2月に入り米国の株式市場はじめ、国内株式市場も大きく変動している。日経平均株価はバブル崩壊後の高値を更新するなどマーケットの地合いは良く、株式市場は最近、値下がりする機会も少なかった。日経平均株価が1000円以上も下落する状況に、不安を感じた人も多くいるのではないだろうか。
投資資金が過大ではないか
株式投資をはじめ様々な投資商品では価格が変動するため、価格が上昇して利益が発生することもあれば、価格が値下がりして損失が発生することもある。日経平均株価が2万4000円前後という高値水準にあることを考慮すれば、1000円程度の下落はわずか4%程度でしかない。
過去の株式市場の動向を鑑みれば、暴落と呼んでいいのかという下落幅でしかない。それにも関わらず、マーケットの動向や自分の投資状況に不安を感じてしまうという場合は、自分がとれる以上に過大なリスクをとっている可能性があるので、まずはリスクが過大かを見極めなければならない。
投資がうまくいけば、資産を2倍、3倍、10倍という風に増やせる可能性がある一方で、損失が発生した場合には、資産を2分の1、3分の1という風に減らしてしまう可能性がある。時には、資産の大半を失ってしまう可能性もある。
資産の大半が損失になってしまった場合、「なぜ損失がこんなに増えてしまったのか?」などと精神的に苦しい状況に追い込まれてしまうことは当然だ。会社員として働いていて定期的な収入があったとしても、資産の大半を失ってしまえば精神的苦痛も大きく、当面の生活に困ることもあるかもしれない。
そうした事態を避けるために、投資に回す資金はあくまでも生活に支障のない範囲、つまり余裕資金で始めなければならない。余裕資金がいくらかになるのかは人それぞれで、現在あるお金を下記の(1)から(3)に分けて考える。
(1)生活資金(生活費の3〜4か月分程度) (2)予備資金(教育費や旅行など使い道が決まっているお金) (3)余裕資金(使い道が全く決まっていないお金)
(3)の余裕資金が投資金額に回せるお金になるわけだが、自分が投資に回したお金が余裕資金の範囲内か確認してみてほしい。ただ、ここでも注意しなければならないことがある。余裕資金だからと言ってすべてを一度に使わないことだ。
余裕資金が多少でも残っていれば、投資で損失が発生した時に損失を減らすための行動をとることができる。株価が下落するなどして、買った価格よりも値下がりして損失が発生した時にとれる行動としては、(1)損切り、(2)ナンピン、(3)塩漬けの3つだ。
資金別に対処できる行動は異なる
余裕資金の中から、まず投資にどれくらいの金額を回せるのかと言えば、余裕資金の3分の1から半分程度までだろう。残りの半分程度は残しておくことで、不測の事態に行動を起こせる。投資資金に余裕がある場合と余裕がない場合に分けて考えてみたい。
投資資金に余裕がない場合
投資資金を使い果たしてしまった場合、投資資金を確保しなければ新たに投資を始めることはできない。考えられる対処法としては次の2つがある。
・損切り(ロスカット)を行って投資資金を作る ・別の収入を得て新たに投資資金を貯める
損切りとは、損失が発生している金融商品を売って損失を確定させる一方で、投資資金を回収する方法だ。新たに投資資金を作る必要はなく、損失という精神的苦痛からも開放される。最初は損切りに躊躇するかもしれないが、損切りも勉強と割り切ることが時には必要だろう。
一方、会社員などで定期的に収入がある場合には、新たに投資資金、いわゆる種銭を貯めることもできる。ただし、種銭を作っている最中に、さらに価格が下落すれば損失が膨らむ可能性があることは肝に銘じておかなければならない。
投資資金に余裕がある場合
余裕資金がまだ残っていて、投資に回せるお金がある場合には、損失への対処法は次の3つある。
・損切りを行って心機一転やり直す ・残っている余裕資金を追加して、同じ金融商品を追加購入する ・残っている余裕資金を追加して別の金融商品を購入する一方で、損失の金融商品をそのまま放置、いわゆる塩漬けにする
損切りは投資資金に余裕がない場合と同じだが、投資資金に余裕があるので、回収した投資資金と合わせて仕切り直して新たに投資を行うことができるようになる。
残っている資金を追加する場合、同じ商品を追加購入(ナンピン)する方法と、別の商品を購入する方法がある。ナンピンする場合は、安い価格で追加購入するわけだから、前回の購入分と合わせることで購入価格を引き下げることができる。たとえば、前回100円で買い、今回50円で買ったら平均価格は75円、という風にだ。ナンピンを行えば、価格が下がるので、値上がりした時に損失から早く脱却できる可能性がある。ただし、総量は増えるため、さらに損失が膨らむ可能性がある点には注意が必要だ。
最後に、追加した資金で別の金融商品を購入して、損失がある金融商品を塩漬けにしてしまう方法もある。塩漬けにすれば投資資金が拘束されてしまうため、投資額が少ない場合はできれば損切りを行った方がよいだろう。損失が発生している状況下では、新たに購入しても損失が発生する可能性は否めないからだ。
損失を抱えている人の中には、「利益があったのに売り時を逃して損失に」という人が意外に多くいる。「もっと上がるかも」と欲を出したことが原因だ。人間誰しもお金は増やしたい。ただし、欲張ると売り時を見誤ってしまいがちだ。慣れるまでは事前に売るためのルールを決めるなどして、損失が発生するリスクをできるだけ低減した方がよいだろう。
横山利香(よこやまりか) 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。ファイナンシャル・プランナー。相続士。WAFP関東理事。「会社四季報オンライン」や「All About株式戦略マル秘レポート」での連載や、ヤフーファイナンスの「株価予想」でもマーケットコメントを執筆する等、株式投資や不動産投資といった投資や資産運用をテーマに執筆、メルマガ発行、講演活動、株塾を行う。公式サイト「横山利香の資産運用コンシェルジュ」