企業のランキングと言えば、時価総額や売上高などを基準としたものをイメージするかもしれません。しかし、今回ご紹介する「スマート・カンパニー50」は、革新的なテクノロジーやビジネスモデルを持つ企業を雑誌『MITテクノロジーレビュー』が選んだものです。未来を切り拓く最先端の企業や業界にはどのような傾向があるのでしょうか。
未来に向かって果敢にチャレンジしている企業がランクイン
MITテクノロジーレビューは、MIT(マサチューセッツ工科大学)の所有会社が発行している、科学・テクノロジー系の雑誌です。日本語版では紙の雑誌は発行されておらず、Webメディアで内容を読むことができます。
2017年にトップ10に選ばれた企業は、以下の通りです。
社名 | 本社所在国 | 主な事業内容 |
---|---|---|
エヌビディア(NVIDIA) | アメリカ | 半導体の製造開発 |
スペースX(Space X) | アメリカ | ロケット開発 |
アマゾン(Amazon) | アメリカ | EC、モバイルコンピューティングなど |
トゥウェンティー・スリー・アンド・ミー(23andMe) | アメリカ | 遺伝子検査の実施とレポート販売 |
アルファベット(Alphabet) | アメリカ | 検索エンジン、クラウドコンピューティングなど |
アイフライテック(iFlytek) | 中国 | 音声認識システムの開発 |
カイト・ファーマ(Kite Pharma) | アメリカ | バイオ医薬品の研究開発 |
テンセント(Tencent) | 中国 | メッセージアプリ、オンラインゲーム開発など |
リジェネロン(Regeneron) | アメリカ | バイオ医薬品の研究開発 |
スパーク・セラピューティクス (Spark Therapeutics) |
アメリカ | バイオ医薬品の研究開発 |
ランキングを見てみると、トップ10に入った企業の本社所在国はアメリカ中国だけです。かつて世界の工場と言われた中国も、今や世界のイノベーションをリードする地位に立っていることが浮き彫りになっています。
トップ10入りの企業の業種を見てみると、大きく分けて「AI・ビッグデータ・IoT関連分野」、そして「遺伝子や難病治療に関連するバイオ医薬品の研究開発分野」の2種類があります。人間を超えるテクノロジーと、人間を知るテクノロジーが「最先端」であるというのは興味深いところです。
エヌビディアが1位に選ばれた理由
ランキングの1位はエヌビディアです。アルファベットやアマゾンなどの世界的な大企業を押さえて首位にたっています。時価総額はアマゾンの1/4ほど(2018年1月時点)です。
エヌビディアはパソコンのグラフィックチップのトップメーカーですが、近年はさらにAI関連事業向けのチップの開発・製造に力を入れています。インターネット関連事業、大手自動車メーカーなどがこぞってエヌビディアのチップを採用しており、AI・ビッグデータ・IoT関連分野のイノベーションはエヌビディアに依存していると言っても過言ではありません。さまざまな業界における今後のイノベーションを主導する存在となりつつあることが、1位評価の決め手となったようです。
エヌビディアも巨大企業ではありますが、アルファベットやアマゾンなどには時価総額が劣ります。しかし、最先端テクノロジーの心臓部分を握る存在として、MITテクノロジーレビューから高い評価を受けています。この点を踏まえると、企業規模よりも革新的なテクノロジーとビジョン、アイデアが評価対象になっていることが分かるのではないでしょうか。
日本企業がMITにノミネートされなかった理由は国際競争力の低下が原因?
日本企業は2016年度版には17位にトヨタ自動車がノミネートされていたものの、今年は同ランキングのトップ10どころかトップ50にもノミネートされていませんでした。
確かに、日本はここ数年でGDPが中国に抜かれ、以前と比較すると国際競争力が低下している可能性があります。しかし、そのことが今回のランキングにノミネートされていない原因にはなりません。トップ50の中には、アルゼンチンやナイジェリア、ケニアなど日本よりGDPの低い国の企業も含まれており、本来は日本企業が何社か含まれていてもよいはずです。それにも関わらずノミネートがない原因は、あくまで日本企業がイノベーティブなテクノロジーや革新的なビジネスモデル、インパクトのあるビジョンの項目で、MITテクノロジーレビューの琴線に触れるものを提示できていないことにあるのかもしれません。
実は、MITテクノロジーレビュー以外にも、日本のイノベーション分野の力が弱まっている可能性が示唆されているレポートがあります。たとえば、2017年9月26日に世界経済フォーラム(WEF)にて発表された「Global Competitiveness Report 2017-2018」が挙げられます。
同レポートでは、日本はイノベーションの項目で8位を獲得しています。一見すれば、高い順位だと感じるかもしれません。しかし、過去からの順位の推移を見ると、一概にそうとは言いい切れないのです。実は2006年から2007年の間、日本はこの項目では1位を獲得していました。しかし、その翌年には順位が4位に交代し、それからの数年間はずっと4位と5位を行き来していました。それが、昨年のレポートではとうとう8位にまで後退するという事態に陥りました。今年も昨年と同順位であることを考えると、国際競争に勝ち続けているとは言い難いのです。
とはいえ、日本にはイノベーションを起こすべく切磋琢磨をしている企業がたくさんあります。まだ、研究開発が行われている段階で、今後新しい発表が行われる可能性も十分にあります。日本の国際競争力が本当に低下しつつあると断言するのは時期尚早かもしれません。
MITの有望な業種を先取りし、未来を予測しよう
MITテクノロジーレビューでは、AIが今後数年間の経済成長を推進すると考えているようです。また、DNA分析を活用して遺伝子療法を開発する企業にも注目している様子がうかがえます。MITテクノロジーレビューの「スマート・カンパニー50」を見てみると、これからの時代に有望な業種を見て取ることができるでしょう。このような企業群を見て、今後どのような企業が成長していくのか、そしてどのような世の中が訪れるのかを考えてみてはいかがでしょうか。
また、有望な分野の事業を手がける企業への転職や起業を念頭に、インプットを始めるのもよいでしょう。未来を予測する力が身につくかもしれません。(提供:J.Score Style)
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