騰訊(テンセント)の勢いがとどまるところを知らない。カルフール中国、万達集団に続き「歩歩高」「海澜之家」にも出資することが分かった。オフライン小売業に出資をしまくっている。昨年11月に台湾系大手スーパー「大潤発」に出資して話題をさらった阿里巴巴を、完全に凌駕する勢いだ。それに伴って騰訊の投資部門が“神秘的”として脚光を浴びている。「今日頭条」「網易」をはじめ、多くのネットメディアが報道している。今回の投資、提携とともに分析していこう(1元=17.32日本円)。

歩歩高と海澜之家

中後経済,小売業界,IT業界
(画像=PIXTA)※写真はイメージです。

2月上旬、騰訊と歩歩高は“戦略提携枠組み協議”に署名した。歩歩高は、少し説明するのに困る企業だ。VIVO OPPOのスマホを始め電子産品の“小覇王”イメージがある。それよりもここで大切なことは、592店のさまざまな実体店舗を持ち、中国の上場“九大小売商”に入りしていることだ。2017年の売上は370億元である。両者は長期戦略を立て、スマート小売業、データ化運営体系、を構築するとしている。

同じく2月上旬、騰訊と海澜之家は同じような文書を取り交わしている。海澜之家とは毛紡績工場からスタートし、メンズ衣料の生産、メンズショップの展開へと発展した、川上から川下まで垂直統合型の総合繊維企業である。メンズショップ“海澜之家”は、昨年9月、阿里巴巴と包括提携を結んでいる。これは大きな効果を発揮した。11月11日の独身の日セールでは、店舗在庫を利用するO2O融合の取組みにより、メンズ衣料部門でユニクロを交わし、売上1位となっている。それを袖にして、騰訊-京東(ネット通販2位)の出資を受け入れるというのだ。只事とは思われない。

ここまでのことをやる騰訊の投資部門とは、一体どのようなところだろうか。

最も神秘的な部門

投資を主導している部門は、騰訊の中でも“最神秘部門”と称されている。騰訊は2011年に「産業共贏基金」を設立した。以降、投資部門の規模は、不断に拡大を続けている。20人に満たない人数で始まり、今では100人程度とみられている。人材はゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーなど著名な機関から集めている。北京大、清華大、海外有名大学の卒業生ばかりである。

投資部門を率いるのは、劉熾平騰訊総裁である。創業者兼CEOの馬化騰より1歳年下の45歳。2005年に首席戦略投資官として騰訊に入社した。以前はゴールドマンサックス、アジア投資銀行の執行役員だった。入社1年後、馬化騰は彼を総裁に抜擢し、戦略、投資、買収工作を任せた。京東(JD)、滴滴出行、捜狐など主な投資は、すべて彼の手になるものだ。2011年、劉総裁はゴールドマンサックスの時代の同僚、投資銀行経験の長いジェームス・ミッチェルを招じ入れ、首席戦略投資官に据えた。ここから投資部門の躍進が始まる。

投資案件数は阿里巴巴を60%上回る

2010年、騰訊の年間投資金額は4億元に満たなかった。それが2011年以降の6年間で1000億元を超えた。投資を受けた企業は600社に上る。そのスピードは増し、2017年だけで120社に及んでいる。これは阿里巴巴より60%も多いのである。

劉熾平は、馬化騰を長者番付トップに押し上げた、最大の功臣の一人だ。彼が加入する前の騰訊株は、1香港ドル前後をうろうろしていた。それが今や450香港ドルを超えている。騰訊神秘の投資部門とは、超エリート集団だった。さらに騰訊の投資部門は、被投資企業からの評価が高いのも特徴である。とにかく騰訊の2018年1~2月の投資行動には目を見張るものがあった。

追い詰められているのは、騰訊か阿里巴巴か?今年の2強対決は見どころ満載である。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)