即席麺の発明者は、中国でも日清食品の創業者、安藤百福氏と認められている。1970年代以降、日本は世界市場に打って出た。そして2016年には、全世界の消費量は、975億食に上っている。世界中で1日当り2億7000万食消費され、一人当たりでは年間13.3食だ。寒冷地から熱帯諸国まで、老若男女を問わず熱愛される“世界的”食品となった。

世界消費量ランキングトップ10のうち、8カ国がアジア諸国である。一人当たり消費量では韓国が76.1食と断トツだが、トータル消費量はではもちろん中国がトップである。経済サイト「中商情報網」が、「2018年中国方便面行業前景報告」(中商産業院)の内容を報じた。中国即席麺業界の現状と課題を見てみよう。

市場は縮小傾向だが見通しは強気

中国経済,飲食業界,インスタントラーメン
(画像=PIXTA)

中国即席麺市場は、1990年代から18年連続で拡大し、2013年のピークには462億2000万食となった。毎秒1465袋、開封された計算だ。

しかしそれ以降は縮小気味である。世界ラーメン協会(本部大阪)のデータによれば、2013~2016年までの4年間に、中国内地と香港を合わせ、80億食減少した。375億6000万食になったのである。

しかし報告は、2021年にかけて緩やかな成長が可能としている。毎年2.9%ペースで成長し、2021年の市場規模は937億元になると強気な見通しだ。これはなぜだろうか。

2016年、即席麺のうち単価の高いカップ麺は金額で47.2%、数量では34.4%を占めている。この袋麺より付加価値の高いカップ麺の平均3.6%成長を見込んでいるためである。

台湾系2トップ(康師傅、統一)に集中

市場シェアは大手に集中しつつある。康師傅、統一、華龍、白象、三太子、錦豊などの上位社である。中でも康師傅と統一の台湾系の2社で、全体の60%を占めている。康師傅は顧客のブランドに対する忠誠心も高く、76%の人に支持されている。中国出張の経験者なら、一度は目にしているはずだ。中国の即席麺を代表するブランドである。これに唯一対抗しているが統一だ。この2社の商品ラインナップは似通っている。

そして競うように絶えず新製品を発表している。その結果、高級品のシェアが上昇した。2017年の第三四半期のデータに限れば、数量が3.3%増だったのに対し、売上高は6.9%の増加だった。単価の上昇は明らかだ。これこそ強気見通しの根拠である。

続いて大手2社の戦略を見てみよう。

高級、健康路線で、フードデリバリーに対抗

康師傅…2016年に開始した“少添加、濃厚、美味、健康、栄養”の路線を継続する。2017年は豚骨系が大きく伸びた。さらに新発売の“藤椒豚骨”で販売増を目指す。また新概念の“DIY麺”も発売する。濃縮ながら自然な風味商品の選択肢を広げた。これは袋麺の新標準としてネット通販でも販売する。

統 一…高級ブランドの“湯達人”が売り上げの77.3%を占めている。韓式辣牛肉スープなど新しい風味を開発するとともに、宇宙開発、生物化学など、最先端の乾燥技術を用いた新麺を開発する。味覚だけでなく、嗅覚や視覚を意識した具材を使い、ホワイトカラー層にアピールする。

いずれも高級品と健康志向を打ち出し、差別化を図る方針だ。これにはもう一つの外部環境も考えられる。それはフードデリバリーサービスの急発展である。今年の春節では、配達員の不足が懸念されるほど伸びている。家にいながらにして 調理したてのプロの料理を食すことが可能となった。同業他社だけではなく、この新たな勢力とも差別化が必要だ。2021年の目標の達成は、容易なものとは思えない。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)