社長が会社の経営を決め、それが業績につながり、さらに株価に影響を与える。「なんとなく分かるが、社長で株を選んでしまっていいのだろうか?」そんな疑問を持つ投資家もいるだろう。相場の福の神の愛称で知られる藤本誠之氏の著書からその疑問を解消しよう。

(本記事は、藤本誠之氏の著書『難しいことは嫌いでズボラでも株で儲け続けるたった1つの方法』=SBクリエイティブ、2017年6月12日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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ズボラでも儲け続ける方法
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

なぜ、株を選ぶのに社長が重要なのか?

「株で儲け続けるためには、社長で銘柄(その会社の株)を選ぼう!」。

なぜそこまで言い切れるのか?それは、社長が株に与える影響がすごく大きいからです。

ただし、当てはまりやすい条件はもちろんあります。それは、会社の規模がそこまで大きくないこと。時価総額がまだ500億円に届かないくらいまでとなります。これくらいの規模ですと、社長の発言や行動や決定が、会社の経営や方向性に大きく影響するからです。

なお、時価総額とは、発行済み株式数に、その時点の株価(時価)をかけて算出したもの。会社の規模が大きくなるほど、時価総額も大きくなりがちです。

一方で、例えば東証1部上場で社員が何万人もいる会社は、社長だけの影響力でどうこうという次元ではなくなっています。もちろん、ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正さんやソフトバンクグループの孫正義さんは今でも影響力が大きいと思いますが、ごく一部の社長に限られます。

さらに社長の影響が出やすいのは、“創業オーナー社長”が経営する会社。社長のカラーがいっそう強く会社に浸透していることが多くなります。緻密な戦略やユニークな経営を社長が公言していれば、会社全体もそちらに舵が切られているはずです。

1つオススメしたいのは、東京証券取引所に上場して10年目くらいまでの会社に注目すること。なぜなら、こういった企業の多くが“創業オーナー社長”であるからです。

しかも、こういった会社には勢いがまだあり、伸びる可能性も高いです。社長が「これをやって儲けたい!」「この不便をなくして、便利を提供したい」という想いで会社を経営し、実際に社会に役立ったからこそ上場を達成しており、その影響がまだ残っているからです。

大きな夢を持ちつつコツコツ経営も怠らないのが大事

では、社長が会社の成長にどんな影響を与えそうなのかを、実際に見ていきましょう。

そこで、どんな社長がオススメで、どんな社長は避けたほうがいいのかを解説します。それが、社長の会社への影響をうまく説明できるからです。

オススメ社長の第一条件は、大きな夢を持ちつつも、小さな約束もコツコツとしっかり守ること。この2つが同時にできる社長でないといけません。これまで大勢の社長と会ってきた私が、自信を持って言いたいことです。

大きな夢を持っていないと、会社は成長しにくい=株価が伸びにくくなります。一方で、小さな約束をしっかり果たしていかないと、株主からの信頼を落として株が売られることで株価が下落しますし、社員に払える給料も怪しくなるので社員のモチベーションが下がり、それが経営悪化を招きます。

でも、この2つを兼ね備えた社長は、実はなかなかいません。あまりいないから、この条件で縛るだけで候補の会社が絞られることから、会社を選ぶのがラクになるというメリットもありますが。大きな夢を豪語するものの、綱渡りの経営をする社長はいます。また、夢を語らず毎年あまり変わらず淡々と働く社長もいますよね。

大きな夢を持ちつつも小さな約束を守る理想的な社長を見つけるには、これまでの社長の経験から推測できることもあります。例えば、一度夢を追って失敗したという挫折経験があるかどうか。夢を追ったことで夢を持つ条件はクリアしていそうですし、挫折があればコツコツ経営をする可能性も大きくなります。もし、社長にこれまで挫折がなかったら、調子が悪くなった時に立ち直ったり、手堅い経営に専念したりが可能かどうかわかりません。

また、社長の“想い”としては「自分の会社の株は安すぎる」と思っている社長がいいと思います。会社を内側から見た際に、株価に反映されていない価値があると感じたから、社長はそう思っているわけです。

また、「正当な評価を得られるように工夫しよう」とさらに頑張るはずですから、期待できます。

人様のお役に立つことを熱望する社長はやはり強い

また、社会貢献の意欲が強い社長は期待できる、といえるでしょう。一社、ご紹介します。

今、目の前にある問題を解決したい、と3年間も粘った社長がいます。球形のガスタンクの画期的な解体方法を考案したべステラ <1433> の吉野佳秀社長が、その人物です。

これまで球形のガスタンクは、解体するのにコストが高額になっていました。しかし吉野社長は、コストと環境への負荷を大幅にカットする解体法を発明するのです。吉野社長はこの解体法を、ガスタンクを3年間眺め続けてある日ひらめきました。同社のガスタンク解体は、今までのプラント解体の常識を覆す画期的な「リンゴ皮むき工法」というもの。

普通の解体業者がガスタンクを廃棄する場合、建築と逆の手順で足場を組み、溶接部を一つひとつ切断していく方法を採ります。

ところが、ベステラの「リンゴ皮むき工法」では足場は組まず、てっぺんの部分からまるでリンゴの皮をむくようにスルスルとガスタンクをらせん状に解体します。解体されて帯状になった部分は、自らの重さで地面に静かに落ちていきますので、下まで運搬する手間も省けるのです。非常に省エネで、しかもコストは大幅にカットできるわけです。

なお、ベステラはなぜこのようなことができたのか。それは、会社の規模がそこまで大きくないことも関係しています。今までの常識を覆す工法をすんなり実現できたのは、ベンチャー社長ならではのトップダウンの取り組みがあったからと言えそうです。

ニッチな市場を獲得していることも決め手になることがあります。ニッチというのは、これまで必要とされていながら、着手する企業が少なかったともいえます。つまりニッチな市場を狙う事業は、社会貢献度が高くなりやすいのです。

また、ニッチだからこそ、経営は安定します。一方で既に飽和状態の業種では、なかなか新規参入は難しいですね。実際に、上場した際の株価の伸びしろは、飽和状態の業種では小さくなりがちです。

ベステラが手掛けるガスタンクやプラントの解体を専門にした事業は、ニッチといえるでしょう。

また、取引先にどうお役に立つのかをトップセールスできる社長も、大きな強みを持っています。グレイステクノロジー <6541> の松村幸治社長は、「これできる?」と聞かれたことに対し、取引先の期待を大きく上回るかたちで応え続ける上、「さらにお役に立つには?」とプラスアルファの提案をし続けるトップセールスで、売り上げを伸ばしてきました。

せっかく株を投資するのなら、このような会社、そして社長さんに、投資したくありませんか?もちろん株は儲けてナンボですが、こういう気持ちも大事ですし、楽しく投資ができます。株式投資って、新聞や雑誌やチャートなどの図表を、目を血走らせて追っかけるだけの行為じゃないんですよ。楽しい上に儲かるという、とても素晴らしいものなのです。

やりたい時だけやってラクして勝ちましょう!

確かに証券会社に勤めて、実際に多くの社長に会った私は、誰がいい社長かはわかります。でも、社長の選び方を一般の人はどう習得したらよいか?そのための情報収集術から、判断の方法まで、極力手間をかけずに楽しくする方法をご紹介していきます。

ネットでおいしい情報を効率よく集めるには、社長が話しているインタビュー動画などを眺めることです。野村IRやSBI証券など証券会社のホームページでも、オススメ企業の社長の動画がタダでたくさん見られるので視聴するといいと思います。

そこで、ビジネスモデルや将来の展望などに自分が納得できるかどうかが大事。逆に言えば、納得できなければ、買うのはやめたほうがいいです。

個人投資家の一番有利なところは、休めるところです。個人投資家の場合、株式投資は仕事ではないので、いつでも休めます。反対に機関投資家(保険会社や投資信託などで、顧客から集めた大量の資金で投資する人たち)は休んでいると「お前何しとるん?」と言われてしまうので、買う銘柄がない時でも買うのが仕事というわけです。

個人投資家は、肩ひじ張らず、やりたい時だけやる。それくらいの気持ちのほうが、楽しく継続していくことができますよ。

藤本誠之(ふじもと・のぶゆき)
証券アナリスト。1965年生まれ。関西大学工学部卒。Yahoo!ファイナンス株価予想2012年勝率1位、伝説の39連勝を成し遂げた証券アナリスト。“相場の福の神”の愛称で親しまれており、「まいど!」のあいさつ・独特の明るい語り口で人気。ラジオNIKKEIなどのレギュラー出演をはじめ、テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多数。日本証券アナリスト協会検定会員、ITストラテジスト、Allabout株式ガイドを務める。