「C919の新春再出発、国産大型旅客機就航への道は平たんではないが、我々の決意は揺らぎない」--。

新華社系の新華網は、国産旅客機C919の現状についてこう表現している。中国の国産旅客機の開発はどうなっているのだろうか。

ABC3社並立の夢

中国経済,航空業界
C919(画像=COMAC Webサイトより)

C919とは中国商飛上海飛機製造有限公司(Comac)の開発した双発ジェット旅客機である。919の最初の9は永久の「久」を、19は、190席級を表している。昨年5月に初飛行に成功、11月には上海ー西安間の長距離飛行に成功した。

次は型式証明の取得である。米連邦航空局(FAA)欧州航空安全機関(EASA)のうち、口やかましい米国のFAAはスルーし、EASAの認定を得ることを目指している。中国民用航空局(CAAC)の審査で一部代用認証をすることで合意しているという。

それはともかく、夢は大きい。A(Airbus) B (Boing) C (Comac)とABC3社で並び立つ日を迎えることが目標だ。型式証明くらいのことでつまずいてはいられない。

春節休みを返上して

春節は古来より、故郷に家族や親戚が集まり、一族団らんで過ごす期間である。しかし上海飛機製造のデザイナー、エンジニアたちにそんな余裕はない。型式認定取得までの間に、やるべき事は山積している。今日も黙々と家を出る。工場ではシリアルナンバー102号機が作業を待っている。何しろ3月中にこの102号機を、飛行試験センターに納入しなければならない。

C919機首部組立班の孟班長は、飛行機の“大脳”製造を担う精鋭14人を率いている。「春節も仕事をするだけだ。我々は朝9時に出勤し、退社するのは夜9時である。残業となり帰宅しない日もある」また「例年、各メンバーとも正月3日から出勤するのが常だった。今年は少し休みを短縮しただけだ」という。

ARJ21に続け

孟班長と彼の夫人は“大飛機夫婦”と称されている。夫人は先行して開発された、地域路線用小型ジェット機ARJ21(72~99席級)の生産にたずさわり、夫妻とも航空機製造の第一線で活躍しているからだ。

ARJ21は、2008年に初飛行に成功している。しかし主翼の不良により、CAACの型式証明取得は2014年12月と大幅に遅れた。そのためシリアルナンバー101~104号機は、航空会社に納品できなかった。2015年11月に初めて成都航空にシリアルナンバー105号機が納品され、2016年6月より、成都ー上海路線に投入された。

2017年12月、108号機が成都航空に納入され、ようやく4機体制を整えた。年末までに延べ3万人に以上の乗客を運んだが、幸い事故の報道はない。成都航空は、合計30機を導入する予定だ。その他、山東航空、深セン航空など計208機の納品が予定されている。ARJ21は、ようやく離陸した。

ARJ21は、日本MRJの直接のライバルである。初飛行は2015年11月、県営名古屋空港だった。ぐずぐずしてはいられない。しかし運用開始予定は、2020年第二四半期となっている。東京五輪に間に合うのだろうか。

ひたむきな努力は実るか?

実は中国には1980年~85年まで運用した「遠十飛機」という幻のジェット機があった。当時の花形機、ボーイング707を目指したものだ。Comacの前身、上海飛機製造で製造された。当時の副総設計師、程氏は88歳で今も健在だ。程氏は「航空工業は、単なる労働の蓄積ではない。科学技術の実力、創新力の指標となる産業だ。スタッフの知恵の結晶である。」という。また「我々はC919によって新しい時代を迎えることになる。努力と知恵は成功への両輪であり、これらが揃えば成功は目前だ。」とも述べている。

新華網は、エンジニア夫妻や古老の話を添えつつ、関係者の懸命な努力を強調している。またComacには、ARJ21での経験もある。しかしEASAの型式証明取得の成否は、まだはっきりしない。中国的な別の手をうつ可能性もある。

とはいえC919の物語は、日本では、最近あまり聞かない刻苦勉励の成功物語、プロジェクトXの過程であろう。日本はこのところ、ひたむきさよりも不祥事ばかり目立つ。彼我の活力の差は明らかなように思える。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)