韓国で、出来合いの簡便な惣菜(HMR=ホーム・ミール・リプレイスメント)市場の成長が著しい。農林畜産食品部は2011年に出荷ベースで1兆67億ウォンだったHMR市場が、2015年には1兆6720億ウォンに拡大し、2017年度は2兆ウォンを超えたとみており、韓国農食品流通院は市場が3兆ウォン近くまで達したと推計する。
市場が急成長を遂げた最大の要因は1人世帯の増加という見方が主流だったが、CJ第一製糖などの調査で、主婦層が市場をけん引していることがわかった。
オンラインショッピングモールでも40代から50代の購入が大きく伸びており、なかでも女性の割合が高いことから、主婦は調理にこだわり、出来合い料理を避けるという従来の認識が崩れた結果と見られる。
中高生家庭の成長が著しいHMR市場
韓国HMR市場1位のCJ第一製糖は、グローバル市場調査機関カウンターワールドパネルとともに、カウンターワールドパネルが満20歳から69歳までの消費者5000世帯を対象に実施したアンケートを調査した。1人から2人世帯、小学生の子がいる世帯、中高生の子がいる世帯などに分類し、韓国の食文化に合わせて、汁や湯(タン)、チゲといった汁物とパンチャンと呼ばれる惣菜など、それぞれのHMR購入額などを分析した。
中高生の子がいる世帯の2016年10月から2017年9月まで1年間の汁物HMRの平均購入額は1万7306ウォンで、2年前の1万231ウォンと比べて69%増えており、年1回以上購入した世帯は43.6%と、2015年の16.3%から拡大していた。惣菜の購入も2年前の年平均5回、4万6148ウォンから年6.7回、6万5912ウォンと増加がみられる。
汁物HMRを年1回以上購入した1人から2人世帯も、2015年の16.3%から17年は35.8%に拡大し、平均購入金額は7679ウォンから1万2865ウォンに増加。惣菜は2万6114ウォンから3万6666ウォン、購入頻度3.1回から3.8回以上へと増えているが、いずれも中高生の子がいる世帯の増加率が、1人から2人世帯を上回る結果となっている。
CJ第一製糖のトレンド戦略チームは、中高生の子を持つ40代から50代の主婦のHMRの消費が急増したとして、味や品質が上がり、主婦が安心して食卓にのせられるレベルに高まったと分析する。同時に子供たちが家庭でごはんを食べず、主婦が1人で食事をとるようになったことも影響しているだろうと述べている。
大量購入から少量消費へ
韓国の在来市場や大手スーパーは大量販売が主流だ。在来市場は野菜や果物などの生鮮食品をキロ単位や箱単位で安く買うことができ、大手スーパーも加工食品など+1(プラスワン)のセット販売が普及している。2+1や3+1など、同じ商品をセットで購入すると実質的な単価が下がる販売手法である。
週末に市場やスーパーでまとめて購入し、大量に作った料理をプラスチック容器に小分けにして少しずつ食べる食習慣が根付いているが、夫や中高生の子が家で食事を取らないなど主婦が1人で食事を取るケースが増えている。HMRは1食または2食分が1つのパッケージになっており、1人や2人の食事はまとめ買いで調理するより安価なケースが少なくない。
インターネットショッピングモール大手の11番街がHMRの購入者を分析した結果でも40~50代が45%を占めており、61%が女性だった。オークションも40~50代の割合が61%に達し、Gマーケットは、40代が対前年比60%増、50代は67%増と、20代の28%、30代の36%を大幅に上回る増加率となっている。
CJ第一製糖が地域の特産や有名店のメニューを再現した簡易食を製品化し、コンビニエンスストアも韓国ミニストップが松屋フーズ <9887> と共同で牛丼を開発した。農心は味の素 <2802> と合弁でスープ市場に本格参入を行うと発表しており、さらなる参入と市場の拡大が見込まれる。(佐々木和義、韓国在住CFP)