不動産投資はミドルリスク(ミドルリターン)と言われるように、失敗するリスクが比較的高くはない投資といえる。それにも関わらず、失敗して後悔する人も後を絶たない。もちろんそれぞれに事情はあるのだが、失敗する人には、幾つかの共通点があるように見える。負け組にならないためには、その共通点を知っておくべきだろう。

共通点その1 しっかり勉強しない

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(写真=Grand Warszawski/Shutterstock.com)

共通点として最初に指摘しておきたいのが、失敗する人の多くはしっかりと勉強をしていないということだ。

不動産投資の対象は安いワンルームでも百万単位、RCの1棟物など億円単位の物件もある。それだけ高額な投資をするにも関わらず、ロクに勉強もしないでスタートすれば失敗する確率が高くなるのは当たり前だ。

周囲に成功している投資家がいればなおさらで、「自分も成功するのではないか」と根拠のない自信を持ってしまうことも、失敗への歩みといえるだろう。

「不労所得」という言葉から、簡単に楽をして収入が得られると思っていたらそれは間違いだ。しっかりと勉強せず、安易に他人の言うことを信用して業者任せにしていても、成功するはずがない。基本的な知識がなければ人の言いなりになって、必要最低限の確認や検証をせずに物件を購入してしまう。

これは営業担当者の立場で考えれば分かることだが、収益が見込める優良物件は取引実績のある優良顧客に紹介する。逆に問題があって知識や経験のある顧客には売り難い物件があったとして、それをどうしても売らなければいけなかったらどうするだろうか? 優良顧客に売るだろうか? 勉強熱心な投資家なら物件のマイナス面も見抜くかもしれない。こう考えると、あまり勉強していない初心者に勧める営業マンがいてもおかしくないことが分かる。

勉強しないで投資する人の中で、意外と多いのが比較的若い年代で、給与収入の高い人たちだ。ここでは職種までは挙げないが、彼・彼女らは仕事に関しての専門分野の知識は豊富だが世間知らずの傾向がある上、本業が忙しいので投資について勉強をせず人任せになりがちだというのだ。 いずれにせよ、勉強をしない人は悪意のある業者のターゲットになりやすい。初心者が業者任せにして不良物件を掴まされたのでは、まず収益を得るのは不可能だろう。勉強しないで投資をすれば、そういうリスクを自ら背負うということになるのだ。

共通点その2 不動産投資が事業経営であることを理解していない

株式やFXなどの投資と不動産投資の大きな違いの一つは、不動産投資には事業経営の要素があることだ。税制面でのメリットもあるものの、不動産投資のために法人をつくることは珍しくない。このことからも、事業経営との類似点、共通点があることが分かる。

今の不動産投資は、家賃収入で収益を得るインカムゲイン型の経営がポイントだ。この点をしっかり理解していないと、負け組の仲間入りをすることになる。

安定した家賃収入を確保するには、入居者に住みたいと思う快適な住環境を整える努力や工夫が欠かせない。日々の業務はどうしても専門の管理会社に任せることになるが、入居者目線で仕事のクオリティを検証し、必要に応じて改善するのは経営者の役目である。何から何まで従業員任せの社長では、会社がうまくいくとは思えない。

さらにいえば、入居者目線で創意工夫をするのは大事だが、一方でコストパフォーマンスを考慮することも経営者の仕事といえるだろう。ここで収支のバランスをとる経営センスが必要になる。負け組になる投資家の共通点は、この経営センスを磨くための努力や勉強をしないことである。

共通点その3 人脈を広げようとしない

不動産投資で成功するための要素として、「広い人脈を持っていること」がある。不動産業者の人脈も大事だが、それ以上に不動産投資家、つまり同業者の人脈が成功のカギを握っている。体験者の生の意見は、書籍やセミナーにはない重みと価値があるからだ。すべての著者や講演者に当てはまるわけではないが、彼・彼女らは情報や物件を売ることがビジネス。どうしても「売らんかな」になってしまう面もある。その点、個人の投資家には基本的にその心配をする必要がない。

また個人投資家はとかく孤独になりがちだ。事業経営と同じ要素があるとはいったが、投資に関するあらゆる行動は一人で行うもの。これはいろんなことが一人で決めて責任をもって進められるともいえる反面、どうしても客観性やモチベーションを保つことが難しくなる時がある。そうしたときに広い人脈を持っていれば、たとえば判断に迷った時に適切なアドバイスを受けられる。

人脈を持っていない人は、周囲に相談せずに自分で判断する反面、物件を購入した後は業者任せにしてしまう傾向があるという指摘もある。経験豊富で自分なりの投資スタイルを確立している人なら良いが、初心者が一人で判断すれば誤った選択をする可能性が高くなるのだ。

いうまでもないことだが、多くの不動産投資家を知っていればいいというわけではない。異業種交流会に出て名刺を集めることが目的になっているサラリーマンもいるが、あくまで切磋琢磨できる仲間、信頼できる知人を持つことが大事だ。そのためには、相手にとって自分が刺激やいい情報、知見を与えられる人物であることも求められる。

共通点その4 計画性がないお金の使い方をする

これは不動産投資に限らない、ごくごく当たり前のことだが、失敗する投資家には、計画性のないお金の使い方をする人が多いようだ。

不動産収益は不労所得だからと散財し、不測の事態に備えて蓄えることをしない人は間違いなく失敗するのだが、散財とは言えないまでも、「管理」がしっかりできないと成功の可能性は下がってしまう。たとえば物件の購入後に定期的にメンテナンスをしない、修繕する際など出費を強いられるときに相見積もりを取らずに業者を決めてしまうといったようなことが考えられる。一件ごとでは大したコスト増ではないかもしれないが、これが積み重なると多額になるし、そういう緊張感のない姿勢は大きなロスやミスにつながりかねない。

よくある失敗例としては、メンテナンス状態を確認せずに高利回りの築古物件を購入してしまい、後に想定外の修繕費が必要になるパターンがある。本人は安い買い物をしたつもりなのだが、結局高くつく結果となる。いわゆる「安物買いの銭失い」といえる。安い物件、掘り出し物の物件には、必ずそれなりの理由がある。もちろん、売り手の事情でフェアに判断しても「安い!」という物件もあるだろうが、しっかりと見極める必要がある。

ほかのケースとしては、空室リスクを回避するために自ら創意工夫をせず、入居率を上げるためという業者の口車に乗って、無計画にリノベーションをしてしまう、というものもある。こうしたケースでは、コストパフォーマンス、投資対効果を無視した自己満足的なリノベーションになりがちだ。

入居者ニーズを考慮せずにリノベーションをほどこしても、費やした資金を回収するだけの家賃収入を得るのは難しいだろう。それでは適正な費用対効果は期待できず、持ち出しが多くなるだけだ。結果として、収益を圧迫しキャッシュフローがマイナスになる。

また安易にフルローンを利用すると、返済比率が高くなって負のスパイラルに陥りやすい。返済率とは、家賃収入に占める返済額の割合のことをいう。この数値が高いと、その分だけ管理費などのランニングコストを差し引いたキャッシュフローが少なくなる。

融資を受ける際は、キャッシュフローを維持できる最低レベルの基準を数値で把握しておく必要がある。

これは物件によって異なるので一概には言えないが、管理費などのランニングコストは家賃収入の20%程度が目安で、残りの80%から返済するといいといわれる。しかしこの計算は入居率100%が前提なので、ここには周辺の物件や競合物件、もしくは同じ物件の過去の経験から空室率を考慮して計算に入れておく必要がある。

返済率が60%を超えるとキャッシュフローが20%を割り込み、空室や突発的な修繕費などが発生すると持ち出しになる可能性が出てくるので危険ゾーンと言える。返済率は40%程度が理想だが、重要なのは不測の事態に備えた計画性である。

以上、分かりやすい、失敗する投資家に共通している点を見てきた。不動産に限らず投資をするには、絶え間ない勉強(情報収集)、経営意識、コスト意識、計画性が必要だ。投資は投機やバクチとは違う。当たり前に思えることをしっかりと押さえて徹底した人ほど、成功に近づけると考えるのは間違っていないのではないだろうか。(ZUU online編集部)