難しい知識は要らない伸びる会社を見分ける方法は社長を見ること、公式サイトを見ること、IRフェアに行くこと。社長やIR担当者にどのような質問をすると良いかも説明する。

(本記事は、藤本誠之氏の著書『難しいことは嫌いでズボラでも株で儲け続けるたった1つの方法』=SBクリエイティブ、2017年6月12日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

【関連記事 『ズボラでも儲け続ける方法』】
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・(2) 公式サイトで上昇株のヒントを見つけるには?「IRフェア」で社長にぶつけるべき質問とは?
・(3)「衰退市場で成長する銘柄」「福がある残り物」-儲かる銘柄の発掘方法

ズボラでも儲け続ける方法
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

公式サイトの「社長挨拶」には上昇株のヒントがいっぱい

まずチェックしてほしいのが、その会社の公式サイト。ほとんどの会社には、「会社概要」の中に「社長挨拶」があるはずです。この社長挨拶の内容にピンとくるかどうかと、掲載内容が古くなっていないかをチェックしてみてください。

たまに、「東日本大震災では、多大な被害があり...」などのコメントが冒頭に登場するケースがあります。何年も前のメッセージを載せたまま、公式サイトが放置されている会社は考えものです。やはり更新頻度が多い会社のほうが、やる気があっていいと思います。

また、かなりの割合で、「社会貢献します」「明日へ向かって羽ばたく企業に」とか、当たり前で他社と違ったことがあまり書かれていないことも多いのですが、ちょっとでも「おっ」と思わせることが書いてあれば、気に留めておいていいでしょう。

顔写真とポーズだけでもいろんなことがわかってしまう

ズボラでも儲け続ける方法
(画像=Haywiremedia/ShutterStock)

またチェックポイントとして外せないのが、社長の顔写真です。スマホでササッと撮影した写真なのか、プロのカメラマンが撮影したのかは、よく見ればわかります。

投資家の多くが自社の公式サイトを見ることを認識していれば、おのずと社長の写真の重要性にも気づくはず。お金をかければいいというのではありませんが、見栄えというのはやはり大事です。

表情やポーズにも注目してみてください。笑顔なのか、睨みつけるような表情なのか、座っているのか、立って腕組みしているのか、など。

「写真1枚で社長の何がわかるの?」と思われるかもしれませんが、いろんな会社のホームページの社長の顔写真を見比べてみると、それだけでもワンマンで独善的なタイプなのか、民主主義的なタイプかなど、ドンピシャリと当たらないまでも、なんとなくわかってきます。

私のこれまでの統計では、腕組みして睨みつけるような表情の社長には、トップダウンのワンマン社長が多かった気がします。それだけで悪い企業だとは決めつけられませんが、会社の業績が落ちてきた時に、こういった社長がいる会社が立ち直るのかには疑問が残るわけです。というのは、普段から社長を信頼する社員が少なく、社長についていけなくなった社員が続々と退職なんてこともあり得るからです。

いい会社は、社内の雰囲気もいいことが多いです。

写真といえば、公式サイトの役員紹介に顔写真がズラリと並んでいる会社があります。そのような会社は、役員クラスの入れ替わりが少ない安定した会社です。

反対に人がどんどん辞めていくような会社なら、顔写真などとても載せていられません。社長だけでなく、役員クラスの顔写真が公式サイトにある会社は信頼のおける会社といえるでしょう。

公式サイトが見やすい会社の社長もいいことが多い

また、公式サイト全体の見やすさも大切です。

公式サイトの制作をきちんと外注に出して見やすくしている会社は、いろんな意味でやる気と余裕がある会社といえます。反対に公式サイトの作りこみが甘く、使い勝手が悪い会社は、投資家や消費者に自社をアピールする意欲や余裕がないのかもしれません。

もしスマホをお持ちでしたら、公式サイトはぜひ、パソコンだけでなくスマホでもチェックしてみてください。ちゃんとした会社の公式サイトなら、パソコンとスマホが連動した画面構成になっています。もしスマホ対応になっていないとしたら、社長自体がインターネットに疎いか、情報を発信することに力を入れていない証拠といえるかもしれません。

さらに社長の動向をチェックしたいなら、その企業が発信するメルマガに登録してみることをオススメします。メルマガだけのオリジナル情報があり、公式サイトではわからなかった社長の近況や会社の最新の情報を知ることもできますから。

このように公式サイトからわかる、社長のタイプや会社の状況はいろいろあります。まずはこのファーストステップで気になる社長=会社を絞り込んでみましょう。

証券会社のサイトにある動画で社長のことがさらにわかる

次のステップは、実際に社長の肉声を聞いてみることです。

私のラジオ番組『この企業に注目!相場の福の神』(ラジオNIKKEI第1)に出演した社長の話を聞いていただくのもいいのですが、SBI証券のサイトの中では、社長による会社説明会など社長の動画がたくさんアップされていますので、こちらにアクセスすればもっとたくさんの社長の声が聞けます。

・ラジオNIKKEI第1『この企業に注目!相場の福の神

SBI証券
※「国内株式」→「オンラインIR」とアクセス。もしくは「インターネット会社説明会」でサイト内検索をかける

・野村インベスター・リレーションズの「プレゼンテーション

SBI証券のサイトでは、過去に開催した説明会でのプレゼンテーションやインタビューの様子が動画で流れています。実際の話し口調や表情などを見ながら、社長がどんなことを投資家にアピールしたいのか知ることができます。

このような証券会社の動画に出ている社長は、実際に業績がいい会社ばかりです。やはり業績が悪化している社長は出にくいということと、企業側がお金を払ってでも出演したいケースもあります。それだけ手間暇かかっているので、出演できるのはいろんな意味で余裕がある会社に限られるというわけです。

その会社がかなり気に入っても社長の話に納得できなければ見送ろう

決算期の社長の発言についてですが、やはり決算期に下方修正ばかりやっている社長はあまり感心しません。投資家につい見栄を張って強気に発言する傾向のある社長に多いようです。

逆に、普段から控えめに言う社長は、上方修正をするケースが多いです。過去、どれくらい上方修正したかによって、判断するとよいでしょう。

かといって、控えめな社長がいいかというと、必ずしもそうとは言い切れません。それは、社長が大きな夢を持たず、成長が見込めないこともあるからです。

また、リスクをとるタイプと、安定志向のどちらがいいか、というのも難しい話です。前者は下方修正が続くことが起きそうですし、後者は大きな夢がないこともあり得るからです。

では結局、どうすればいいのか?

それは、社長の話を聞いて、

「なるほど、そうだよなぁ」

と、納得できるかどうか。やはりこれが大事です。かなり原始的かもしれませんが、この判断はバカにできません。

つまり、扱っている商品や会社案内の資料を見てもよくわからない場合は、社長の話に納得できるかどうかで決めればいいのです。そういった意味で、社長で選ぶのは重要となります。

反対に、社長の話に、

「うーん、いまいちだなぁ」とか「なんだ、それ?」

と疑問を感じるなら、その会社の株を買うのは見合わせましょう。

証券会社一押しの会社の社長に一挙に出会えるIRフェア

ネットでも社長のことがある程度わかったけど、もっと知りたい!そんな方は、時間と地理の都合が許せば、実際に社長に会いに行くことをオススメします。

証券取引所や日本経済新聞、証券会社などが主催するIRフェアでは、社長と会えることがあります。ここは、参加する会社が自社の株を投資家に買ってもらうためのアピールの場なので、社長がコメントをしたり、各会社のブースで自社の商品やサービスを紹介したりしています。

最近では、ネットでいろんなものが視聴できる時代ですが、実際に目の前で社長が話す様子を見るのは絶好のチャンスです。なぜなら生のイベントでは、動画と違って社長の話を編集することなくすべて聞けるため、よりリアルな社長の発言と姿を間近でチェックできる利点があります。

しかもIRフェアは、複数の優良企業の社長の話が一挙に聞ける場でもあります。

そもそも、IRフェアに参加している時点で、優良企業の可能性はとても高いといえます。次の3つが主な理由です。

1.イベントに参加している会社は、コストをかけているので経営状態がいい
2.社長が投資家に向けて、どうしてもアピールしたい話がある
3.社長が自社の株価はもっと上がるべきだと思っており、自社の経営に自信がある(実際に株価が上がる可能性がある)

各社ごとのブースの様子や商品やサービスを見比べられることも、IRフェアのいいところです。BtoBの企業こそ、日常生活で接しにくいことから事業内容がイメージしづらいことが多いのですが、そのイメージもしやすくなります。

またサイトを眺めているよりもはるかに、各企業の社風を含め特徴が見えてくるでしょう。ネット情報や株式新聞ではピンとこなくても、こういったIRフェアで会社のことを深く知ることで、有望株を買うチャンスはグッと広がるのです。

一見、地味な会社に見えても、その業種の中では絶対的なシェアを誇っている会社はけっこうあります。もし、ニッチな業界で業績トップの会社だとわかったら、はっきりいって狙い目です。そんな会社にも、IRフェアに足を運べば出会いやすくなります。

それから、せっかくイベント会場にわざわざ足を運ぶのですから、ぜひ気になる会社のブースへ行って、そこにいる社員に扱っている商品やサービスについて質問してみましょう。そこでの受け答えや対応の仕方で、会社の雰囲気は伝わってくるものです。中には元気があるのは社長だけで、社員はみんな疲れ切っている会社があったりしますが、そんなことまでわかってしまうのです。

あと、イベントで気に入った会社をさらに絞り込む際、その会社の公式サイトにあるIRページも見ておくといいでしょう。イベントに参加するような会社は、自社のIRページも充実しているはずですので、また新たな情報が得られるでしょう。

そこまで斬新な情報に出会わなかったとしても、IRページに掲げている「将来の目標」に納得し期待できるかを確かめるだけでも価値はあります。期待できそうだったら、さらに株の購入の候補にしていいと思います。

ところでこのIRフェアですが、投資の専門家によるセミナーも必聴です。私も時々、こういったイベントに呼ばれて皆さんの前でお話しします。

このセミナーでは、株式市場の分析や解説がされるので、貴重な情報が得られるはずです。

もちろん会社によっては、その会社が個別で主催する個人投資家向け説明会もあります。都合がつき、もっとその会社のことを知りたいとなった場合は、参加してみましょう。会社によっては、工場見学ツアーや商品の使用体験会などを開催しているので、一段とその会社を知ることができます。

なお、証券会社が主催していることもありますが、まめに会社説明会を開いている時点で、個人投資家を大切にしている証拠でもあります。投資先の候補としてはさらに有力となります。

身なりもバカにできない。腕時計と靴がキーとなる

社長の発言以外に注目してほしいのは、社長のファッションや身につけているものです。ヨレヨレのスーツなんて論外です。

これ見よがしなブランド尽くしがいいというのではありません。靴、腕時計など、ぱっと目につくものが上質で品がよいだけでなく、全体的に好感が持てるかどうかもぜひ注目してみてください。

最近ではIT企業の社長など、Tシャツにジーパンなどラフなファッションの社長も多いですが、腕時計と靴は上質なものを身につけていたりします。

短期投資ならそう問題ないですが、中長期投資を考えている場合は、社長の発言、経歴、身なり、さらに社員の様子などを総合的にチェックして、ご自身で納得した場合に購入してほしいと思います。

社長にこの質問をすれば念押しができる!

社長に質問ができるチャンスもあります。ブースにいることもありますし、説明会の質疑応答の時間も当てはまります。次の質問を投げかければ、候補にできるかがいっそう判断しやすくなります。

「御社は東証1部の昇格基準に達していると思うのですが、昇格の予定はありますか?」

社長はその質問に「YES」ないし「NO」とハッキリとは答えられないのですが、「昇格目指して頑張ります」と言うか、「全く予定にありません」と答えるかで、こちらの見極め方も違ってきます。前者のような返答をする社長が「買い」と考えてもよいでしょう。もちろんこの質問は、まだ東証1部に上場していない会社に限ります。

また、

「社長はご自身の会社の株は高いと思いますか、安いと思いますか?」

と聞いてしまうのも手です。それに対して、

「うちの株価はこんなものです」とか「市場が決めるので、どうしようもない」と、??子定規な返答をする社長は、あまり魅力がありません。

私はこれまで300人以上の社長を取材してきましたが、自社の株価を安いと思わない社長はダメだと思っています。

自分の会社の株価はもっと上がるべき、と思っているから積極的に個人投資家に向けて会社説明会を行ったり、自社の公式サイトで動画をアップしてまでコメントを発信したり、IRイベントに参加したりしてアピールをしているわけです。それだけ自社の商品やサービスに自信があり、会社の業績が伸びていく確信もあるわけです。

ですから、そういった会を催している時点で優良企業ですが、念押しという意味で、社長にこのような質問をすることを提案したいのです。

IR担当者に聞いてしまうのも手

社長というテーマからそれますが、ついでに触れますと、社長以外にIR担当者に話を聞いてみる、という裏技もあります。会社説明会に行った時でも、電話でも構いません。

これは案外、実践する人が少ないので、他の人が知りえない情報を入手できるという意味でもオススメです。IRページを見て疑問に思ったことなどを、質問してみましょう。

電話の場合、まずは代表の電話番号にかけて、IR担当部署につないでもらえばOKです。その際、

「御社の株を買おうと検討しているのですが」

と伝えれば、きちんとした会社ならどんな些細な質問にも答えてくれるはずです。さらに、そのときの受け答えの様子で、成長が見込める会社かどうかが判断できると思います。

経歴から見る社長のタイプと見分け方

先ほどもお伝えしましたが、その社長がリスクを取るか安定志向かというのは、過去の経歴を見るとだいたい想像がつくものです。

いろんな人が起業しますが、やはりどこかで苦労をした社長のほうがしぶといと思います。逆に順風満帆できた人のほうが、何かあったときに折れやすいような気がします。

だからといって、エリートのほうが折れやすいかといえば、そうとは言い切れません。

例えば、不動産事業を幅広く展開しているビーロット <3452> の宮内誠社長は、父親がオリックスの元会長・社長で現在シニア・チェアマンである宮内義彦氏という超サラブレッドですが、大社長の息子であるがゆえに、陰ながら気苦労していると思います。もし失敗したら周囲から叩かれるというプレッシャーもあり、他の社長と比べると最初から背負っているものが違うと感じます。

また宮内社長はとても頭がよく、経営手腕は抜群です。父・義彦氏の富裕層の人脈のパイプがあるのも強みです。

このように、これまでの経歴を含め、創業社長なのか、サラリーマン社長なのかによっても、社長のタイプは違うように思います。

とはいえ私見になりますが、これまでお会いしてきた中では、創業社長のほうが個性的で魅力あふれる人が多かったように思います。

藤本誠之(ふじもと・のぶゆき)
証券アナリスト。1965年生まれ。関西大学工学部卒。Yahoo!ファイナンス株価予想2012年勝率1位、伝説の39連勝を成し遂げた証券アナリスト。“相場の福の神”の愛称で親しまれており、「まいど!」のあいさつ・独特の明るい語り口で人気。ラジオNIKKEIなどのレギュラー出演をはじめ、テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多数。日本証券アナリスト協会検定会員、ITストラテジスト、Allabout株式ガイドを務める。