Amazon、Alphabet、Facebook、Appleが2017年、総額5000万ドルを連邦政府へのロビー活動に投じたことが米国政治資金監視団体「センター・フォー・レスポンシブ・ポリティクス」のデータベースから明らかになった。

最高額を投じたのはAlphabetでAlphabet は1814万ドル(前年比117%増)。次いでAmazonが1300万ドル (113%増)、Facebookが1151万ドル (132%増)、Appleが707万ドル(前年比151%増)と各社最高の水準まで金額を増やしている。

移民問題を含むトランプ大統領との摩擦や税制改革の行方、SNSへの非難など、各社がかかえる問題に関し、政府の便宜を受ける、あるいは対抗策を試みと推測される。

2015年、Amazonのロビー献金が2倍に ドローン、AWSなど事業多角化も影響

米国の企業間では定着しているロビー活動とは、企業や個人が特定の利益を得ることを目的に、政党や議員に働きかける行為を指す。米国では両者間の仲介役となる「ロビイスト」の需要も高い。

Amazonのロビー活動が急激に活発化したのは2015年で、前年の494万ドルから943万ドルへと1.9倍に伸びた。この年からロビー活動の対象に、クラウドコンピューティングサービス「AWS」が加わったためかと推測される。2017年のロビー献金の詳細は、主要活動に1280万ドル、ドローン宅配便と航空機による輸送活動「Amazon Prime Air」と「AWS」用に各8万ドルを費やしている。2017年の支出増額はトランプ政権との対立が影響しているとの 見方もある。

Amazonはロビー活動をエイキン?ガンプ、スクワイヤ・パットン・ボッグス、マクガイアーウッズ・コンサルティングといった大手ロビー企業に任せているが、新たに15人のロビイストを組織内に雇い入れ、ドローン関連から取引規制、移民、生活保護者や失業保険受給者に支給される州政府発行の食料割引券など、様々な面で政府に働きかけている(ロイター2017年7月21日付記事 )。

Alphabetはロシア介入疑惑対策や自動運転車の開発で資金増額?

国際IT企業中ロビー活動が最も活発なのはAlphabet だ。2016年には一度107万ドル減額した資金を、再び1814万ドルに増やしている。そのうち1804万ドルはGoogle、10万ドルは機密プロジェクト「Google X」の活動のために使われており、コーナーストーン・ガバメント・アフェアーやクロスローズ・ストラテジーズ、ゲバート・グループ、S-3グループなどには各32万ドルの契約金を支払っている。

Alphabetは2016年、「Google Mapストリートビュー」の情報誤受信や反トラスト法(米独占禁止法)違反問題で規制当局の取り調べていたが、2017年は米大統領選をめぐるロシア介入疑惑でFacebookやTwitterとともに法務担当者が公聴会で証言を求められるなど、批判の矢面に立たされた(Record2018年1月25日付記事 )。

また自動運転車の開発も、活動費用が増えた理由のひとつとして挙げられている。

Facebookのロビー活動資金は2009年の5倍に

FacebookもAlphabet同様、2016年には115.8万ドル減らしたロビー活動資金を、2017年には1151万ドルに増やしている。2009年と比較すると5.5倍以上の増額だ。やはりロシア介入疑惑やフェイクニュース、ヘイトスピーチ、差別発言といった批判をはねつける上で、政治的な便宜を受けることが目的のようだ。

ハービンジャー・ストラテジーズとサブジェクト・マターズに各24万ドルの契約金などを支払っている。

「ネットワーク中立性保護活動」に参戦 新政権との摩擦が目立つApple

Apple のロビー献金は707万ドルとライバルIT企業より少なめだが、前年の1.5倍、同社の最高額である。同社は2017年に入り、すでにGoogleやFacebook、Amazon、MicrosoftといったほかのIT企業間では活発化していた「ネットワーク中立性保護活動」に参戦 した。これはインターネットのオープン性を支持する多くのIT企業と、ネット中立性保護の無力化を押し進めようとする米国通信委員会との対立問題だ。

ティム・クックCEOは昨年初頭、株主総会で中立性保護を支持する意思を表明した際、「政治には口だししないが、政策には口をだす」と述べたと9To5Mac が2月28日に報じている。

移民問題や税制改革に関するロビー活動も見られるほか、トランプ大統領によるトランスジェンダーの軍入隊禁止表明 や温暖化対策撤廃に異論を唱えるなど 、新政権との摩擦が目立つ。 またGoogleと同じく、自動運転車関連の働きかけも活発化しているようだ。

IT以外の企業のロビー活動資金は減少傾向

Microsoft の活動資金は860万ドル。2013年の1049万ドルをピークに、2003年の水準にまで戻している。850万ドルはMicrosoft 、16万ドルは2016年に268億ドルで買収したLinkedIn用の活動資金だ。

同社は「米国企業が国外で創出した利益への増税を実施する法案」には異論を唱える意向を示しているほか、科学・リサーチ分野へのロビー活動に230万ドル を投じることで、トランプ大統領による科学とリサーチへの大幅な予算削減策 にも立ち向かっている。

一方、IT以外の国際企業のロビー活動は著しく減速している。2009年には1007万ドルを投じていたバークシャー・ハサウェイ は、過去8年で最低水準の555万ドルまで減らしている。

JPモルガン・チェース は2012年の806万ドルをピークに299万ドル、ゴールドマン・サックスは2010年の461万ドルをピークに322万ドル、バンク・オブ・アメリカ は2008年の488万ドルから248万ドルなど、対照的な動きを見せている。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)