日銀による金融政策の影響で金利は歴史的な低水準が続き、銀行に預け入れをしても利息があまり増えない状況が続いています。

しかし、富裕層は借入れをうまく利用して自分の事業や個人金融資産などにレバレッジをかけ、高い成果を上げることに成功しています。なぜ彼らは資産運用にレバレッジをかけようとするのでしょうか。

お金=信用 借入れの可能性=信用の指標

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(写真=Nejron Photo/shutterstock.com)

私たちがいつも使っているお金は国に対する信用を基盤としています。1億円が1億円分のモノと交換できるのは、市場が「円」という通貨に対してそれだけの信用を置いているからだと言えます。

残念ながら、通貨を勝手に作ってお金の代わりに利用しようとしても、信用してくれる人はいないでしょう。すなわち、信用のないところに通貨は成立しないということです。

かつて金本位制が採用されていた時代は、「金と交換できる」ということが通貨の存在意義を担保していました。しかし、流通する通貨量と金の量が見合わなかったことで、1970年代に金本位制は廃止され、各国の「信用」を基盤とする変動相場制がスタートしました。

お金は国レベルだけではなく、個人レベルでも信用を表しています。例えば会社を経営するにしても、不動産を購入するにしても、多くの現金が必要になります。

しかし、一方で富裕層は何かを始める時には手元の現金を使わずに借入を行う場合もあります。これは、富裕層は節税や次世代への相続を考えて、現金を有価証券、保険、不動産、何らかの会員権などに変えて保有していることが多いためです。

特に、富裕層になればなるほど現金から評価価値が高く値崩れしにくい不動産などで保有しているようです。もし、現金が必要な場合に不動産を売却することにすれば、手続きに費用がかかり、すぐに売却できないかもしれません。そのため、借入をする方が効率的だと判断するのでしょう。

一般的に富裕層は高年収であり、現預金、有価証券、不動産、自社株式などを保有しているため、信用力があると判断されるため、金融機関でも金利が優遇されることが多いといわれています。

このように、国レベルでも個人レベルでも、お金を使えること借りられることはその信用力を表しているということになります。要は1億円借りられる国や個人には、「1億円貸しても返済してくれるだろう」という信用があるということになるのです。

富裕層とは「借入れ力」のある人たち

富裕層はお金を稼ぎ、収入がある人たちという印象があるかもしれません。しかし、実際、彼らは稼いだお金を元手にして上手に借入れを行い、現預金よりも利回りの高い投資によって資産を増やしています。彼らは借入れを悪だと思わずに、一つの手段として考えています。

例えば、手元に1億円持っている人が1,000万円を借入れすると、1億1,000万円での運用が可能になります。そのため、使えるお金が増えるので、目標達成までのスピードが速まることになります。加えて、運用利回りが返済額を上回っていれば、借入れを返済しても十分に利益を得ることができるようになるのです。

ただし、実際に借入れをすると利息分を上乗せして返済しなければなりません。また、投資元本が割れてしまえば、資産を削って返済する必要も出てきます。手元に現金がないため、新しい借入れをしようと借入れを繰り返してしまえば、いくら富裕層であったとしても借入限度額がオーバーしてしまう可能性もあります。

そのため、リスクをとったとしても、富裕層は借入れを行って運用をした方が効率的だと考えて、自分が働かなくてもお金が働いてくれるほうが「早い」と判断して借入れを行うのです。

2014年から2015年頃に話題になったトマ・ピケティの議論は、上記の具体例を「r>g」という式にまとめたものでした。労働賃金(g)の成長率より、資産の成長率(r)のほうが高い、という意味です。

具体的な、自分が働くよりお金に働いてもらった方が効率的であるということを直観的に理解しているからこそ、富裕層はうまく借入れをして資産形成を行っているといえるのです。

「労働」と「豊かさ」との間にある「信用」という概念

富裕層は「お金=信用」というお金の仕組みを熟知し、労働→信用→資金調達→投資→資産形成に成功しています。

これは、一生懸命働くことは正しいという倫理を経済面から否定しているわけではありません。一生懸命働けば、それだけ豊かな暮らしを手に入れることも可能でしょう。しかし、ただ闇雲に働いて賃金を上げることだけが豊かというわけでもありません。

「働く」と「豊かさ」との間にある「信用」という概念を理解することが豊かになるための1つの考え方といえるでしょう。(提供:J.Score Style

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