中商産業研究院の統計によると、2017年に全国の消費者協会が受理したクレームは、72万7000件だった。解決したのは55万2000件、解決率は76%だった。

この72万7000件で消費者が被った経済的損失は、5億1639万元に上った。そのうち経営者による詐欺行為が認定され、賠償事例に発展したのは4898件、賠償金は825万元だった。また1年間の相談受理数は、延べ121万人だった。クレーム受理件数は、2013年以来4年ぶりに70万件を超えた。しかしこの間、解決率は毎年下降している。経済サイト「中商情報網」が伝えた。中国の消費者クレーム事情とはどのようなものだろうか(1元=17.22円)。

シェアサイクルの保証金返還

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(画像=PIXTA)

シェアサイクル(共享単車)は、スマホとモバイル決済の普及によって、急速に発展した。2017年7月、全国でシェアサイクルの運営企業は70社、投入された自転車は1600万台、登録者数は1億3000万人、利用者累計は延べ15億人だった。競争は加熱し、すでに悟空単車、3Vbike、町町単車などの会社が市場から退出している。ここで登録時に収めた保証金の返還が問題となっている。

2017年の第三四半期以来、この種の訴えが全国各地で激増している。現在訴えられているのは、酷騎、小鳴単車、小藍単車等、メディアで経営危機が伝えられた会社の経営者たちである。保証金の返還を要求しても、1週間たっても1カ月たっても音沙汰がないという内容である。

特徴的なことは、第一に訴えが多いことである。酷騎単車一社だけで100万件にも上る。第二に金額そのものは小さいことだ。1705円~5150円(99元~299元)というケースがほとんどだ。第三に、これを処理するために集団訴訟となっていることである。

ネット通販と高齢者の問題

●ネット通販 前年比78%増

ネット通販やテレビ通販も劇的に発展している。ネット通販に特有の事情として、直観で衝動的に買ってしまうことがある。これは多くの人が認め、受け入れているはずだ。それにもかかわらず消費者クレームは非常に多い。2017年の受理件数は6万9397件で、前年比78.25%も伸びている。サービスに対するクレームが59.3%と最も多かった。ネット通販側の問題は、第一に、商品の品質と真贋、第二に、個人データ流出、第三に、オンライン決済の安全が挙がる。

●高齢者 狙われる高齢者も増加

中国では高齢化スピードもまた急である。独居の高齢者も増加の一途だ。高齢者を狙う悪徳商人は、認知能力と身体能力の下降につけ込んでくる。高齢者の発する消費者クレームは、第一に、ウソまたは偽の宣伝というケースが突出して多い。口頭で承諾したことを証明するのは難しい。例えば、高額な漢方薬材を、少数民族の名を冠したり、有名な薬局「同仁堂」を語ったりして売り付けるケースだ。第二に、正規のチャンネルではないことである。薬に対する品質保証は全くない。連絡もつかない。第三に、単独ではなく組織犯罪という点である。

その他のクレームとまとめ

その他としては、以下のようなものがある。

・ 主にサービス産業経営者の違法行為である。無料体験や優待サービスが看板倒れだったり、プリペイドカードが解約できないなど。
・ 自動車の営業、車検、手続き代行サービスなど車関連クレームが、5万4536件と高水準だった。
・ サービス産業における。サービス水準の低さ、とくに不動産仲介はクレームが多かった。
・ 建材、内装関係のクレーム。中国では新築マンションでも内装は自ら行うため、重要な産業である。不正行為も多い。
・ 教育や訓練サービスに対する不満。
・ 郵政サービスに対する不満。

などを挙げている。これらから受ける印象は、中国もごく普通になってきたな、ということに尽きる。かつて中国でサービスを受けようとすればは、行政サービスに限らず、商店においてさえ、大声を上げてアピールをするか、コネを使うかしかなかった。上記のクレームは、シェアサイクルの広範さを除けば、どこの国と地域にもありがちなケースばかりである。消費者クレームは、中国社会の成熟度を測る指標といってもよいだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)