使うのは「四角形と矢印」だけ
紙一面に文字だけがずらっと並んだ資料は、ひと目見ただけで読む気がなくなるもの。相手に、より「直感的」に伝わる工夫をしたいところだ。そこで、ビジネスマンの知的生産研究に取り組む永田豊志氏に、複雑に入り組んだ情報でも、四角形と矢印だけでシンプルに伝えられる「図解を使った資料の作り方」をうかがった。
図解通訳を通じて構造を「見える化」
図解の最大のメリットは、見た瞬間に全体像が理解できること。ジャーナリストの池上彰さんの情報番組を見ていると、その効果がよくわかります。専門的な話になると、決まってフリップボードが登場し図解で説明が行なわれます。すると一見複雑な政治問題も、まるで子供のケンカのように、単純な構図ですんなり理解できるのです。
一方で、ビジネス文書でよく使われる「箇条書き」は伝わりにくい見せ方の最たるもの。情報の羅列にすぎず、一字一句を読まないと内容が理解できないからです。
言葉では伝わりにくい情報を一発で伝わる「図」に落とし込む──これを私は「図解通訳」と呼んでいます。万人にわかる形で全体の構造を「見える化」でき、しかも、視覚情報として右脳に働きかけるので、ビビットに記憶に残るのです。
図解通訳の基本ツールは「四角形」と「矢印」のみ。世の中の事象は、四角形と矢印の組み合わせでほぼ説明できるのです。
ベースはこの2つで十分ですが、さらに、どんな情報を相手に印象づけたいのかによって、応用ツールである「フレームワーク」を用いれば万全です。伝えたい情報を際立たせることができます。
「いい図解」を見たら撮影しておこう
資料作りで大切なのは、着手する前に、何をどう伝えるかの「設計図」を思い描くことです。設計図がないままに資料を作り始めると、情報量がやたらと多くなり、複雑な図になりがち。伝えたい情報は、「1図解につき、1メッセージ」に絞り込むのが鉄則です。シンプルさを意識しましょう。
とはいえ、わかりやすく図解するためには、練習が必要です。テレビや新聞でわかりやすい図を見つけたら、スマホで撮ってストックするクセをつけるといいでしょう。また、会議や打ち合わせの際、その内容を図解でメモすることもいいトレーニングになります。情報の本質を直感的につかみ、全体像を把握する能力も高まるはずです。こうした習慣を続ければ、短時間でわかりやすく図解する能力が身につくはずです。
永田豊志(ながた・とよし)知的生産研究家
リクルートで新規事業開発を担当し、マーケティング改善事業に特化した、㈱ショーケース・ティービーを共同設立し、東証一部上場に導く。ライフワークとして図解によるビジネスパーソンの生産性向上に取り組む。著書『頭がよくなる「図解思考」の技術(KADOKAWA )など多数。(取材・構成:麻生泰子)(『The 21 online』2017年11月号より)
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