株式投資で得られる利益は、株価上昇で得られるキャピタルゲイン(値上がり益)と、株主優待や配当金といったインカムゲインの2種類がある。超低金利が長引く中、業績が良好であれば高配当の企業も多く、安定した収入源として高配当銘柄に注目が集まっている。
配当金にかかる税金
配当金は、配当を実施している企業の株主になることで受け取れる。企業の決算期末の時点(3月末が多い)で株主名簿に名前が載り、権利を確定している株主が配当金を受け取れる。たとえば3月決算の会社の場合には、4月に株主になったら翌年3月の決算期末まで待たないと配当金を受け取ることはできない。なお、権利付最終日に株を保有していれば良いので、ずっと保有している必要はない。
株主総会で配当金額が決定されるため、株主総会が終了してから支払われることになる。権利を確定してから配当金の受取までは時間がかかるため、忘れた頃に支払われるので臨時のお小遣い感覚でもらえて嬉しい。
配当課税は現在、源泉徴収課税になっている。基本的に確定申告を行う必要はないので、税金をいくら支払っているのかあまり気にしていない人も多いかもしれない。上場株式等の配当金にかかる税金の税率は現在20%だ。ただし、「復興財源確保法」によって平成25年から平成49年までの25年間、譲渡益・配当等の所得税額に対し2.1%の復興特別所得税が課せられているため、20.315%(所得税+復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率になっている。
確定申告を行うことが面倒だと考える人にとっては、源泉徴収課税は便利だと言えるだろう。しかし、場合によっては、確定申告を行うことで税金が戻ってくる可能性がある。
確定申告をやったほうが良いのはどんな人?
配当金の課税関係は、次の3つの場に分けて考えられる。自分の投資状況や年収等からどれがいいのかを選択して、確定申告を行うか行わないかを決定することになる。
(1)確定申告を行わない場合 配当金等を受け取った時にかかる20.315%の源泉徴収で完結する方法(申告不要制度)。
(2)確定申告で総合課税とする場合 20.315%の源泉徴収された配当金(配当所得)を、他の所得と合算して累進税率に基づき税金を計算する方法。配当控除が適用となる。
(3)確定申告で申告分離課税とする場合 20.315%の源泉徴収された配当金(配当所得)を、他の所得と合算せずに税金を計算する方法。上場株式等の損失との損益通算が可能となる。
1の場合は、配当金を受け取る際に20.15%の税金が源泉徴収されているので、課税関係は終わりになる。
2の場合は総合課税になるので、課税される所得が多くなるほど税率が上がる累進課税が適用される。課税される所得金額によって所得税率が上がるわけだが、課税所得金額が195万円以下の場合には5%、330万円以下の場合には10%、695万円以下の場合には20%、900万円以下の場合には23%、最終的には4000万円超では45%まで税率が上がる仕組みになっている。
所得が695万円以下の場合には税率が20%なので、源泉徴収の20.315%より低くなる。国税庁の確定申告作成コーナーを利用して金額を入力すれば自動的に計算を行ってくれるので、どちらがオトクかで選択すればよいだろう。
3は株式投資等で損失が確定している場合になるが、申告分離課税を選択することで損益通算を行うことができる。
●国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm
●国税庁確定申告作成コーナー
https://www.keisan.nta.go.jp/h29/ta_top.htm#bsctrl
NISA口座の活用
株式投資や投資信託等の投資を始める時には、投資を行うための証券口座を開設している。証券口座には、「特定口座」と「一般口座」、そして、少額投資非課税制度の通常の「NISA口座」、2018年1月から始まった積立型の「つみたてNISA」に分かれているわけだが、どの口座を選択しているのかまずは確認したい。
通常のNISA専用の口座では、①毎年120万円を、②最長5年間まで、③投資総額最大600万円まで、投資することができる。通常であれば利益に対して20.315%の税金がかかる所を、NISA口座の投資枠で発生した利益に対しては非課税にできるメリットがある。配当金の受取についても、NISA口座での受け取りにすれば税金を非課税にできるので、NISA口座の場合には配当金の受取も証券口座であるNISA口座で受け取りたい。
税金を支払わなくて済むと聞くとお得に感じるかもしれないが、NISA口座にデメリットがないわけではない。NISA口座で購入した株や投資信託等は、投資で発生した利益に対して税金がかからないというメリットがある一方で、特定口座や一般口座の株式等の利益と損益通算を行えないというデメリットがある。NISA口座で損失が発生しているからと損切り(ロスカット)を行っても損益通算を行えない。NISA口座の活用には注意が必要になることは覚えておきたい。
日本の会社員は、年末調整が行われて税金が源泉徴収されているため、自分がどの程度の税金を支払っているかということに無頓着な人が多い。税金の仕組みをしっかりと理解し活用できなければ、長い人生でたまるお金はもちろんのこと、それによって作り出される生活、時間、精神的なゆとりに大きな差が開くばかりだ。ゆとりある人生を楽しく送るためにも、税金の仕組みについて理解しておき、お金を自らコントロールできるようになりたい。
横山利香(よこやまりか)
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。ファイナンシャル・プランナー。相続士。WAFP関東理事。「会社四季報オンライン」や「All About株式戦略マル秘レポート」での連載や、ヤフーファイナンスの「株価予想」でもマーケットコメントを執筆する等、株式投資や不動産投資といった投資や資産運用をテーマに執筆、メルマガ発行(http://yokoyamarika.com/
)、講演活動、株塾を行う。公式サイト「横山利香の資産運用コンシェルジュ」(http://yokoyamarika.com/
)