテナントの撤退は8000店舗にも上ったとも言われ、商業モールの首を絞める。例えば、ニュージャージー州のバーリントン・センターモールは、JCペニーや老舗百貨店メーシーズが撤退、食事できる店舗も営業しておらず、ゴーストタウン状態だ。こうしたショッピングセンターを、アメリカでは「デッドモール」と呼んでいる。
一方でウォルマートは、ネット通販事業強化に舵を切り、アマゾンへの反撃を開始している。こうした中で、リアル店舗の存続は、ますます厳しい状況に置かれている。アメリカのこの潮流は、日本でもより鮮明になっていくだろう。今後生き残りはますます難しくなると見込まれている。(ZUU online 編集部)