日本ではロボティクスが投資テーマとして注目されている。IT分野に関連する「CAMBRIC(キャンブリック)」という言葉をご存知だろうか?

米国の市場関係者の間ではそのロボティクスを含むCAMBRICカテゴリーが注目されている。IoTやデジタル技術のいわゆる「第4次産業革命」の中核を成すカテゴリーがCAMBRICであり、今後も引き続き成長が見込まれるだろう。

Bob Gourley氏は2016年3月、『The Seven Megatrends of Cambric 』と題したレポートにてキャンブリックを紹介した。

CAMBRIC(キャンブリック)は、「C:Cloud Computing、A:Artificial Intelligence ( AI )、M:Mobility、B:Big Data、R:Robotics、I:Internet of Things ( IoT )、C:CyberSecurity」の頭文字を取ったものだ。

IT企業が多い米国ナスダック市場では2017年は年初来約28%上昇し、これは日経平均株価の上昇率約19%を上回った。今後も成長が予想されるAIやIoTなどを含む、トレンドとして欠かせないキーワード「CAMBRIC」を紹介しよう。

CAMBRIC(キャンブリック)は既に成長している

CAMBRIC
(画像=PIXTA)

キャンブリックの一部が2017年時点ですでにトレンドとなったことは間違いないが、今後も無視できないカテゴリーだ。「キャンブリック」をイメージしやすい事例を交えて解説する。

【C=クラウドコンピューティング】

インターネット経由(クラウド)でストレージやサーバ、ソフトウェア等のコンピューティング・サービスを配信すること。データベースのクラウド上への集約や、そのデータ分析などの新しいサービスを産みだす重要なプラットフォームになっている。

【 A=AI (エーアイ)】

「学習」「認識・理解」「予測・推論」「計画・最適化」など、人間の知的活動をコンピュータによって実現するもの、と定義されている。AI技術は過去1950年代や1980年代とのブームとは異なり、今回の急速な広がりが予想されている。そのエンジンはここ数年の飛躍的な技術レベルの向上だと言える。1)コンピュータ処理能力 2)モノや人の状態を検知するセンサー(センシングデバイス)、3)コンピューター計算方法の開発(アルゴリズム)などだ。

【M=モビリティ】

モビリティは移動性や可動性と訳される。携帯電話などのモバイル端末をイメージするとわかりやすいだろう。 VR (仮想現実 ゴーグル型ディスプレイなどで3D 世界に没入する、ジェットコースター体験が、動いていない部屋で体験できるなど)・ AR (拡張現実 現実世界に仮想の世界を融合する。公園にアニメ世界のモンスターが出現して見えるゲームなど)といった技術によって、将来の視覚情報は現在とは異なる次元の利用方法が今後開発されると考えられる。

【B=ビッグデータ】

膨大な情報を分析し、商材や効率化につなげる動きだ。インターネットで購入しようと調べた商品の関連商品が、後日「おススメ」商品としてメールを受け取った事は多くのユーザーが経験しているだろう。ポイントカードやSNSコメント、インターネットやスマホの検索履歴や位置情報の活用、POSシステムによる売り上げ動向など様々な事柄が考えられる。

【R=ロボティクス】

ロボット活用による効率化は産業用ロボットで普及し続けている。高齢化の進行のため介護分野で注目されるパワーアシストスーツや、患者とは遠隔の場所で行う事ができる手術支援ロボット、運送や測量でのドローン活用、原子力発電所など危険な地域の遠隔ロボット操縦、身近には自動で充電ドックに戻るロボット掃除機などがある。今後更に自動運転を行う自動車や輸送機器などが普及するだろう。

【I= IoT 】

(アイ・オー・ティ)全てのモノがインターネット接続し、互いの情報・機能を補完・共生し合う状態だ。スマートハウスで、外出先からお風呂のお湯が沸かせるといった事例はイメージし易いだろう。位置情報がわかるGPS等の「センサー内蔵」のショベルカー等の工事車両を用いて、稼働率が高い現場・地域に、追加の車両導入セールスなどの効率的な営業も可能にする。橋などインフラ設備にセンサーを敷設することで、人が行ってきた点検に変わって、振動などのデータで補修タイミングを算出するシステムなどもある。

【C=サイバーセキュリティ】

インターネットへのサイバー攻撃で機能がダウンする、データが改ざんされる、情報が盗まれるなどに対して防御を行う事だ。バングラデシュの中央銀行がサイバー強盗被害に遭い、約90億円もの大金が盗まれた2016年2月の事件は記憶に新しい。しかし、海外の事件は他人事ではない。日本の省庁などでもホームページの閲覧が困難になったり、パソコンのウイルス感染や、情報流出した事件が発生した。

新しいテクノロジーは我々の想像を超えた広がりを持つことも多い。国内では1985年当時、ほぼ誰も保有していなかった「携帯電話」が、2011年には1人1台を超えて普及した。中核を成す携帯電話大手NTTドコモが東証1部に上場したのは1998年のこと。現在では日本の時価総額の上位4位(2018年1月12日時点)に入っており、身近な存在になっている。

「CAMBRIC」 がいかに我々の将来の生活に、深く関わっているかがお分かり頂けたと思う。CAMBRICの技術が複雑に絡み合い、新しい産業、新しいビジネス、効率化などが更に加速度的に進んでいくと予想する。CAMBRICに関連する企業の成長神話が起こるのはこれからかもしれない。

安東隆司(あんどう・りゅうじ)
RIA JAPANおカネ学株式会社代表取締役。CFP®ファイナンシャル・プランナー、元プライベート・バンカー。日米欧の銀行・証券・信託銀行に26年勤務後、独立。お客様サイドに立った助言を実践するためには高い手数料は弊害と考え、証券関連の手数料を受け取らない内閣総理大臣登録の「投資助言業」を経営。著書に『個人型確定拠出年金iDeCo プロの運用教えてあげる!』等がある。