値動きの荒い展開が繰り広げられている株式市場だが、世界経済全体は堅調さが維持されるとの見方が大勢を占める。景気動向に大きく左右される自動車販売は、2017年に業界の勢力図に大きな変化が生じた。これまでフォルクスワーゲンと世界販売台数のトップの座をかけて競ってきたトヨタ自動車 <7203> が3位に後退。代わって、日産自動車 <7201> ・三菱自動車 <7211> とルノー連合がフォルクスワーゲンとトヨタの間に割って入った。

トップ3はいずれも前年比増で1000万台超え

トヨタ自動車
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2017年の世界販売の実績によると、首位のフォルクスワーゲンは1074万1500台で2016年に続き首位をキープ。日産・三菱・ルノー連合が1060万8366台で2位に躍進した。3位に転落したトヨタの実績(子会社のダイハツ工業と日野自動車 <7205> を含む)は、1046万6451台だった。

3者とも前年販売実績を上回り、世界経済の好調さを印象付けた。日産・三菱・ルノー連合にとっては、三菱が加わってから2017年が初めての暦年で、生産台数で121万台(2017年実績)を誇る三菱が新たな仲間入りを果たしたことが、トップ3の勢力図を変える要因の1つともなった。

営業利益率はトヨタに軍配

販売台数でしのぎを削るトップ3だが、売り上げアップのためには、販売促進費などインセンティブも必然的にかさみ、経費として負担がのしかかる。販売台数では他社を引き離したとしても、企業として効率よく稼いでいるかを示す収益性には、投資家からの厳しい視線が向けられる。その収益性を示す営業利益率では、トップ3の構造が販売台数とは違った様相を呈する。

販売台数で首位のフォルクスワーゲンの2017年第3四半期決算(1月-9月)によると、売上高は1708億6400万ユーロ(約22兆7400億円)、営業利益は106億3600万ユーロ(約1兆4200億円)だった。この結果、営業利益率は6.2%とはじき出された。

2位に続いた連合のうち、ルノーの2017年上半期の決算によると、売上高は295億3700万ユーロ(約3兆9300億円)、営業利益は18億2000万ユーロ(約2420億円)。営業利益率は、比較対象となる時期は違うものの、フォルクスワーゲンと同じ6.2%だった。

連合を構成する日系メーカーのうち日産自動車の営業利益率は、2018年3月期第3四半期連結決算(売上高8兆5279億9200万円、営業利益3642億3500万円)から、4.3%という結果になった。三菱自動車は、2018年3月期第3四半期連結決算では、売上高は1兆5180億円8900万円、営業利益が645億5200万円となり、日産自動車と同じ4.3%の営業利益率だった。

世界販売台数3位のトヨタ自動車の2018年3月期第3四半期決算(売上高21兆7969億7400万円、営業利益1兆7701億8600万円)から算出される営業利益率は8.1%を記録。この結果、販売台数では他の2者に差をつけられたトヨタだったが、営業利益率は他社を引き離して、稼ぐ力を見せつけた。

気がかりなのが、フォルクスワーゲンの営業利益率は前年同期比で0.8%増、ルノーは微増ながら0.1%アップと、欧州メーカーが効率よく稼ぐ力を強化している。一方、日産自動車は、資格のない検査員が完成車の検査を不正に実施していた問題などの影響から営業利益が大幅に減少。18年3月期第3四半期の営業利益は、前年同期比で27.6%減と大幅に落ち込んだ結果、前年同期には6%だった営業利益率が4%台へと低下してしまった。

三菱自動車も、2016年に発覚した燃費不正問題の影響が今なお色濃く残る。2017年3月期第3四半期の決算では、この問題によって営業赤字に陥り、日産自動車の傘下に入って窮地からの脱出を図った。自動車業界の再編にも繋がったこの不正問題発覚の以前は、営業利益率が6%を超えていた時期もあった。日産・三菱両社が、不祥事の対応に追われている間に、欧州メーカーに営業利益率で差をつけられた格好となった。

好調な世界経済を受け、販売台数は各社とも右肩上がりが続く。しかし、稼ぐ力に焦点を当てると、販売台数では3位に転落したトヨタが他のメーカーを引き離している別の構造が浮かび上がった。自動運転など、自動車メーカーを取り巻く環境は変化が著しく、異業種からの参入やベンチャー企業の台頭など、業界のトップグループを走るメーカーといえども、厳しい競争が待ち受ける。

来る次世代車の開発競争で優位に立つためにも、効率よく収益を上げ、開発費用などの投資を充実させることができるか。販売台数だけにとどまらない自動車産業の戦国時代は今後も続いていきそうだ。(ZUU online 編集部)