よい人間関係を続けるための言葉選びのコツを紹介!

余計なひと言言い換え術
(画像=The 21 online)

日々の会話の中で、良かれと思って言った言葉で相手を傷つけてしまうこともあれば、逆に相手に好印象を与えることもある。良い人間関係を継続させるためには、その言葉選びが非常に重要。とくにビジネスシーンにおいて、どんなところに気をつければよいのか、ビジネスコミュニケーションに詳しい臼井由妃氏にうかがった。

「余計なひと言」は忙しい場所で生まれる

良かれと思ってひと言付け加えたら、相手を不愉快にさせてしまった──という場面は、どんな方にも一度は経験があるでしょう。

「ひと言」という名前のとおり、この類の言葉は1~2秒で短く発されるものです。それだけに、予想以上に相手の心に強く焼きついてしまうのです。

人は基本的に善意の生き物なので、よほどのことがない限り、積極的に悪意を示そうとはしないものです。まして職場では円滑に業務を進めることが必須ですから、わざわざ同僚を不快にさせて無駄な時間やストレスを増やしたいはずはありません。

にもかかわらず、現実には「ひと言多くて同僚を怒らせる」場面が絶えないのはなぜでしょうか。それはとりもなおさず、職場が「忙しい場所」だからです。

こうした言葉はたいてい、せわしない状況で発されるものです。部下に「あの書類の期限、明日だよ」などと言うのはその典型。部下は必死でその仕事を進めているところに余計な念押しをされて、「わかってます!」という気分になるでしょう。言葉を発する側と同じく、受ける側も心の余裕を失っているがゆえに、何気ないひと言を実際以上に不愉快に感じるのです。

このように、ちょっとした確認や感想を余計なひと言にしないためには、「とっさの言葉選び」のサンプルを持つことが重要。「この場面ではこう言う」といったフレーズを、ストックしておくとよいでしょう。

言葉に「心」を添えると印象が格段にアップ!

その際、重要なキーワードとなるのが「心」。

「心」という言葉を絡めて発したひと言は、同じ意味でもより好印象になる、という法則を覚えておきましょう。

たとえば、取引先に手土産を渡す際の「つまらないものですが」。決まり文句ではありますが、「つまらないものを選んだのか」という印象は避けられません。しかし、これを「心ばかりのものですが」と言い換えると印象が一変します。「お待ちしておりました」という通り一遍の挨拶も、「心待ちにしておりました」と言えば格段に印象がよくなります。言葉の上に、文字どおり「心」が添えられているからです。

心という単語なしで心を伝えられるフレーズもあります。たとえば、初対面の相手に「はじめまして」と言うだけなら普通の挨拶ですが、「ご一緒できて嬉しいです」と添えれば、より相手の心に響くでしょう。

一方、「立場の違い」が言葉に及ぼす影響も要注意ポイント。とくに「年長や目上の相手を賞賛する」とき、言葉選びを誤ると失礼な表現になります。私も、あるパーティーで祝辞を述べた後、若い方から「なかなか良かったですよ!」と言われ、少々複雑な思いをした経験があります。

年長の相手には、ほめ言葉でも評価を下すような言い方をしてはいけません。「素晴らしいスピーチでした」など、素直な賛嘆が好感度大です。

このように、「プラスのひと言」にする鍵は「誠意をこめること」にあるのです。せっかく相手を思って発される言葉ですから、それを不用意に発するのではなく、共感・喜び・労いたわりなどの気持ちを織り込みましょう。

言葉は、相手やシチュエーション次第で受け取り方が変わります。余計なひと言にならないよう、日頃から「自分が言われたらどうだろう?」と考え、心のこもった言葉のバリエーションを持つよう心がけてください。

「平凡なひと言」「余計なひと言」を「プラスのひと言」に言い換えよう!

△「そのネクタイ、素敵ですね」
◎「そのネクタイ、よくお似合いですね」

よく、初対面で雑談ネタがないときは相手の持ち物を話題にするとよいと言われますが、そんなときは、その「モノ」をほめるより、「モノを身につけている相手本人」をほめるほうが好印象です。そこで生かしたいのが「似合う」というキーワードです。「その『色』、お似合いですね」「その『柄』、お似合いですね」など幅広く使えます。

△「わかりました」
◎「お任せください」

仕事を頼まれたときに「わかりました」と答えるのは、ごく普通の応じ方。「承知しました」「かしこまりました」ならより丁寧ですが、これも「敬語度」が上がっただけです。より心のこもった言い方にするなら、「お任せください」がお勧め。誠意を持って務める、という強い決意が伝わるでしょう。なお、「了解しました」は論外なので要注意。

△「すごく嬉しいです」
◎「夢のようです」

尊敬する相手と話せて感激しているときは、気持ちが舞い上がって、つい同じような言葉を繰り返しがちです。しかし「すごい」ばかりでは語彙が貧困な人に見えてしまう恐れも。「夢のようです」なら、最上級の感激を示せます。他に「素晴らしい」「最高」など、感激度に合わせて気持ちのグラデーションを表わせる言葉を持つとよいでしょう。

×「平凡だな」
◎「定石ではあるけれど」

企画会議などで、出てきたアイデアがありふれていた場合、「平凡だな」などと言ってバッサリ切って捨てる上司がいますが、相手はもちろん、他の出席者の発言意欲も削ぐので慎みたいところ。ここは「平凡」と同じ意味の失礼でない言葉=「定石」「手堅い」を使うのが正解です。反対意見を言うにしても、冷たい印象にはなりません。

×「参考になりました」
◎「見習わせていただきます」

講演会などで、講師にお礼のつもりで「参考になりました」と言うのは目上の人に対して失礼。「参考」には「聞いた意見を、自分の考えの足しにする」という意味があるからです。「感銘を受けました」ならば無礼ではないものの、やや仰々しい印象。対して、「ぜひ見習わせていただきます」ならば、感謝の思いや未来への意志が伝わります。

×「お疲れさまでした」
◎「ありがとうございました」

「お疲れさま」は別れ際の挨拶として多用されますが、実は目上や外部の人に対してはあまり好ましくない表現。さらに「疲れ」というネガティブワードが入っているので、言い換えたほうがよいでしょう。この場合、「ありがとうございました」が誰に対しても好印象。さらに、「素晴らしい時間を共有できて幸せでした」も良い表現です。

×「要するに……」
◎「○○ということですよね?」

相手の言ったことを受けて「要するに……」とまとめたがる仕切り屋タイプの人がいますが、この言葉は、上から目線の印象があり、さらに相手の話す意欲を削いでしまう可能性があります。内容を確認したいときには、あえて「要するに」はつけず、「○○ということですね」と、相手の言葉をおうむ返しにするだけでOKです。

臼井由妃(うすい・ゆき)ビジネス作家
1958年東京生まれ。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぐ形で専業主婦から経営者に転進。独自のビジネス手法で多額の負債を抱えていた会社を優良企業へと育てる。その手法が様々なメデイアで紹介され、日本テレビ系で放送された「マネーの虎」に出演するなど、好評を博す。また幼少期に吃音を患い対人恐怖症に陥るも克服し、講演活動も積極的に行っている。理学博士号・MBA・行政書士・宅地建物取引士などを短期で取得したことでも知られ、その勉強法や知識の広さには定評がある。ビジネス作家、エッセイスト・講演家としても活躍中。『心が通じる ひと言添える作法』(あさ出版)など、著書多数。(取材・構成:林加愛)(『The 21 online』2017年12月27日公開)

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