芸術とお金は切っても切り離せない関係にある。人類史を遡っても、戦争が少ない安定した時代に芸術や文化が隆盛しており、後世に残る芸術家にも必ずと言っていいほどパトロンがついていた。

「衣食住足りて礼節を知る」という言葉があるが、精神的・物質的安定があって、初めて芸術を愛でる余裕が生まれる。それは、現代においても通じる真理ではないだろうか。

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(画像=Baturina Yuliya / Shutterstock.com)

芸術に触れる機会が多い富裕層

富裕層は芸術に触れる機会が多い。その理由として、まず金銭的な余裕が挙げられる。クラシックコンサートやバレエ、オペラなどのチケットは1人何万円というケースも少なくない。それなりの絵画や骨董品を自宅に飾ろうとしたら、チケット代とは桁が違うお金が必要だ。

次に、上記と「鶏と卵」の関係にある理由だが、富裕層同士の会話やコミュニティに、芸術が取り上げられやすいということが挙げられる。筆者の幼稚園からの友人男性Aの祖母は、日本画の巨匠で、人間国宝級の御方だ。日本画教室も開催しており、知人友人のセレブママたちが定期的に日本画を習っている。

その日本画教室は紹介制なので、基本的にはクローズドな富裕層コミュニティが形成されている。一般の方が入れないわけではないが、居心地の悪さや、高い月謝に耐えきれず、そのうち離脱してしまうだろう。

妻よりも多忙であることが多い夫たち(多くの場合、企業役員や開業医だろう)も、一般の方より芸術に通じていることが多い。「富裕層ビジネスの営業マンは芸術を学んで会話のネタにしろ」と教えられることがあるが、それは多くの場合、有効な戦術だと思う。

富裕層の家に生まれると人生の選択肢が広がる

芸術に触れる機会が多い富裕層の中には、自分の子供を芸術家(役者や音楽家を含む)に育てあげる人もいる。用具やレッスンなどの環境面を整えることによって、またはコネクションを活用することによって、一般家庭の子供より有利な条件で芸術教育することができるのだ。

芸術家というのは限られた分野でしかマネタイズできない個人事業主だ。仮にうまくいかなくても、違う分野のスキルを学び直す時間的余裕(イコール経済的余裕でもある)があったり、いざとなったらファミリーカンパニーで雇用したりできる富裕層の方が、子供の教育の選択肢でも、よりリスクテイクできると言える。

言い換えれば、富裕層の家に生まれる方が、子供自身は無意識だったとしても、人生の選択肢が増えるということだ。

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(画像=Aleksey Sagitov / Shutterstock.com)

タカラジェンヌの金銭事情

日本において舞台芸術の花形といえば、宝塚歌劇団を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。「東の東大、西の宝塚」と呼ばれるほど高倍率の競争を勝ち抜き、宝塚音楽学校を卒業した容姿端麗で芸達者な未婚女性(通称・タカラジェンヌ)が、男役と娘役に分かれて演じるミュージカルは、100年以上に渡って多くの人を魅了している。

個人的なことであるが、筆者は20代半ばの頃、元タカラジェンヌの歳上女性とお付き合いをしていたことがある。交際を始めたのは、彼女が宝塚を退団した後のことなので「すみれコード」(団員に求められる行動規範。団員は恋愛禁止条例と言われている)を侵していないことは強調しておこう。

ここからは彼女に聞いた話であるが、華やかに見えるジェンヌたちも阪急電鉄の社員であり(それも高卒社員)、一部のトップスターを除くと年収は決して高くない。そのうえで、多くの人に夢を与えるジェンヌらしく振る舞わないといけない。健康や外見を磨く費用はもちろん、舞台の衣装代や装飾代も基本的には自腹だそうだ。

そのようななか、彼女は金銭的に困ったことは一度もないと言う。なぜなら、彼女の父親は、都内の優良未上場企業オーナーであり、生活費の仕送りはもちろん、兵庫県宝塚市内に立派なマンションを用意してもらうなど、親から全面的なバックアップを受けていたそうだ。

ちなみに、彼女の姉も元タカラジェンヌで、活動時期はほぼ被っていたため、親は同時期に2人分のバックアップをしていた(マンションは姉妹でシェアしていたそうだ)。宝塚音楽学校に入学してからの費用に加え、幼少期から通うバレエ教室や声楽教室などのレッスン代を考えると、非常に高額になるだろう。それをほぼ同時に2人分である。

舞台に立つために必要な要素はカネ!?

彼女に言わせれば、決して自分が特別な存在ではなく、多くの同期が、親からのバックアップを受けていたという。言い換えれば、濃淡はあるにせよ、経済的に余裕のある家庭の子女がタカラジェンヌになっているということでもある。

彼女の言葉には、妙に納得した。筆者の幼稚園からの友人女性Bは、幼少期よりバレエを習っており、現在は日本最高峰のバレエ団でソリスト(プロのバレリーナ)として活躍している。その姉もタカラジェンヌであり、やはりB家は裕福な家庭だ。

小学校からの友人男性Cは、都内の建設会社オーナー社長の息子なのだが、大学卒業後、どこにも就職せず舞台俳優になってしまった。そして、その姉も元タカラジェンヌだ。C家が裕福なのは言うまでもない(蛇足だがCの母親、つまり建設会社の社長夫人は、びっくりするくらい漫画やドラマにでてくる「ザマス夫人」だ)。

もちろん、筆者の狭い交友範囲と、限られたサンプル数では「舞台に立つために必要な要素はカネ」と言い切ることはできない。あなたの知人友人にタカラジェンヌや芸術家はいないだろうか。該当者がいたら、その人の実家は裕福かどうかを思い返して欲しい。

澁谷 稔
アラサー男性ライター。東京都渋谷区のとある富裕層一家の長男として生まれる。しかし本人のスペックは低め。私立幼稚園御三家のひとつを卒園後、私立小学校御三家のひとつに入学。以後、大学卒業までエスカレーター進学した「The ゆとりの産物」。知人友人に上場企業の創業家一族、未上場企業オーナー、開業医など富裕層の子息子女多数。