私たちは、普段の生活で一体どのくらい「時間」を意識できているでしょうか。

目に見えやすい「お金」が私たちにとって最も身近な資産であり、時間は資産だとみなされない傾向にあります。労働によって時間からお金を生み出すことはできます。しかし、過ぎた時間をお金で買い戻すことはできません。時間こそが、私たちにとって大事な資産だと言えるのではないでしょうか。

しかし、私たちはその事実を忘れてしまいがちになります。多忙な生活を送るうちにいつの間にか1年、2年、3年、10年……と、時間は足早に過ぎ去っていくのです。

今一度私たちは、時間こそが人生で大事な資産であると再認識する必要があるのかもしれません。2011年の米国のSF映画「TIME」はその考え方を私たちに伝えてくれています。

「TIME」における時間の考え方

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(写真=Andrew Stripes/Shutterstock.com)

映画「TIME」の世界では、富裕層の人が住むエリアと貧困層の人が住むエリアの間には「タイムゾーン」と言う境界線が引かれ、行き来が禁止されています。貧困層生まれの主人公ウィルが、タイムゾーンを超えて富裕層のエリアに行くところから展開していきます。

ある日、貧困層エリアのバーで富裕層の男が酔い潰れていました。ギャングたちが男の時間を盗むためバーを襲撃しますが、主人公のウィルは機転を利かし富裕層の男を助けました。しかし、富裕層の男は老いること、死ぬことのない人生に虚無感を感じ自殺願望を持っていて、ウィルに100年の命を授けた後に自殺します。

ウィルは、富裕層の男の時間を盗んだとタイムキーパー(時間の不正取引を取り締まる役)に嫌疑をかけられます。ウィルは、タイムゾーンを超え富裕層エリアへと逃亡し、ある行動に出ます。ウィルは元々、富裕層が時間を多く所持している世界の時間の偏在に対し憤りを感じていました。時間銀行を襲撃して、膨大な時間を盗み出し、時間を貧困層に分配するのです。

●「時間=命」
「TIME」の世界では、遺伝子操作により25歳以降は人間の老化が止まり歳をとりません。その代わりに体内時計が作動し、体内時計の数値=寿命が減少し始めます。数値が0(ゼロ)になること、それは死を意味します。

人々は体内時計の数値が0(ゼロ)にならないように毎日仕事をし、その仕事の報酬として時間を充電しています。しかし、仕事ができず体内時計を充電できなかった人に待ち受けているのは死です。「TIME」は「時間=命」の世界なのです。

●「時間=通貨」
もう1つ興味深い設定は「時間=通貨」となっている点です。コーヒー、パン、レストランの食事、バスやタクシーの運賃等すべての商品・サービスは所持している時間で購入します。

貧困層の人は時間をほとんど所持していません。まさに今日を「生きるため」に必死で働いて時間を稼ぎます。もし働かなければ時間が尽きタイムアウトで死んでしまう容赦のない運命が待ち受けています。 一方で、富裕層の人は数百年、数千年もの時間を所持しています。彼ら富裕層は「生きるため」に働く必要はありません。働かなくてもすでに所持している膨大な時間で生活できるのです。

気がつかない間に時間を浪費しているかもしれない

「TIME」のような世界が実際に訪れるのかどうかは分かりませんが、私たちの時間への向き合い方を上手く描いています。

ある人は他にやりたいことがあったとしても、生きるためにきつい重労働やしたくないこともしているかもしれません。生きるために慌ただしく働き、足早に時間を消費していることでしょう。 また、ある人は働く必要もなく、享楽的に自分の好きなことができる時間があります。しかし、時間は有り余っているものの、満たされない虚無感のある生活を送っているかもしれません。

「TIME」の世界のように富裕層・貧困層と分けなかったとしても、その暮らしぶりや考え方は現代の私たちに共通している部分があるとも言えるのではないでしょうか。気づかないうちに、時間を命やお金のように大切なものとして扱っていない可能性もあるでしょう。

「TIME」に秘められたメッセージ

「TIME」はアクションが多いSF映画として楽しめますが、見方を変えるとこのようにストーリーの奥に秘められた深いメッセージを感じ取ることができます。

時間を大切にすること、時間に対して自覚的になること、自分の幸せに繋がる時間の使い方を目指していくこと。「TIME」で描かれた未来の世界は、これらのことを現代の私たちに伝えてくれているのかもしれません。

時間の使い方について、振り返ってみませんか。(提供:J.Score Style

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