最近中国のネットニュースでは、小米(シャオミ)の名をよく見かける。2017年、経済ニュースの主役はBAT(バイドゥ/百度、アリババ、テンセント)またはTMD(今日頭条、美団、滴滴出行)だった。それがこのところシャオミのマイクロソフトと提携、コダックと提携の噂、株式上場の話題などが連続した。創業者の雷軍CEOは、スター経営者の座を取り戻したかのように見える。シャオミに何が起こったのだろうか。ニュースサイト「参考消息網」「今日頭条」などから探ってみよう。

激しいアップダウン

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(画像=MyCreative / Shutterstock.com、南京のMiショップ )

2017年、中国の携帯市場は冴えなかった。市場調査会社IDCのデータによると、売上は4億4430万台で、前年比4.9%のマイナスに落ち込んだ。シェアは5強の争いである。

(売上台数/販売シェア/伸長率)
1位 ファーウェイ/9090万台 20.4% ▲18.6%
2位 OPPO /8050万台 18.1% ▲2.7%
3位 VIVO /6860万台 15.4% △0.8%
4位 シャオミ /5510万台 12.4% ▲32.6%
5位 アップル /4110万台 9.6% △8.3%

シャオミは32.6%も売上を伸ばし、アップルを抜いて前年の5位から4位へ順位を上げた。

シャオミは2010年3月に設立された。創業者の雷軍は、スティーブ・ジョブズのモノマネ経営者として揶揄される一方、爆発的な業績を上げた。2014年の会社評価額は450億ドルに達した。2015年には売上780億元、中国スマートフォン市場で1位となった。雷軍はカリスマ経営者となったのである。しかし2016年に早くも暗転、シェアは5位に急降下、会社の評価額も10分の1以下に落ち込んだ。

2017年は、国内の販売体制を一新し、直営店“小米の家”出店を加速した。それも功を奏し巻き返しのきっかけをつかんだ年となった。このところ元気の良い背景に違いない。

マイクロソフトと提携した狙い

2月下旬、シャオミとマイクロソフトは戦略的提携の備忘録に署名した。マイクロソフトの持つクラウドコンピューティング、AI領域の技術蓄積と、シャオミの持つスマホ技術の蓄積を結合させる。参考消息の取材では、備忘録は以下の内容を含んでいる。

・ シャオミはすでに国際市場に進出し、世界各地に顧客を持つ。シャオミとマイクロソフトは共同で、クラウドプラットフォームMicrosoft Azureの利用を世界中で促進する。

・ ノートパソコンと周辺機器で提携する。共同で研究開発を行うとともに、マイクロソフトはシャオミパソコンの世界市場への進出をサポートする。

・ シャオミとマイクロソフトは、スマートスピーカーで連携する。AIアシスタントCortanaとシャオミのスマートスピーカーを整合させ、世界市場へ“進軍”する。

・ 人工智能技術の研究開発で、広範囲な提携を行う。

昨年10月末、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが訪中し、シャオミの雷軍CEOと会見している。このときシャオミのオフライン店舗「小米之家」で優秀な産品とサービスに触れたのが大きかった、と官製メディアまで弾んでいるような表現である。

再び上昇気流に乗るか

また正式発表ではないものの、コダックと撮影技術で提携するという記事も出ている。カメラ性能はシャオミが最も重視してきた技術である。新型機「小米7」において撮影技術のブレイクスルーを果たしたい。コダックの引き込みは絶好のチャンスではないかと、推測している。

さらに近日、グループ会社の「華米科技」が米国市場に上場すると噂されている。その場合、40億元の市場価値が見込まれている。これはシャオミ本体上場への前奏曲と見られている。

とにかくシャオミには、派手で威勢の良いニュースが増えてきた。浮き沈みの激しいところまで含めて、シャオミと雷軍の魅力にもなっている。マイクロソフトとともに再び羽ばたくことができるかどうか。今年は見逃せない1年となりそうである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)