香港の民間調査機関、艾媒諮詢は2月上旬、「2017-2018中国跨境電商市場研究報告」を発表した。ニュースサイト「今日頭条」「環球網」など各メディアは、こぞって分析記事を掲載している。中国の消費者は今、どのような海外商品を欲しているのだろうか(1元=17.33円)。

毎年20%の伸び

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(画像=aslysun / Shutterstock.com)

2017年11月11日、独身の日セール当日、広州税関にはの越境Eコマースのオンライン通関申請が、255.4万件も集中した。これは昨年の3倍、インボイス価格は3.8倍だった。主な商品は、化粧品、スキンケア用品、粉ミルク、紙おむつ、食品などだった。中国消費者の海外商品熱は高まるばかりである。

報告によると2017年の越境Eコマースの交易規模(含むB2B)7兆6000億元(前年比120.6%)に達した。2018年は9兆元(117.6%)の見通しだ。

シェアは、1位、網易考垃海購25.8%、2位、天猫国際(アリババ系)21.9%、3位、京東全球購13.3%、4位、唯品国際12.9%となっていて、上位4社で4分の3近くを占めた。半年前に比べ、3位と4位が入れ替わっている。

顧客のサイトを選択する際に重視する点は、正品(本物)保障54.6%、サイトの知名度47.4%、ラインアップの充実46.6%、精選された商品34.3%だった。

同じ2月上旬に発表されたマッキンゼーの調査では、昨今の中国消費者は、健康的な住環境と生活に対する欲求が強い。また海外ブランドに対する知識と認識は、詳細を極めている。これらが海外商品を希求する原動力となっている。また地域的な関心は、韓国、オーストラリア、日本から欧州へ向かっていると分析している。

京東(JD)の戦略

ネット通販2位、越境Eコマース3位の京東は、こうした背景から欧州戦略を強化する予定だ。京東集団CEOの劉強東氏は、2月上旬、英国フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューに応え、早ければ2019年中に欧州市場へ進出し、アマゾンに挑戦すると述べた。最初の足がかりはフランスとし、後に英国、ドイツへも進出するという。

まず2年間、毎年10億ユーロを投資し、フランスに倉庫と物流システムを構築する。これは欧州商品の買付センターともなる。そして欧州商品を中国へ輸出することにより、負債処理をも合わせて行う計画だ。

また2019年には、英国に研究センターを設立する。これは英国の人材と教育が、世界の超一流であるからだ。AI領域の人材を確保する目的もある。2017年、京東のネット通販における英国商品の売上は、30~40億ポンドだった。これを2020年には100億ポンド以上に押し上げたい、としている。

カルフールの戦略

カルフールは近日“2022年計画”を発表した。世界で273店舗を閉店し、2400人をリストラする内容だ。一方で28億ユーロを投資し、高度に数値化されたネット通販プラットフォームを構築する。

中国では、2015年以来、自前のネット通販を構築してきたが、この路線を強化する。上海店を本部として、生鮮を含む2000アイテムをO2Oの宅配システムを構築する。その一方で、全世界一体化購買という概念のもとに、欧州商品の導入を図り、中国での販売を強化する。当然、越境Eコマースにも力を入れる。

また1月下旬カルフール中国は、騰訊(テンセント)と戦略提携協議中であることが伝えられた。騰訊のもつ強力なソーシャルメディアと連携できれば、状況はガラリと変わってくる。また騰訊は京東とも提携関係にある。

日本商品は話題に上らず

こうして、欧州商品の新しい越境Eコマースのルートが次々と開かれていく中、日本商品の新しいルート開拓は不調といえるだろう。近日、ライオンやサントリーが、ネット通販最大手アリババに出店するというニュースが伝えられた。またアリババや京東へ、日本の中小企業の出店をサポートする会社もあり、それなりに繁盛している模様だ。しかしこれは、誰でも考え付くことである。

一方で中国に進出している日本の小売業が、メイドインジャパン商品の販売に貢献しているという話はあまり聞かない。日本米などが販売されると、いちいちニュースとなる。これによって、逆に希少なケースであることを証明している。

一帯一路構想により、輸送コストの下がった欧州商品の攻勢は今後も続く。訪日観光客の爆買いはいつまでも続かない。日本はもう少し知恵を絞るべきだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)