中国保険監督管理委員会(保監会)のデータによると、財産保険(損害保険)業の保険料収入は、1兆541億元、前年比▲13.8%だった。初の1兆元突破である。

2010年は4027億元だったので、8年で2.6倍とになり、右肩上がりの成長を続けている。それに伴い消費者クレームも増え、保監会は非常に忙しい。経済サイト「中商情報網」「界面」が損保の問題を取り上げた。中国の損保業界とはどのような世界だろうか(1元=16.73円)。

クレームは生保と損保、ほぼ半分

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(画像=PIXTA)

2017年、保監会及び各地の保監局が受けた保険会社に対する消費者クレームは9万3111件だった。そのうち違法という強い訴えは2109件で、損保366件(17.35%)生保1743件(82.65%)だった。保険会社と紛糾しているという訴えは9万1002件、損保4万8663件(53.47%)生保(46.53%)だった。

中国人にとって、生保は死亡保険より貯蓄商品という意識が強く、分配金の不満などが訴訟にまで発展しやすい。一方損保の方は、やはり事故現場で揉めることが多いようだ。損保クレームのうち4万2068件(86.47%)が自動車関連である。

主な原因は責任の判定、賠償までの時間の長さや、金額の不満などである。自動車以外では、農業保険が802件、▲40.70%、信用保証保険が272件、▲183.33%と急伸している。

損保会社へ処分

保監会は2月中旬、損害保険各社に対する調査結果を公表した。84社の損保会社、16万1928件にのぼる商品を調査し、1万667件を販売禁止、8495件を問題商品として指摘した。また各保険会社の日常管理体制も厳しくチェックした。その結果19社、1672件の商品を処分した。

19社には、建信財険、富徳財険、日本財険、信達財険、安華財険、平安財険、誠泰財険、などの社名が挙がっている。3番目の日本財険とは、損害保険ジャパン日本興亜の中国子会社、日本財産保険(中国)有限公司のことである。

保監会は19社に問題商品の販売禁止を命じた。その中でも悪質だった10社に対しては、3カ月間の新規保険商品の発売と保険金徴収も禁止した。

商品の命名が“不規則”、契約内容がはっきりしない、保険の原理または保険法に違反している、免除、減免の規定を明示していない、約款の引用を意識的に歪曲する等々が問題となっている。

保監会は、管理主体としての責任の欠如、開発設計時の遵法意識の希薄、不健全な運用管理制度、新商品開発過程の不備、保険商品の保障効能に対する理解不足などを原因として挙げている。

保監会、派閥抗争まで指摘

保監会はさらに、保険会社内部のガバナンスまで問題として指摘している。バックに控える株主同士の勢力争いが激烈で、会社の正常運営に影響を与えているという。その結果、一部の会社では、合法的な経営を軽視するようになったという。とにかく儲かる商品を開発しなければ、脱落してしまうのだ。

また「界面」記者の得たデータでは、農業保険の現場検査において、5万6000件の賠償案を検討したところ、4万3000件で問題が見つかった。77%の高率だった。これでは利益優先と捉えられても仕方ない。

中国の保険業界には、強烈なエネルギーが渦巻いている。それが右肩上がりの保険料収入増を支えていた。

最後に保監会は、四つの“堅持”を強調した。次の4つである。1 商品管理とリスク管理の強化。2 乱を収め治安を保つ。3 改革の意志を持つ。4 貧困地区を重視、貧困撲滅の戦いへの参加。

保険業界は、モバイル決済の発展に押され、元気のない銀行業界とは違い、実に中国的活気にあふれた業界だった。乱を収め、“治安維持”を徹底するには、もう少し時間がかかりそうである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)