2017年の1年間で最大約20倍も上昇したビットコイン。しかし、2018年初から急落し、2018年2月現在では、最高値から約2分の1の水準で推移している。高値掴みしてしまった人の落胆はもちろん、まだまだ含み益があるビットコインホルダーも、あまりに高いボラティリティに辟易としているのではないだろうか。
かといってビットコインを含む仮想通貨を売却すると、基本的に雑所得扱いとなり(参考:2017年12月 国税庁の通達)、保有額によっては、高額の納税が必要となるケースもある。そのため、含み益があるビットコインをどうすべきか迷っている人もいるだろう。今回は、そんな「売るに売れないビットコイン」を有効活用でき、富裕層が密かに保有している資産について見ていこう。
株も不動産も上回るパフォーマンス
まずは以下のチャートをご覧頂きたい。1995年を起点としたイギリスの資産セクター別の騰落率だ。
ポンド建ての金価格、イギリス不動産価格、イギリスの代表的な株価指数であるFTSE100は、それぞれ騰落を繰り返しながらも、長期で見れば少なくとも2倍以上になっている。なかでも目を引くのが「英国200レアコインインデックス」だ。21世紀に入った頃から上昇ペースを強め、多くのリスク資産価格が暴落した2008年前後の世界金融危機を物ともせず、今日では6倍近くまで上昇している。
英国レアコインインデックスとは、イギリスの主要なアンティークコイン200銘柄のインデックス指数だ。100年以上前に発行された金貨・銀貨などのコインを「アンティークコイン」と呼び、現在、世界に20万種類ほど存在すると言われている。その中でも数百種類のコインには、世界中に熱狂的なコレクターが存在し、非常に高い価値がついているため、欧米の富裕層や上流階級を中心に保有され続けた「知る人ぞ知る実物資産(コモディティ資産)」だ。
実際にどのようなものがあるか見てみよう。例えば、ヴィクトリア女王の即位を記念して1839年に400枚だけ発行され、世界で一番美しい金貨と言われる「ウナとライオン」は、鑑定品で1枚3,000〜9,000万円の価値があるという。フランスの英雄ナポレオンが戦争に勝利した記念に作ったもの、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスが自身の権力を誇示するために作ったもの、交通事故で悲劇の死を遂げたダイアナ妃が描かれているものもある。
魅力は「希少性」と「管理が容易」
アンティークコインにはどのような魅力があるのだろうか。銀座三越前にギャラリーを構えるユニバーサルコインズ(本社:東京都中央区銀座)によると「時を経る毎に高まる希少性」や「実物投資にも関わらず管理が煩わしくないこと」などが挙げられるという。
アンティークコインは工業製品のように大量生産されず、発行枚数が限られているため、紛失や破損で流通量が減ることはあっても、増えることはない。モノの価格は需要と供給のバランスで決定するが、アンティークコインは供給側が時を経る毎に減っていくというわけだ。もちろん、需要側が減ってしまえば価格に下落圧力がかかるが、歴史的なロマンも相まって、いつの時代も人々を魅了してきた。
また、不動産や自金(インゴット)、絵画やワイン、クラシックカーといった他の実物資産に比べて、保管や維持にランニングコストや手間がかからない。磨いたり掃除したりする必要はなく、基本的には専用のケースに入れて、金庫に保管しておけば良いという。コイン自体は直径40mm前後なので、いざというときの持ち運びも簡単だ。
ビットコイン決済も導入
ユニバーサルコインズでは、近年のビットコイン市場の広がりを受け、アンティークコイン購入にビットコイン決済を導入した。含み益を抱えながらも、そのボラティリティの高さやセキュリティリスクから、資産配分を見直したいビットコインホルダーにとっては有効な選択肢と言えるだろう。もちろん、ビットコイン決済ではなく、通常通りの日本円決済も可能だ。
アンティークコインは種類によって異なるが、数十万円から購入できるものがある一方、数百万円や数千万円を超えるものも少なくない。少なからず偽物も流通してしまっているという。相対取引が基本なだけに、適正価格を大きく外れた金額で購入してしまうリスクもある。同社によると、信頼できる業者2つ以上と同時に付き合うことを勧めているそうだ。
欧米の富裕層や上流階級の家宝としてなかなか世に出回らなかったコインも、代を経ることに市場に姿を現すことが多くなってきた。投資手法としての認知度向上もあり、今後はさらにマーケットが拡大していくことが予想される。この機会に、アンティークコインの世界に足を踏み入れてはいかがだろうか。