経営者としてある程度資産を構築すると、「個人として保有するか」「プライベートカンパニーとして資産運用会社を設立するか」の選択を迫られるようになる。ここでは、資産運用会社設立のメリット・デメリットや、節税効果などを見ていこう。

資産運用会社設立のメリット・デメリット

company
(写真=PIXTA)

プライベートカンパニーとは、オーナーやその家族といった少数の特定事業主体(あるいは株主)によって所有されている企業のことを指す。プライベートカンパニーの設立メリットは、ずばり「節税効果」だ。日本では、個人の所得税に対し、累進課税制度が導入されており、収入が高ければ高いほど税負担が重くなる。

例えば、2015年の税制改正以降は、課税所得で4,000万円を超えると45%の最高税率となる。これに復興特別所得税(所得税率×2.1%)、個人住民税や個人事業税を加えると、最高で約60%以上もの税率となるのだ。一方、法人にすると、所得税と法人税の実効税率の差がなんと、20%以上になることもある。

このように、ある一定の所得を超えたら、法人成りしたほうが節税効果は高いのだ。法人になれば、事業にかかわる費用や役員への報酬を経費として計上できるため、所得を増やすことが可能になる。また、損失を出したときも9年間の繰り越しができるのだ。しかし、プライベートカンパニーの設立にはデメリットもある。

法人成りするには、会社設立時にかかる費用に加え、年間の維持費もかかるからだ。また、法人の決算報告は複雑なため、税理士に依頼すると税理士報酬という費用が発生する。そうした諸費用の数十万円をペイできないようだと、法人を設立するうまみはないといえるだろう。

副業禁止の場合は配偶者を代表に

働き方改革の旗印の下、民間に勤めるサラリーマンの副業を解禁しようという動きが加速している。一方で、国家公務員や地方公務員には、「職務専念義務」「守秘義務」「信用失墜行為」禁止の3項目から、国家公務員法と地方公務員法で副業禁止が定められている。例外のひとつが不動産投資だ。しかし、「5棟以上の戸建て、10室以上のマンションの賃貸」「10件以上の土地の賃貸」は自営とみなして禁止されている。

不動産賃貸業で法人成りを検討しているのならば、こうした「事業規模」で運営しているケースがほとんどだろう。そのため、収益をさらに上げようとしてプライベートカンパニーを設立すると、副業禁止違反になる可能性が高い。実際、マイナンバーの導入後に、副業で不動産投資をしていた公務員が摘発される例も出ているのだ。

一方、公務員をやめて専業の投資家になると、銀行からの与信が引き出しにくくなる。なぜなら、公務員は金融機関受けが抜群だからだ。こうした事態を避けるには、配偶者などの家族をプライベートカンパニーの代表者とするのが常套手段だ。さらに、配偶者を代表にすれば、月々の生活費を報酬として経費計上することができる。

不動産投資でプライベートカンパニーを設立するなら

プライベートカンパニーの設立目的でよく耳にするのは、不動産投資に絡んだものだ。「法人化の目安は家賃収入が1,000万円を超えてから」などといわれる。その理由は、所得税の税率にある。個人の場合、年収695万円超~900万円以下だと、所得税の税率は23%。900万~1,800万円だと33%、1,800万~4,000万円で40%となる。

家賃収入として1,000万円以上得ている場合、本業の収入を合算すると税率40%以上に該当するケースが多くなるため、目安として「1,000万円」といわれていると考えられる。実際には、先の公務員の例にもあった「5棟以上の戸建て、10室以上のマンションの賃貸」「10件以上の土地の賃貸」という事業規模をベースに考えてもよいだろう。

富裕層が所得を増やすには「節税」が不可欠

ある一定規模まで資産を構築したあと、さらに資産を増やすには「節税」について考えることが必要不可欠になる。合法的に節税をするための手段として、プライベートカンパニーの設立を検討したい。(提供:百計オンライン

【オススメ記事 百計オンライン】
後継者問題解消、3つのパターン
事業承継税制の活用で後継者へのバトンタッチをスムーズに
相続税対策に都心の不動産が適している理由とは
長寿企業に見る、後継者育成と「番頭」の重要性
中小企業の事業譲渡としての秘策・従業員のMBOについて