今から11年前、編集者兼ライターという立場で、マネー情報誌『Money JAPAN』2006年12月号の「きちんともらいたい人の年金早わかりガイド」という記事を担当した。このときの記事には、「年金保険料が一定額、もしくは一定率、これから段階的に上がっていく」という内容を入れた。

記事には、「(国民年金保険料と厚生年金保険料は、それぞれ)2017年度までアップする予定」と書いた。そして、今年度がまさに値上げの上限に達した年度になるわけだ。記事を書いたときは、果てしなく続くと感じた値上げ期間だったが、もう上限まで来てしまった。

2004年から毎年引き上げられてきた年金保険料

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(画像=PIXTA ※画像はイメージです)

そもそもこの値上げの発端となるのは、2004年の年金制度改正で、少子高齢化が進んでも年金制度を持続できるものにするため、負担と給付の両面で見直しを実施したのである。上限を決めたうえで保険料の段階的な引き上げを行うことを決め、収入の範囲内で給付を行うため、マクロで見た給付と負担の変動に応じて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組み「マクロ経済スライド」を導入した。

その結果、国民年金保険料と厚生年金保険料は13年に渡って上がり続けることになった。

自営業者やフリーターなどが納める国民年金保険料は、2005年4月から2017年4月まで13回、毎年月額280円ずつ(2017年度は240円、物価や賃金の伸びに応じて若干変動する)段階的に引き上げられた。

2004年の改正までの国民年金保険料が月額1万3300円、2017年4月の最終引き上げ後の保険料は月額1万6490円となっている。月額3190円アップ、年額にすると3万8280円のアップとなる。

会社員や公務員などが納める厚生年金保険料は、2005年9月から2017年9月まで13回、毎年0.354%(※1 本人負担分は2分の1の0.177%)ずつ段階的に引き上げられた。 ※1 2017年は0.118%

2004年10月までの厚生年金保険料の保険料率は13.934%(本人負担分は6.967%)、2017年9月の最終引き上げ後の保険料率は18.30%(本人負担分は9.15%)となっている。4.366%(本人負担分は2.183%)アップしたことになる。本人負担分だけでも9%を超える。同額を会社も負担してくれているという点では自営業者などの国民年金第1号被保険者より恵まれているといえるが、会社員は毎月、かなり高い年金保険料を納めているはずである。

国民年金保険料は、さらに100円程度引き上げ予定

厚生年金保険料の保険料率は、2017年9月の引き上げで上限に達した。保険料水準については、引き上げ過程も含めて法律に明記されている。今後さらに引き上げる場合は、法律の改正が必要になる。

国民年金保険料も2017年4月からの月額1万6490円で引き上げは終了している(※2)。しかし、2019年4月から国民年金第1号被保険者(自営業やフリーターなど)への産前産後期間の保険料免除制度が施行されることに伴い、保険料が月額100円程度引き上げられる予定になっている。

ちなみに、国民年金第2号被保険者(会社員や公務員など)に対しては、すでに産前産後期間の保険料納付の免除が行われているし、育児休業中の保険料納付も免除されている。※2 国民年金保険料は、物価や賃金の伸びに応じて若干変動するため、2018年度は月額1万6340円と少し下がる

今後は、給付の見直しが図られる

公的年金は、基本的には現役世代が納めた保険料をその時点での年金受給者への給付として使う「賦課方式」で運営されているが、将来の給付に必要な原資を積み立てていく「積立方式」も一部使われている。2004年の年金制度改正では、国が負担する割合を3分の1から2分の1に引き上げるとともに、積立金を活用していくことも決められた。

これで年金制度の収入の部分が固定化されたので、今後は、年金の給付水準を調整していくことになるだろう。ただし、給付水準に関しても、受給開始時点で現役サラリーマン世帯の平均所得の50%を維持しなければならないという下限を設定している。

給付水準を見直すうえで、さまざまな改革案が出されている。その改革案には、財源の範囲内で給付水準を自動調整する「マクロ経済スライド」の発動、さらなる受給開始年齢の引き上げ、雇用期間が延びることでの被保険者期間の延長、高所得者への国庫負担分の減額などがある。

年金保険料の負担はソンか?

年金保険料が上限まで値上げされ、今後は給付額の調整が一層進む方向だ。しかし、老後の生活の基盤となるのはやはり公的年金である。いくら貯蓄をしていても、長年使っていけば目減りするし、老後の備えとして高額な貯蓄ができる時代でもなくなっている。

もしろ「人生100年時代」になるほど、終身給付される公的年金が受け取れないと老後の生活は苦しくなる。現役時代には公的年金の保険料をキチンと払い、老後にできるだけ多くの年金が受給できるようにしておきたい。

フリーライター 生島典子(いくしま・のりこ)
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。主な執筆テーマは、マネー、子育て、住まい、働き方など。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり。子どもを持つ保護者として、学童クラブの父母会活動、PTA活動に参加。「居場所づくり」がこれからのテーマ。